国家破産を経験しているといいます。国家破産は国家破滅とは違
い、国がなくなるわけではないのです。財政が破綻し、正常な状
態に戻らないことをいうのです。過去2回の国家破産の期間を示
しておきます。
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第1回/1904年〜1916年 ・・・ 12年間
明治37年〜大正 5年
第2回/1931年〜1945年 ・・・ 14年間
昭和 6年〜昭和20年
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第1回は、日露戦争勃発から第1次世界大戦の半ばまでの12
年間であり、第2回は満州事変勃発から太平洋戦争の終わった年
までの14年間です。
いずれも戦争が原因の国家破産だったのですが、その間、国民
は大増税とインフレに襲われて、悲惨にして過酷な生活を強いら
れたのです。
それでは、何をもって国家破産というのでしょうか。
もちろん、個人や企業の破産と違って法的に明確な定義がある
わけではないのです。森本氏によると、国債爆発指数が一定の数
を超えると、国家破産の状態であるというのです。2005年度
の政府予算のケースで計算してみましょう。
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(利子9.3兆円+借換債103.8兆円)÷税収47兆円
=2.406 → 2.406×100=240.6
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森本氏は、この数値が300になると、日本の財政的な国家破
産が誰の目にも明らかになるといっています。森本氏の予測によ
ると、2008年度は次のように数値は294になり、その数値
に限りなく近づくと予測しています。
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(利子22兆円+借換債119兆円)÷税収48兆円×100
=294
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ここで「利子9.3兆円」は、国債残高に長期金利を乗じたも
のであり、2005年の9.3兆円は長期金利1.5%で計算し
てあります。しかし、2008年の利子が22兆円になっている
のは、量的緩和解除などの影響で長期金利が3%になったという
前提の金額であり、実際に長期金利がそこまで上昇するかどうか
については疑問です。
問題は「借換債/かりかえさい」です。「借換債」とは一体何
でしょうか。
借換債とは、満期を迎えた国債の償還に対して、その償還財源
に当てるために、新たに発行される国債のことです。法的根拠は
国債整理基金特別会計法第5条です。要するに、国債の償還を国
債を発行して行うということです。借金の返済を別な借金で行う
ということと同じです。
借換債については次のような理屈がついています。
国債には、建設国債と赤字国債がありますが、建設国債――道
路や橋などの社会資本を建設する目的で発行される国債について
説明します。
国債は国民に対する国の借金です。借金はいずれ返さなければ
なりません。国債も同じことであり、償還期限というものが定め
られています。しかし、例えば、10年国債を国が10年後に償
還するわけではないのです。建設国債は60年償還ということが
決められているからです。
つまり、道路や橋などの耐用期間を60年とみなし、その建設
資金を調達するため、国債は60年かけて償還すると決められて
いるのです。しかし、60年満期の国債では市中では消化されに
くいため、満期5年や10年などの国債で調達して償還するので
すが、そのとき償還分に見合う新たな国債を発行できるのです。
これを借換債といいます。
しかも、借換債を発行しても、既存の借金を継続するためのも
のなので、政府の新たな借金にはならないというわけです。それ
にこの借換債は一般会計――われわれが通常財政や予算と呼んで
いるものの中には計上されないので、国民の目にふれることはな
いのです。
もうひとつ、このように借換債が発行されると、当然国債の利
払い費(国債費)は膨らむことになりますが、国債費も1980
年代に一般会計から特別会計に移されているのです。したがって
国債費が膨らんでも一般歳出とはならないため、その分赤字国債
を発行しないで済むことになります。巧妙な仕掛けです。
建設国債というのは、それによって社会資本が次の世代に受け
継がれるので、長期償還が認められるというのは、一応の理屈で
あると思います。しかし、森本氏の指摘によると、これは官僚が
国債の償還を少しでも遅らせるために作り上げたトリックである
というのです。
なぜなら、国が定めた社会資本の平均耐用年数は32年、道路
の耐用年数は45年なのです。いくつかの社会資本の耐用年数を
上げておきますが、60年などというのは皆無です。
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道 路 ・・・ 45年 下水道 ・・・ 34年
港 湾 ・・・ 50年 国有林 ・・・ 34年
水 道 ・・・ 32年 治 水 ・・・ 49年
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道路の耐用年数が45年なのに、その建設資金の償還は60年
は少しおかしいと思います。日本の地方債の多くは20年償還で
すし、諸外国の例でも20年〜40年というところであり、60
年というのは驚くべき長期です。昭和20年頃に建設した道路の
償還が今年くるのですから。 ・・・[日本経済39]
≪画像および関連情報≫
・国家破産とは何か
日本の場合「国家破産」という出来事がある日突然起こるこ
とはない。国が借金を返せる見通しが立たなくなり、返済を
諦め、債権者に救済を求めること。ただ日本の借金には「国
外からの借金」がないので、過去にアルゼンチンがやったよ
うな対国外への債務不履行(デフォルト)のような「国家破
産を実感できるわかりやすい事件」は起こらない。
http://homepage1.nifty.com/silabel/kyoyo/kokka_hasan.html
・森本亮氏の写真
森本亮著『日本国破産への最終警告』
