2010年05月07日

●「なぜ、検察は当初動かなかったのか」(EJ第2807号)

 ある業績好調の企業が上場するに当たり、その未公開株を世話
になった人に対して譲渡する行為は慣行となっており、違法では
ない──これは何回も述べた通りです。
 リクルートが関連会社リクルート・コスモスの未公開株を幅広
く譲渡しているという情報を、朝日新聞の横浜支局が掴んだので
す。確かにその行為自体は違法ではないが、当時のリクルートと
いえば名だたる先進企業であり、未公開株の譲渡先が政治家、財
界人の多数にわたっている──朝日新聞としてはこれはスクープ
になると考えたのです。
 しかし、難点はあったのです。リクルートは、公共事業を請け
負っている許認可事業の会社ではなく、その事業の中心は情報誌
の出版であり、官庁から受けている許認可は郵政省(当時)の第
三種郵便物認可だけしかないという点です。そうであるとすると
単に親交を深めるために未公開株の譲渡をしたといわれてしまう
と、それ以上追及できなくなる──そこでひとつのストーリーを
組み立てたのです。
 それは、リクルートが将来のビジネスを念頭に置いて、その商
法上役に立つと思われる政財界の大物たちに未公開株を譲渡した
というストーリーです。
 考えてみると、これは小沢事件に似ています。現在、小沢氏は
なぜ巨額な資金を持っているのかが疑われています。マスコミは
長年にわたって小沢氏の金脈を追っていますが、確たる証拠が掴
めずにいます。しかし、これは小沢氏からみると、余計なお世話
であるということになります。
 そこでストーリーを組み立てたのです。そのストーリーとは、
小沢氏がこれまでの政治経歴において、ダムや道路づくりなどに
関連して不正に献金させ、それをさまざまな手口で隠している。
まして小沢氏は師である田中角栄元首相、金丸信元副総理に近い
存在であったため、きっとそういう手法をマスターしたに違いな
い金権政治家であるというものです。
 そして、一貫してマスコミは小沢氏をそのストーリーに基づい
て報道してきているのです。しかし、小沢氏について詳しく調べ
てみると──小沢氏を肯定的に書いている本だけでなく、批判文
書もすべて読んだうえでの結論ですが──小沢氏はそういう政治
家ではないと確信できるのです。
 小沢氏は田中・金丸氏には世話にはなったが、金集めの手法に
関しては賛同できず、そのため政治改革を進めたのです。しかし
自民党では改革ができないと考えて、自民党を離党しています。
以後は昨年までは一貫して野党の議員として過ごしてきており、
金権に関する疑惑をもたれるいわれはないのです。
 リクルート事件の発覚時に小沢氏は自民党の副幹事長を務めて
おり、リクルート事件を調べる側にいたのです。当時小沢氏は既
に大物といわれており、もし、江副氏が賄賂目的で未公開株を譲
渡しようとしたのであれば、小沢氏にも声をかけたはずですが、
そういう事実は一切ないのです。
 しかし、「小沢=金権政治家」というイメージでの報道が長年
にわたっていると、今や国民の間にはそういうイメージの刷り込
みができてしまっています。これほど理不尽な話はないし、また
いまだかつてこれほど叩かれながら、逮捕も起訴もされていない
政治家はいないのです。だから、検察審査会の「起訴相当」の議
決が出たのでしょうが、今度こそ起訴しようとしているのです。
 江副氏に話を戻します。朝日新聞は前記のストーリーを組み立
てたことで、その報道は他紙のそれとは明らかにリクルートにこ
だわっていたのです。例えば、他紙がなだしお事件について詳細
に報じているのに対し、朝日は次のように報じていたのです。
―――――――――――――――――――――――――――――
      リクルート関連株で江副氏語る
      「政治家への譲渡」の認識否定せず
           1988年7月25日付、朝日新聞より
―――――――――――――――――――――――――――――
 まず、疑われたのは証券取引法違反です。7月29日になって
大蔵省証券局の担当官がリクルート、コスモス、幹事証券会社に
立ち入り調査を行っています。しかし、調査の結果、「特段の問
題なし」という評価をもらっているのです。
 その後、国会でもたびたび野党議員によってこの問題は取り上
げられましたが、問題はないということで終わっています。した
がって、この時点で江副氏としては、逮捕・起訴など考えてもい
なかったといっています。実際に検察はこの時点でもピクリとも
動いていなかったのです。
 未公開株の譲渡が違法ではないというのは、未公開株が公開時
に必ず値上がりするという保証はないからです。それはコスモス
の株も同じであったのです。たとえ賄賂目的で譲渡しても、公開
時の価格が譲渡価格と同じであったり、値下がりしたとすれば、
賄賂にはなり得ないからです。
 1988年8月9日のことです。半蔵門病院に入院していた江
副氏は、衆議院予算委員会のコスモス株の証取法問題についての
質疑が終了したことをテレビで知ったのです。
 これを契機に病院前に陣どっていたカメラマンたちはいなくな
り、報道はようやく終息に向かう気配が見えていたのです。江副
氏は、この機に海外に行くことに決めて、計画を練っていたので
す。これまでにも海外に行こうとはしていたのですが、そうする
と「江副氏海外逃亡か!?」と書かれますよといわれて、報道が
終息するのを待っていたのです。
 しかし、9月5日になって、とんでもないことが起こったので
す。コスモスの取締役社長室長で広報も担当している松原弘氏が
楢崎弥之助代議士を訪ねて、頭を下げて現金贈与を申し出ている
映像が日本テレビで繰り返し、報道されたのです。
 一体どうなっているのか。江副氏は愕然としたのです。これが
後にいう「松原事件」です。詳細は、連休明けの10日からの週
に書きます。      ――──[ジャーナリズム論/11]


≪画像および関連情報≫
 ●証券取引法とは何か
  ―――――――――――――――――――――――――――
  証券取引法は現在「金融商品取引法」になっています。金融
  商品取引法とは、証券市場における有価証券の発行・売買そ
  の他の取引について規定した日本の法律である。平成19年
  9月30日より前の法律の題名は証券取引法であった。金融
  商品取引法において規定されるルールの中にはインサイダー
  取引などの不正な取引を排除するための規制や、有価証券そ
  のものや有価証券の発行会社などの関連法人に関する開示に
  関するルールが含まれる。また、株式の公開買付制度など株
  式の取得に関するルールを規定し、それぞれの金融商品を取
  扱う業者についての取扱いを定めている。
                    ──ウィキペディア
  ―――――――――――――――――――――――――――

江副浩正氏.jpg
江副 浩正氏
posted by 平野 浩 at 04:22| Comment(0) | TrackBack(0) | ジャーナリズム論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス: [必須入力]

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]


この記事へのトラックバック
RDF Site Summary