2006年03月16日

ネバダ・レポートというものがある(EJ1796号)

 日本は「小さい政府」を目指しているということが何回もいわ
れています。要するに政府が大きくなりすぎたというわけです。
しかし、昨日のEJでも見たように、日本は経常収入面で見る限
り、小さすぎる政府なのです。
 それならば何をもって大きな政府といっているのでしょうか。
それは歳出面に着目したものと考えられます。歳出面(総支出)
をチェックしてみましょう。%は対GDP比です。
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           1999年     2000年
     ――――――――――――――――――――
     日  本  38.1%     38.2%
     ――――――――――――――――――――
     米  国  30.0%     29.3%
     カ ナ ダ  38.8%     37.8%
     英  国  39.1%     38.4%
     フランス  52.1%     51.1%
     ド イ ツ  45.9%     43.0%
     イタリア  48.3%     46.7%
   神野正彦著、『二兎を得る経済学/景気回復と財政再建』
                 講談社+α新書79−1C
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 しかし、歳出面を見ても国際的にはとくに大きな政府というわ
けではないのです。しかもその大きさは、国債費によって押し上
げられており、別に公共サービスの供給が多くて豊かである――
そういうわけではぜんぜんないのです。日本の公共サービスの質
はけっして高くないからです。
 国債というものは、将来の税収を担保にして政府が財政赤字を
ファイナンスするために発行する債券です。したがって、その償
還に当っては税金を当てるしかないのです。したがって、国債を
発行するということは、将来増税になるということを国として宣
言しているのと同じなのです。
 国債が適正に発行され、国民がそれによって満足できるだけの
公共サービスを受けているのであれば、政府から適切な説明があ
れば、国民は国債の償還に当たって増税に応じるはずです。
 しかし、それが大幅な赤字になっているということは、国民が
利益を享受しない不必要だと考えている支出に財源を充当した結
果であると考えるべきです。
 日本国家破綻説が溢れるなかにおいて、何とか再生の道を求め
てここまで分析してきたのてすが、本当の実態はかなり深刻であ
ることは事実のようです。巧妙に重要なことが隠されてきている
からです。それに日本の財政のメカニズムはきわめて複雑であり
素人の理解を超えています。あえて、複雑にして分かりにくくし
た形跡があり、表面上は問題がないように見えるのです。
 国家破綻論について論じた書籍は現在書店に溢れていますが、
そのほとんどは事実誤認か、間違った前提と乱暴な結論か、針小
棒大かのいずれかですが、なかには真実に肉薄していると見られ
るものもあります。
 そのひとつをご紹介します。2006年2月23日に発刊され
た次の書籍です。
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     森本亮著
     『日本国破産への最終警告』 PHP研究所刊
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 森本亮氏は、三菱信託銀行出身の経済評論家で、現在、経済工
学研究所を主宰されている金融分野のエキスパートです。同書の
内容は、客観的事実に基づく合理的な推論が積み上げられ、この
手の本につきものの誇張が一切ないのに、きわめて説得力があり
ます。しかも、新聞、雑誌などでは入手できない最新の情報に基
づいて記述されています。
 EJの今回のテーマとしては、そろそろ終りに近づいています
が、その最後の局面において森本氏の主張をご紹介し、その主張
に関連のある事実について記述してみたいと思います。
 「ネバダ・レポート」というのをご存知でしょうか。
 実は、日本の財政の破産的状況は国外でも注目されており、I
MF(国際通貨基金)ではそのときに備えてどうすべきかとの処
方箋を用意しているのです。その具体的な案のひとつが「ネバダ
・レポート」といわれるものです。
 けっしてデマではないのです。このネバダ・レポートの存在を
竹中平蔵金融担当大臣(当時)が衆議院予算委員会で認めている
からです。
 森本氏の本から、その項目をご紹介しておきます。実に戦慄す
べき内容になっています。
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 1.公務員の総数および給料の30%カット、ボーナスはすべ
   てカット
 2.公務員の退職金は100%カット
 3.年金は一律30%カット
 4.国債の利払いは5年から10年間停止
 5.消費税を15%引き上げて20%へ
 6.課税最低限度を年収100万円まで引き下げ
 7.資産税を導入して、不動産に対しては公示価格の5%を課
   税。債券・社債に対しては5〜15%課税。株式は取得価
   格の1%を課税
 8.預金は一律ペイオフを実施するとともに、第二段階として
   預金額の30%〜40%カットする
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 どうでしょうか。こんなことが現実のものになっては困ります
が、そうなる可能性を十分にあると思います。国はあまりにも多
くのことを隠しており、一般にはその実体が見えないよう擬装さ
れているのです。          ・・・[日本経済38]


≪画像および関連情報≫
 ・ネバダ・レポートに関する衆議院予算委員会質問より
  ●五十嵐委員 私のところに一つレポートがございます。ネ
  バダ・レポートというものです。これは、アメリカのIMF
  に近い筋の専門家がまとめているものなんですけれども、こ
  の中にどういうことが書いてあるか。ネバダ・レポートの中
  でも、昨年の九月七日に配信されたものなんですけれども、
  IMF審査の受け入れの前に、小泉総理の、日本の税収は、
  五十兆円ほどしかない、今の八十五兆円を超える予算は異常
  なんですという発言があります。これを大変重視して、当然
  だと言っているんです。同時に、九月上旬、ワシントンで、
  私、柳澤大臣と行き会いましたけれども、そのときに、柳澤
  大臣が記者会見をワシントンでされていまして、IMFプロ
  グラムを受け入れるという発言をされていますね。これは御
  確認をさせていただきたいんですが、そのとおりですか。
         ――2002.2.14/衆議院予算委員会

1796号.jpg
『日本国破産への最終警告』
posted by 平野 浩 at 06:32| Comment(0) | TrackBack(0) | 日本は本当に破綻危機なのか | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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