道各社は1社を除いて取材体制を解いたのです。もし、そのとき
報道各社がすべて取材をやめていたら、政治とカネをめぐる戦後
最大の疑獄事件とされるリクルート事件は、陽の目を見ることは
なく終わっていたはずです。
このように書くと、悪が表に出ないで終わっていたというよう
に取られるかもしれませんが、そうではないのです。本来企業の
オーナーが関連会社の株式上場に当たって、企業発展に尽力して
いただいた親しい人に未公開株を譲渡し、以後安定株主になって
もらうこと自体は違法でないし、その譲渡を受けたからといって
法に問われることはないのです。
したがって、江副氏の場合、やりすぎた感は確かにあるものの
あくまで法律の範囲内でやったことであり、それに対して約15
年に及ぶ322回の公判の結果、彼に下された「懲役3年/執行
猶予5年」の罪が相応しいものであったかどうかは疑念の残るこ
とであります。
さて、県警の立件断念によっても報道を中止するどころか、逆
に取材体制を強化したのは朝日新聞なのです。それは同社の山本
博デスクの判断であったのです。なぜ、山本デスクが取材体制を
継続・強化したかについて田原総一朗氏は、当の山本デスクに取
材して、次のように述べているのです。
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まず、川崎市は伊藤三郎市長が革新系で革新市政だつたのです
よ。革新の売り物は、何よりも清潔。これだけでしょう。無能
なんですから。その売り物の清潔さが首席助役によって汚され
ている。これはおもしろいじゃないか。それに贈賄側が土建屋
ならば、当たり前すぎておもしろくないが、いまをときめくリ
クルートで、きわめて特異な成長企業として日本中の注目を集
めている。そのリクルートの贈賄というのは、意外性があって
おもしろい。さらに、『株をやらないのは化石人類』だといわ
れる株ブームの中で、現金ではなく株の操作が賄賂のように使
われた。バブルを利用した。この手口もおもしろい。
──田原総一朗氏
――平野貞夫著/講談社刊
『小沢一郎完全無罪/「特高検察」の犯した7つの大罪』
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「革新市長の売りの清潔さ」、「今をときめく成長企業リクル
ート」、「株操作による新しいタイプの賄賂」──これら3つの
要素は意外性があって面白いし、刑事事件として立件できるかど
うかはわからないが、社会的に批判を浴びる事件であり、ジャー
ナリズムの責任として追及すべきであると山本博デスクは取材を
続けた理由についてこのように話しているのです。
「小沢一郎論」のときにも述べましたが、佐藤優氏は2009
年の政権交代によって官僚組織と国会議員による「誰が日本国家
を支配するか」の権力闘争がはじまったと述べています。
官僚組織にとって国民は無知蒙昧な存在であり、国を支配する
のは国家公務員試験や司法試験などの難しい資格試験に合格した
エリートであるべきであり、結果としてそれが国民の幸せにつな
がるのだと考えている──2009年8月までは、そういう官僚
主導の政治が続いたのです。
これに対して民主党は、国家を支配するのは国民により選挙さ
れた国会議員であるとして、「政治主導」を推進しつつあるので
すが、いろいろな面で官僚組織による妨害工作を受けてかなり不
安定な政権運営を強いられています。
官僚組織は、あくまで主役は国会議員であるようにして黒子を
演じ、けっして表面に立たないようふるまっていますが、国を動
かすあらゆる決定は、実質上キャリア組トップの事務次官を頂点
とする官僚組織がやってきたのです。そして、問題が生じたとき
は、国会議員である大臣に責任を取らせるという巧妙きわまるシ
ステムを長い年数をかけてつくり上げてきたのです。
事務次官といえば、キャリア組の出世の最終ゴールです。その
割には「事務次官」とは控えめな名称ではないでしょうか。もと
は「次官」だったのですが、「次官」といえば上があり、一歩引
いたように見えるところがなかなか巧妙です。このようにして自
分の身を安全な場所に置いて事実上国を動かし、失敗すれば大臣
に責任を取らせてきたのです。
さらに事務次官の経験者を中心に自らが国会議員になる人も多
くいるのです。そういう元官僚の国会議員は、一部の例外はある
ものの、従来の官僚機構の慣行を忠実に守るので、官僚主導によ
る政治が長い間にわたって続いてきたのです。
それでもたまには力のある国会議員が登場することもあり、彼
らが今までの慣行を変えようとすると、官僚か国会議員のどちら
がエライか国民に示すことが必要になります。
そういうときに登場するのが官僚エリートの代表ともいうべき
検察なのです。彼らは「世の中をきれいにする」ことを標榜し、
ときには総理大臣でも与党幹事長でも逮捕します。そして、国民
にこの国を支配しているのはどちらかを知らしめるのです。検察
が総理大臣を逮捕すれば、どちらがエライかいうまでもないこと
です。そうして起こった事件が帝人事件であり、ロッキード事件
であり、これから述べるリクルート事件なのです。そして、現在
進行中の小沢事件も同様です。
まして民主党はあろうことか、キャリアトップの事務次官の職
を廃止し、公務員制度を改革しようとし、天下りの廃止を強行し
ているのです。したがって、官僚組織としては、それこそ死に物
狂いになって抵抗しようとします。
それが検察による国会議員の摘発にはじまって、さまざまな局
面での妨害やサボタージュなどの足のひっぱりを行っています。
鳩山政権が迷走しているように見えるのはそのためです。それは
彼らの存亡を賭けた戦いであり、これからますます加熱してきて
くるはずです。 ――──[ジャーナリズム論/08]
≪画像および関連情報≫
●事務次官とはどういうポストか/オールアバウトより
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大臣政務官の下が事務次官で、ここからが公務員つまり官僚
たちのポスト、専門的にいうと「一般職」になります。事務
次官は官僚がつく最高のポストで大臣を助ける重要な役職で
す。事務次官の下はいくつかの「局」で構成されています。
局のトップである局長もまた、重要なポストです。また、局
と同等の機関として官房(トップは官房長)があります。官
房は企業でいうと総務部と人事部をまとめたようなもので、
実際には局よりも力をもっています。また、事務次官を補佐
する役職が置かれることがあります。例をあげると外務省の
外務審議官、財務省の財務官、農林水産省の農林水産審議官
などです。こういう役職は専門用語で「総括整理職」といわ
れています。
http://allabout.co.jp/career/politicsabc/closeup/CU20010807/
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田原 総一朗氏
前半と後半で、内容につながりがありませんね。
ムリな鳩山・小沢擁護をこじつけたいのがミエミエです。
> 鳩山政権が迷走しているように見えるのは
なるほど。
迷走している、という景色は、平野君にも見えているわけですね。
しかし、その理由はまた空想の世界を漂っているようで。
国家の首脳間であれだけウソ八百の約束をして、
国民にもマニフェストとまったく逆の詐欺行為を続け、
しかも脱税王なんだから、迷走しないわけがない。
そんなこともわかりませんか?
鳩山は「見える」んじゃなくて、本当に「迷走している」んですよ。
「政権担当能力なんてまったく無く、ムチャクチャやってる」んですよ。
現実をよく見たほうが良いでしょう。
もう夢の中なのかもしれませんが。
>国家の首脳間であれだけウソ八百の約束をして、
小泉さんが北朝鮮から拉致被害者を取り返した時もサヨクの私は国家首脳が嘘をついた!とネットで書き立てました。
拉致被害者は一週間でまた北朝鮮へ返される約束だったからです。
右の人から見ると鳩山さんも嘘をついているように見えるんですね。