年までやっていたように日銀が引き受けるという正常なかたちに
戻すと、100兆円の資金が浮いてくる――問題はこれを何に使
うかです。
まず、実施すべきは投資減税です。
ここに経済産業省の作成した「IT投資促進税制の投資減税モ
デル」というものがあります。投資をするからには、こういうシ
ミュレーション・モデルを作って分析してから実施するのです。
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IT投資促進税制 ・・・・・・ 3年間合計 1.2兆円
IT投資の増加 ・・・・・・・ 3年間合計 2.2兆円
実質GDP押上効果 ・・・・・ 3年間合計 2.7兆円
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国・地方への税収の影響 ・・・ 6年間合計
国 税1.54兆円
地方税1.02兆円
投資増加波及効果に伴う雇用増 3年間投資 18.5万人
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IT投資を促すため減税を3年間で1.2兆円を行うと、それ
によって投資は2.02兆円増加し、それによる実質成長率の押
し上げ効果は2.7兆円になると計算されています。
問題は税収への影響ですが、減税実施後6年間で国税は1.5
4兆円(加えて地方税1.02兆円)となっています。これによ
り、3年間で1.2兆円減税しても減税実施から6年間で税収の
増加分が1.54兆円ですから、0.34兆円プラスになったこ
とになります。
IT投資増加による直接的な雇用増加効果は18.5万人です
が、中長期的には、実質GDP押し上げ効果によって64万人の
雇用を増やせると推計しているのです。
この投資減税は2003年度に投資減税枠2兆円が組み込まれ
実施されているのです。2004年度の税収が当初予算42兆円
から45.5兆円に増えているのは、この投資減税効果であると
推定されているのです。
政府は法人税の減税によって投資を促進させようとしているの
ですが、法人税の減税は法人税を納めている企業しか恩典がない
のです。また、企業が減税分を投資に回すとは限らないのです。
したがって、投資した企業だけが恩恵に浴することができる投資
減税が有効なのです。
しかし、政府はこのIT投資税制を廃止し、別のかたちで実施
するとしており、事実上廃止を決めています。どうしても税金で
とりたいたいという財務省のハラが透けて見えます。
菊池教授の本には、日本再興投資資金枠による税収倍増・赤字
国債解消の具体的にして、十分実行可能な詳細なプランが提案さ
れています。
詳細は本に譲るとして、それが2006年度から実施された場
合の10年後のかたちを示しておくことにします。
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1.名目成長率 ・・・・・・・・・・・ 毎年4〜5%増加
2.名目GDP ・・・・・・・・ 740兆円〜800兆円
3.普通国債の名目GDP比率 ・・ 104% → 80%
4.長期金利 ・・・・・・・・・・・・・・ 1〜2%前後
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現在の日本の現状からは夢のような数字が並んでいますが、上
記経済産業省の投資減税モデルなどの分析を参考にして精密に予
測が行われており、けっして荒唐無稽な計算でないことを申し添
えておきます。
現在、政府(財務省)は、こういう何とか増税をさせないプラ
ンを封殺しています。マスコミもこれに協力しているように見え
ます。一番不愉快なのはあの借金時計――1秒間にXX円ずつ国
の借金が増えていることを示すあの時計です。日曜日には政治番
組が花盛りであり、増税是か非かの論議が行われていますが、こ
ういう席に菊池英博教授のような方が呼ばれることはまずないで
しょう。したがって、多くの国民は、増税やむなしの方向に誘導
されてしまうのです。
繰り返しますが、国が国民から取り立てる資金は、税金か国債
しかないわけであり、国からみるとどちらも同じことなのです。
しかし、税金というかたちで取ると、それは財政上の黒字になり
国債を売るというかたちを取ると、赤字として計上されてしまう
のです。あなたが国――いや財務省の立場だったら、どちらの立
場を取りたいですか。
明らかに「税金で取りたい」に決まっています。だから、何が
何でも税金というかたちで取りたがるのです。また、国債という
かたちで国民に対して行った借金は、最終的には税金を取り立て
て帳尻を合わせるしかないということなのです。
谷垣財務相は、「こんなときに増税しないでも・・」と迫られ
ると、必ず次の言葉を返しています。
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そうしないと、ツケを次の世代に先送りすることになる
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このことばは一応正しいといえます。国としては、税で取り立
てるのも、国債を売るのも同じことですが、世代会計という立場
で考えると、税でとるか国債を売るかは大違いなのです。
なぜなら、国債には償還期限があるということです。国債は償
還期限までは国債保有者にとって金利を生む金融資産ですが、国
がその国債を償還するときは、国債保有者に元本を返済する資金
を税金で取り立てることで帳尻合わせをするのです。そうすると
償還する時期に税金を支払う立場の人は税金の分だけ自分の使え
るお金が少なくなります。まして、国債を持たず税金だけは払わ
なければならない人もおり、先送りすると世代間の会計ををゆが
めることになるのです。 ・・・ [日本経済36]
≪画像および関連情報≫
・IT投資促進税制とは何か
2000年11月に成立した「IT基本法」では、5年以内
に「世界最先端のIT国家」を目指すと宣言しています。こ
れを一層推進するため翌年に政府は『イー・ジャパン戦略』
と名付けた政策プログラムを打ち出しています。政府は、こ
の政策方針の下にIT投資促進税制を創設しました。政府は
ITの基盤整備に積極的に取り組みながら民間企業にもIT
活用による経営基盤の強化を促しています。IT投資促進税
制は、民間企業に対するIT投資促進策といえます。
http://dynabook.com/pc/business/it_info/index_j.htm
・日本の借金時計
http://www.takarabe-hrj.co.jp/takarabe/clock/

投稿者 立木信