2010年04月26日

●「検察の劣化は帝人事件にはじまる」(EJ第2802号)

 これからしばらく戦前戦後の政治的大事件にからんで、当時の
マスコミがどのように動いたかについて見て行くことにします。
そうすることによって、検察に代表される官僚機構プラス政権与
党(自民党)と大企業とマスコミがどのようにして連合軍を組むに
いたったかが見えてくると思うからです。
 1934年のことです。「帝人事件」という事件が起こったの
です。帝人──帝国人造絹絲株式会社は当時鈴木商店の系列下に
あったのですが、1927年の恐慌で鈴木商店が倒産すると、帝
人の株式22万株は台湾銀行の担保になったのです。
 業績が回復したので、鈴木商店の金子直吉氏が台湾銀行の株を
買い戻すため、鳩山一郎氏や「番町会」という財界人グループに
働きかけ、11万株を買い戻したのです。その後で帝人が増資を
決定したため、株価は大きく値上がりしたのです。
 1934年に時事新報(武藤山治社長)が「番町会」を批判す
る記事を掲載し、その中で帝人株をめぐる贈収賄疑惑を取り上げ
たのです。当時文部大臣の鳩山一郎氏は議会で関連を追及され、
「明鏡止水の心境」と述べたところ、辞任の意思表示だと報道さ
れたため、嫌気がさして辞任してしまうのです。
 その後、帝人社長や台湾銀行頭取、番町会の永野護、大蔵省の
の次官・銀行局長ら全16人が逮捕・起訴されたのです。これに
より政府批判が高まり、同年7月に斎藤内閣は総辞職することに
なったのです。なお、この事件の逮捕者の拘留期間は200日に
及び拷問による自白の強要もあったといわれます。
 これが「帝人事件」なのですが、司法部(検察)は、捜査段階
からまったくデタラメなリーク情報をマスコミに流し続け、それ
によって鳩山文部大臣をはじめ、遂に斎藤内閣自体が崩壊してし
まったのです。ところが、1937年に起訴された全員が無罪に
なったのです。そのため、検察による強引な取調べと起訴が批判
され、「検察ファシズム」といわれたのです。このときの捜査と
小沢捜査は酷似しているのです。
 戦後になると、1954年に「造船疑獄事件」が起こります。
これは、海運・造船業界が、国からの巨額の助成金を引き出すた
め、政官界にカネをばら撒いたとされる事件です。
 海運・造船業界幹部の逮捕から始まった捜査は政界・官僚にお
よび、有田二郎氏ら国会議員4名の逮捕などを経て、さらに発展
する気配をみせていたのです。そして1954年4月20日、検
察庁は、当時与党自由党幹事長の佐藤栄作氏を収賄容疑で逮捕す
る方針を固めたのです。
 しかし、逮捕を予定した4月21日、犬養毅法務大臣は検察庁
法第14條による指揮権を発動し、佐藤幹事長は逮捕を免れたの
です。この指揮権発動は、当時の内閣総理大臣吉田茂氏の意向に
よるものであったといわれます。
 この指揮権発動をめぐり、衆議院は吉田首相の証人喚問議決を
要求したのですが、病気を理由に拒否しています。その後、衆議
院はその拒否事由が不十分として、議院証言法違反で吉田を告発
したものの、結局不起訴処分になったのです。
 結局逮捕者は71名にのぼったものの、そのほとんどが無罪判
決となり、造船疑獄の捜査がいかに杜撰なものであったかが明ら
かになったのです。そして現在では、この造船疑獄は、吉田内閣
を打倒し、鳩山一郎氏や岸信介らの政治家の再登場の道を開くた
めに入念に仕組まれた帝人事件と同様の検察ファッショの一例に
過ぎないとされているのです。
 そして、1978年にはロッキード事件、1988年にはリク
ルート事件というようような政財界を巻き込大事件が相次いで起
こったのです。その結果、時の総理大臣・田中角栄氏は失脚し、
ベンチャー企業の雄、江副浩正氏を完膚なきままに叩き潰したの
です。その結果、検察の奢りと劣化はますます進み、それが現在
の小沢事件にまでつながっているのです。
 長年にわたって小沢一郎氏と行動を共にし、もっとも小沢氏を
理解しているといわれる平野貞夫氏は、現在の民主党政権の現状
について次のように述べています。
―――――――――――――――――――――――――――――
 2009年の衆院選は、(国民の手による)無血革命だったとい
 っても過言ではない。55年にわたり権力を握り続けてきた自
 民党、官僚はそれを失ったのであるから、非常に危機感を抱い
 ている。だからこそ、なりふり構わず、民主党の求心力の中心
 ともいえる小沢一郎を狙ってきているのだ。彼らは小沢を政治
 的に潰せば、民主党も掌に乗せることができると考えている。
 だが、残念なことに肝心の民主党議員がそのことを認識してい
 ないのである・・・。それが、与野党を含め、親小沢と反小沢
 の低次元の争いに表れている。それを助長したのは渡部恒三元
 衆院副議長である。            ――平野貞夫著
   『小沢一郎完全無罪/「特高検察」の犯した7つの大罪』
                         講談社刊
―――――――――――――――――――――――――――――
 平野貞夫氏は、「民主党は民衆が官僚政治を打破するためにつ
くった政権」であるといっています。その民主党の中で最も政治
的経験の深い小沢が幹事長としてその体制を盤石なものにするべ
く日夜奔走していますが、検察は大マスコミと手を組んで、小沢
の政治的暗殺を企んでいます。あの手この手を駆使して、小沢を
表舞台から引きずり降ろそうとしています。そして情けないこと
に民主党の内部にもそれに同調する者がいることです。
 そういう検察ファッショをマスコミの側から分析しようという
のが今回のテーマです。そして、その日本のマスメディアがどう
いうものであるかを知る一番良い事例が「リクルート事件」なの
です。なぜなら、この事件では大手マスメディアが完全に検察の
狂言回しに成り下がったからです。
 明日から、リクルート事件についてマスメディアが何をしたの
かについて考えていきたいと思います。
            ――──[ジャーナリズム論/06]


≪画像および関連情報≫
 ●帝人事件と西松事件の共通点
  ―――――――――――――――――――――――――――
  元東京地検特捜部長の宗像紀夫氏が以前、朝日新聞のインタ
  ビュー記事の「特捜の体質変容を危惧」の中で、メディアと
  検察の関係について「マスコミは検察と一体になってしまっ
  ていますね。弱者の目を持たなければならないのに、強者の
  目で事件を見ているように見える。私は在職中は検察に好意
  的な新聞記事を読むと心地よかったのですが、検察の磁場を
  離れた今、そうした記事を読むと異常な感じがします」と述
  べている。
  http://blog.goo.ne.jp/kintaro-chance/e/3e63552f7a365055272fd23f8c54a5ee
  ―――――――――――――――――――――――――――

佐藤栄作氏.jpg
佐藤 栄作氏
posted by 平野 浩 at 04:13| Comment(1) | TrackBack(0) | ジャーナリズム論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
宗像紀夫氏、何を今さらという感じです。何十人と無罪の人々を有罪に持ち込んだのでしょうか?無実の人でも有罪に出来れば有能と言われてたのでしょうね…事件の本質を見抜く力がないから、無実の人でも縛り上げ有罪に持ち込む手法が貴方達の手口。貴方達の教え子が今の検察の体たらくです。反省するのは今の検察ではなく宗像さん貴方です。テレビで偉そうに言っている場合かと言いたい。
Posted by 無職 at 2010年05月07日 18:48
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