2010年04月16日

●「鳩山内閣は『子ども内閣』である」(EJ第2796号)

 2010年1月26日の国会で、次のような珍妙なやりとりが
行われたのです。
―――――――――――――――――――――――――――――
 菅直人 財務相:1兆円の予算を使って1兆円の効果しかない
         公共事業はだめだ
 林 芳正 議員:では子ども手当の乗数効果はどれぐらいか
 長妻  厚労相:子ども手当は実質GDPを0.2 %押し上げ
         るが、乗数効果はわからない
 林 芳正 議員:GDPの増分を財政支出で割れば乗数効果は
         出るだろう
 菅直人 財務相:1以上であることは間違いない。幼保一体化
         すれば・・・(ヤジで意味不明・中断。3分
         後に再開)
 菅直人 財務相:子ども手当の消費性向は0.7 程度。定額給
         付金は0.3ぐらいだった
 林 芳正 議員:消費性向と乗数効果とはどう違うか
 菅直人 財務相:乗数効果の詳細な計算はまだしていない
 林 芳正 議員:計算すればわかるだろう。消費性向と乗数効
         果の関係は?
 菅直人 財務相:1兆円の事業に金を使ったとき1.3 兆円の
         効果があれば、乗数効果は1.3 ・・・
         (中断。1分後に再開)
 林 芳正 議員:消費性向が0.7 ということは1を切ってい
         る。財政支出より低いのだから、財政支出を
         切って子ども手当にしたら、景気への効果は
         マイナスになるのではないか?
         (中断。1分後に再開)
 菅直人 財務相:子ども手当の効果は1以下だが、その他の効
         果がある。子育てで働けない人が働けるとか
         少子化が防げるとか・・・
 林 芳正 議員:市場が暗くなるといけないので、もうやめる
―――――――――――――――――――――――――――――
 このやりとりは、自民党の林議員が自分の経済の知識をひけら
かすためにやったと思われているようだが、それは違う。菅財務
相が次のように述べたことに、林議員が疑問を持って食い下がっ
た結果なのです。
―――――――――――――――――――――――――――――
 自民党は1兆円の予算で1兆円の効果しかないやり方をやって
 きた。自民党政権の投資は経済波及効果が低かった。
                       ──菅財務相
―――――――――――――――――――――――――――――
 これに対して林議員は「乗数効果のことをいっているのか」と
反論し、「子ども手当の乗数効果はどれぐらいか」と逆質問した
のです。そうしたら政務官だか役人だかが出てきてゴチャゴチャ
した結果、菅財務相は「0.7」 だと答えてしまったのです。
 これが違っているのです。面倒になるので、計算式の説明はし
ないが、次のように「2.3」 と答えればよかったのです。
―――――――――――――――――――――――――――――
     0.7 ÷ 0.3 =2.3333・・・
―――――――――――――――――――――――――――――
 このやりとりで何がわかったかといえば、菅財務相が乗数効果
について何もわかっていないことが判明したことです。これにつ
いて、池田信夫氏は次のようにいっています。
―――――――――――――――――――――――――――――
 これは理科系の菅氏は当然ご存じの無限等比級数の和の公式で
 消費性向が0.7 であれば、乗数効果は1/0.3 =3.33
 となる。これは大学1年生の春学期で習う超初歩的なマクロ経
 済学の常識で、菅氏のような答案を出したら不可である。乗数
 も知らない落第生が、7兆円の景気対策を出して「成長戦略」
 を立案しているのは恐るべきことだ。やっぱり「官僚主導」で
 やったほうがいいんじゃないの。
   http://ikedanobuo.livedoor.biz/archives/51353169.html
―――――――――――――――――――――――――――――
 このように、現在の鳩山内閣は「子ども店長」ならぬ「子ども
内閣」です。何も知らず、基礎的知識があるとはいえません。昨
今の大学生の学力低下を嘆く前に大臣たるもの、勉強して自らの
知識を増やし、磨きをかけるべきです。
 小沢は、民主党入りして、民主党の議員の実力と限界を一番よ
く知っているのです。まして与党はやったことはない。こんな連
中に内閣を組閣させたら大変なことになると考えて、自民党との
大連立話に乗ろうとしたのです。経験豊富なベテランの中でもま
れれば、成長するだろう。天下取りはそれからでも遅くはない、
と。・・・しかし、民主党の幹部は全員反対したので、小沢は代
表を辞任しようとしたのです。そのあたりのことが元自由党以外
の民主党の幹部議員はわかっていないのです。
 小沢の考える二大政党制の相手は自民党ではないのです。自民
党はこのままでは消えると考えています。それでは、対するこち
ら側は民主党かというと、それも違うのです。民主党は右から左
までウイングが広すぎるのです。それに組合と深く結び付いてお
り脱組合が必要です。これをやらない限り、本当の「政治主導」
など実現しない──小沢はそう考えているのです。
 それではどうするのか。夏の参議院選で勝利したら、小沢は民
主党をばらしにかかると思います。もし、それがうまくいかない
ときは、小沢親派を連れて民主党を出て、政策や理念を同じくす
る小政党と組んで新しい保守党の連立政権を作り、三度政権交代
を成し遂げるのではないか・・・、と私は考えます。
 1月4日から書いてきた「小沢一郎論」は今回でひとまず終了
します。そして、夏の参議院選の結果次第では、もう一度角度を
変えて取り上げるつもりです。長い間のご愛読を心より、感謝い
たします。      ――──[小沢一郎論/72/最終回]


≪画像および関連情報≫
 ●「乗数効果」とは何か
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  マクロ経済学で用いられる経済効果で、政府や企業が投資す
  ることで得られる効果が、さらなる経済効果へと波及してい
  き、初めの投資から何倍もの経済効果を得られること。ここ
  でいう経済効果は、国民所得とも置き換えられる。投資によ
  って得られる国民所得から消費に向かい、国民所得が伸び、
  再び消費が伸びるという仕組みが循環していくことで乗数効
  果が生まれる。
     http://m-words.jp/w/E4B997E695B0E58AB9E69E9C.html
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答弁に窮する管直人財務相.jpg
答弁に窮する管直人財務相
posted by 平野 浩 at 04:15| Comment(1) | TrackBack(0) | 小沢一郎論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
平野様
”小沢一郎論”大変興味深く読ませていただきました。私は15年ほど前から小沢一郎氏に期待している者です。この度の平野様の論考で、新たに知りえたことが多々あり、また元々知っていたことも整理することが出来ました。私の中で新たな小沢一郎観が出来上がりました。平野様に深く感謝いたします。
Posted by nobsuda at 2010年04月16日 12:39
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