2010年04月13日

●「生方解任の撤回は小沢の高等戦略」(EJ第2793号)

 民主党幹事長室の高嶋筆頭副幹事長による生方幸夫副幹事長の
解任と小沢幹事長による撤回──このドタバタを見てメディアは
「小沢幹事長の求心力低下か」という記事を載せていましたが、
このところさっぱり生方某の発言は聞こえてきません。どうした
のでしょうか。
 生方議員にメディアが取材を申し入れると、「これからは自粛
しなければならないので取材は受けない」といって逃げてしまう
のだそうです。一体何があったのでしょうか。
 昔のことですが、リーダーシップのことを論じた本にこんな話
が出ていたのです。中学校のある学級で、先生が教室に入ってき
ても廊下で遊んでいて、席に着かない生徒が何人かいる、そうい
うクラスがあったのです。普通の先生であれば、その問題児を教
員室に呼びつけて注意するなどの処置を取るのですが、この学級
の担当教師はそうしなかったのです。
 その教師は、そういう子がいるときは授業をやめて、クラス全
体で討議を命じたのです。始業時間までには全員が教室に入って
席に着くというごく当たり前のことが、このクラスではできてい
ない。どうしたら、いつまでにそれができるか全員でよく討議し
て、結論を教員室に持ってくるよう指示したのです。
 一時間後に代表の生徒数人が教員室にやってきて、明日からは
そういうことがないようにするという結論を持ってきたのですが
先生は納得しなかったのです。「現在のようなクラスのレベルで
は、明日からなんて無理だ。一週間時間をあげるから、それまで
にきちんとできるようにしなさい」と突き放したのです。
 クラスの代表たちは、とてもプライドを傷つけられ、再度クラ
スで討議しようということになったのです。しかし、先生の予想
通り、次の日も、またその次の日も教室に入らない生徒がいたの
です。先生はその都度授業をやめて討議を命じたのです。ところ
が、日が経つにつれて教室に戻らない生徒は減って、一週間後に
は全員が教室に入るようになったというのです。
 つまり、この教師は始業時間が来ても教室に入らないルール違
反の生徒個人を叱らず、そのクラスの責任を追及したのです。そ
うすると、集団には自然に「掟」のようなものが生まれ、それを
守らない者は、集団から非難を浴びせられ、制裁を受けることに
なるのです。これは問題児にとって、先生に呼びつけられて叱ら
れるよりはるかにこたえたのです。
 私は、今回の小沢による生方議員の解任撤回の処置を知ったと
きこの話を思い出したのです。もし、小沢が解任を撤回しなかっ
たとすると、生方議員はもっと派手に、もっと過激にマスコミに
出て、相変わらず小沢批判を展開し続けたでしょう。
 ただでさえマスコミは小沢批判をやりたいので、手ぐすねを引
いているのです。民主党議員である生方氏が小沢を批判すれば内
部闘争だとか内紛だとして、それを大々的に報道するはずです。
それに対して小沢は正面切って批判や反論はしにくいでしょう。
こういう状況は、夏の選挙に向けてけっしてプラス材料にはなら
ないことは明らかです。
 だから小沢は解任を撤回し、生方議員を幹事長室という自分の
指揮・命令が及ぶポジションに置いたのです。もしこのポジショ
ンにいて、やるべき国対の仕事をせず、外に対して上司の批判を
し続ければ、周囲──幹事長室の人間が黙っていないでしょう。
小沢はそれを狙ったのだと思います。実によく考え抜かれた戦略
であるといえます。
 しかし、相変わらず、小沢の政治とカネの問題は収まらず、小
沢は「天下の極悪人」のままです。検察は小沢を不起訴にしたも
のの、今度は検察審査会が検察の決めた不起訴処分の当否を検討
しており、近く議決する見通しと報道されています。一体いつま
でこんなことを続けるつもりなのでしょうか。
 本来検察審査会は完全非公開で、そういう情報が漏れることは
絶対にないはずなのです。それが報道されるということは、やは
り検察がリークしているとしか考えられないのです。元読売新聞
社の記者で、推理小説作家の佐野洋氏はこれにらついて次のよう
に疑問を投げかけています。
―――――――――――――――――――――――――――――
 漏れるはずのない検審(検察審査会)の会議情報が報道される
 のは異例だ。                ──佐野洋氏
        「日刊ゲンダイ」4月9日付(8日発行)より
―――――――――――――――――――――――――――――
 小沢については、昔から岩手県の公共工事に関して天の声を出
して違法な献金を受けているという噂を立てられていますが、今
までそういうことで本人が検察の取り調べを受けたのは、今年の
2回の事情聴取だけです。それで不起訴になっているのです。小
沢は、田中、竹下、金丸らのやってきたことをよく見ており、そ
れを反面教師にして今まで政治活動をやってきています。本人の
いうように不法はやっていないと考えます。
 日本人は今まで「検察のやることは正しい」という絶対的な価
値判断でことの善悪を決めています。しかし、今回の小沢事件ば
かりは、検察のやっていることには疑問符がつきます。それを裏
付けているのが、最近の冤罪事件の多さです。これらのケースは
起訴どころか、裁判をやって有罪判決を言い渡し、何十年も収監
したあげく無罪なのです。それでも「検察は正しい」といえるで
しょうか。検察は何ら責任を取らないし、謝罪すらしない。
 まして小沢の場合は不起訴になっているのです。推定無罪とい
う原則に立てば、報道各社がしつこくいつまでも政治とカネで小
沢を責めるのは間違っています。
 確かに秘書が逮捕されていますが、起訴事実は本来は指導して
訂正させているケースを有罪にしようとしているのです。それに
秘書を逮捕するのは検察のやることですから、小沢としてはどう
することもできないのです。それにまだ結果が出ていない。そう
いう状況でとくに身内の民主党内や味方の団体からの根拠のない
批判はとても見苦しいものです。 ――─[小沢一郎論/69]


≪画像および関連情報≫
 ●小沢氏不起訴の検事から事情聴取
  ―――――――――――――――――――――――――――
  小沢一郎民主党幹事長の資金管理団体「陸山会」の土地購入
  をめぐる収支報告書虚偽記入事件で、東京地検特捜部が小沢
  氏を不起訴としたことの当否を検討している検察審査会が捜
  査を担当した検察官から意見聴取したことが6日、関係者へ
  の取材で分かった。捜査資料なども検討した上で、近く議決
  するとみられる。小沢氏を政治資金規正法違反の罪で告発し
  た市民団体が2月、不起訴を不服として審査を申し立ててい
  た。審査会は非公開。「起訴相当」か「不起訴不当」と議決
  すれば特捜部が再捜査する。昨年5月に改正検察審査会法が
  施行され、「起訴相当」の場合、検察側が再び不起訴にして
  も、あらためて審査会が検討。その結果「起訴すべき」と議
  決すれば東京地裁指定の弁護士が強制起訴することになる。
               ──4月7日付、山陽新聞より
  ―――――――――――――――――――――――――――

佐野洋氏.jpg
佐野 洋氏
posted by 平野 浩 at 07:54| Comment(1) | TrackBack(0) | 小沢一郎論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
meiji life 在職中は、大変お世話になりました。田舎で、歳(70)相応に自分流の楽しみ方をしております。
EJは毎日読ませていただいております。メールを差し上げたいと以前から考えておりましたが、今日の第2793号を読んで、お願いを申しあげたくなりました。

日々坦々様が4月12日のブログに郷原信郎弁護士の「検察が危ない」を紹介しています。
明日、書店で購入予定ですが、平野さんの分析をこのEJで読ませていただきたく、お願いいたします。
Posted by 高間 成之 at 2010年04月13日 21:20
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス: [必須入力]

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]


この記事へのトラックバック
×

この広告は90日以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。