2010年04月08日

●「自民の集票組織を切り崩す小沢戦略」(EJ第2790号)

 小沢の政治とカネの問題、鳩山内閣の政権運営をめぐる不満、
閣僚のスキャンダルなどによって、鳩山政権と民主党の支持率が
下がりつつあります。期待が大きかっただけに、その反動も小さ
なものではなかったのです。
 こうなってくると、党内ではこれで参議院選に勝てるのかと不
安になる人が多くなってくるものです。自由党と合併する前の民
主党はそういう「風」に頼る選挙をやってきたのです。
 しかし、幹事長を務める小沢一郎は、政権を取る以前も以後も
検察による強制捜査に足元をすくわれながらも「風」に頼らなく
ても勝てる選挙の体制を構築しつつあります。長期政権を続ける
ためにはそういう体制を作る必要があるからです。
 政権交代以来、小沢は夏の参議院選での単独過半数獲得に向け
て、自民党の支持基盤を着実に切り崩してきています。とくに重
要なのは医療関連団体です。
 最初に小沢が落としたのは、日本歯科医師会です。昨年の10
月、小沢は大久保満男・日歯連会長と会談し、参議院選での自民
党からの組織内候補の擁立を撤回させています。そして今年2月
の日本歯科医師連盟(日歯連)の臨時評議会で、民主党比例候補
・西村正美氏を支援する方針を正式に決定しているのです。
 続いて日本看護協会──この協会は約60万人の会員を擁し、
今まで自民党にベッタリであった団体です。政治団体の日本看護
連盟を通じて、自民党に清水嘉与子・元環境庁長官、南野知恵子
・元法相などを送り込んでいるのです。そして7月の参議院選に
も新人の高階恵美子・元看護協会常任理事が自民党から出馬する
ことになっています。
 しかし、小沢は親団体である看護協会に手を打っているので、
同協会は高階恵美子候補擁立は支持できないと反対し、協会と連
盟は分裂状態になっています。結果がどうなるかです。
 そして、自民党最大の支持基盤である日本医師会ですが、4月
1日の会長選挙に民主党支持の原中勝征氏が勝利し、民主党支持
を鮮明にしたのです。
 もともと茨城医師会長であった原中勝征氏は早くから民主党支
持を打ち出し、自民党厚生族の大物である丹羽雄哉・元厚生相を
落選させています。原中氏は茨城医師会長であった2008年、
自民党が後期高齢者医療制度を実施したことに反発し、その撤回
を求め署名運動を行ったのです。
 長年保険料を払ってきた高齢者が一定の線で、制度と切り離さ
れるのはおかしい──こう考えた原中氏は、昨年の総選挙では、
自民王国であった茨城県で、民主党候補を積極的に応援し、自民
党と対決した7小選挙区のうち5選挙区において民主党を勝利さ
せているのです。
 しかし、原中氏の会長就任への道のりは厳しかったのです。後
ろ盾であった小沢が政治とカネで叩かれ続けていたし、鳩山政権
は「勤務医優遇」ではないかとの批判もあったからです。
 それは、民主党が2月の診療報酬改定で、10年ぶりに改定率
を引き上げ、医師不足が深刻な病院に重点配分、救急や産科や小
児科や外科に一層手厚い内容にする一方で、診療所の再診料を引
き下げたことにあるのです。日医会員の大多数は開業医であり、
開業医にとって再診料は収入の1割を占めているのです。
 このように、医師会が必ずしも一枚岩でなかったこともあって
民主党内の「反小沢」がきなくさい動きを見せていたのです。想
像するに、診療所の再診療引き下げに関して日医会員の一部が反
小沢グループに接近していたのではないかと思われます。
 4月3日付(2日発行)の「日刊ゲンダイ」は、これに関して
微妙な表現ながら、次のように報じています。ちなみに今回の日
医会長選挙では、現職で自民党寄りの唐沢祥人氏、民主党支持の
原中勝征氏、中立の森洋一氏の3人が争ったのです。
―――――――――――――――――――――――――――――
 民主党内の「反小沢」も、きな臭い動きを見せた。中立を訴え
 た森氏は、前原国交相の地元である京都府の医師会長も務めて
 いる。前原に近い仙石国家戦略相は、勤務医の待遇改善などか
 ら医療の再建を目指す議員連盟の中心メンバーで、日医=開業
 医と距離を置く。そのため、「反小沢は非原中で揺さぶりをか
 けた」(民主党事情通)とみられている。
     ──4月3日付(2日発行)の「日刊ゲンダイ」より
―――――――――――――――――――――――――――――
 もし、このことが事実とすれば、もはや「小沢と距離を置く」
程度ではない完全なる「反小沢/非小沢」的行動であり、これは
今後の民主党の運命に大きな影響を与えることになる可能性があ
ると思います。
 さて、参議院選の勝敗を決するのは、地方の1人区ですが、こ
れは農業票がモノをいいます。農業票のカギを握るのは、農協の
政治連盟「農政連」ですが、これも大きく揺らいでいます。
 昨年10月の時点で、全国農業協同組合中央会(全中)は、従
来の自民党一党支持を転換する方針を声明したのです。全国農政
連も、参議院選比例区で、自民、民主どちらの候補も推薦しない
方針を固めています。選挙区については、都道府県農政連の判断
に委ねられていますが、これを小沢が落とすのは時間の問題なの
です。いずれの組織も民主党の目を気にしているからです。
 かつての自民党のように、族議員が細分化された利権を持ち合
う組織であれば、地方ごとに支持・不支持を打ち出して、どの政
党寄りかをぼかすことができたでしょうが、現在陳情は、幹事長
室に一元化されているので、民主党に忠誠を誓わないと、野党扱
いにさせられてしまいます。小沢の戦略は効いているのです。
 小沢が今回厳しい扱いをしたのは、自民党の利権として全国の
票集めに貢献してきた「土地改良事業」に対してです。ここは、
自民党候補の擁立を見送る決定しかしなかったとして、4500
億円の予算を2100億円へと6割減額しています。土地改良事
業は、自民党の隠れた大票田であり、小沢はこれに対して厳しい
手を打ったのです。        ――[小沢一郎論/66]


≪画像および関連情報≫
 ●半減どころか6割減に/土地改良事業費
  ―――――――――――――――――――――――――――
  民主党・小沢幹事長が2009年12月16日、来年度予算
  編成の党の要望として土地改良事業費の半減を求めたことに
  ついて、赤松農水相は17日、現実的な対応は厳しいとの見
  解を示した。赤松農水相は、小沢幹事長が要望した土地改良
  事業費の半減について、農業ダムや灌漑(かんがい)事業な
  どすでに取りかかっているものもあるとしてこうした事業の
  実現は「万が一、半額となれば厳しい」との認識を示した。
  農水省は来年度、公共事業費を今年度より15%縮減すると
  し、土地改良事業には4889億円を計上している。赤松農
  水相は、要求額の縮減については「ある程度免れない」と応
  じる姿勢を見せているが、「必要なものだという姿勢に変わ
  りはない」と話している。   ――日テレ・ニュースより
  ―――――――――――――――――――――――――――

原中勝征新日医会長.jpg
原中勝征新日医会長
posted by 平野 浩 at 04:15| Comment(1) | TrackBack(1) | 小沢一郎論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
かつて自民党の地盤であった諸団体は、対話の幅を広げています。

日本共産党も食い込みを狙って懇談を繰り返し、手ごたえを感じています。

たとえ民主にいかなくても、自民票が切り崩されることは、結果として民主への追い風になっていますね。
Posted by cova at 2010年04月11日 08:58
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