析の続きです。
第3は「名目成長率VS長期金利」です。
名目成長率と長期金利の関係については、竹中総務相と与謝野
経財相との議論で有名になっています。
この議論について、『週刊/東洋経済』2/25日号に高橋洋
一氏の次の論文が掲載されています。
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与謝野・竹中論争が意味するもの
「政府部内で高まる成長率・金利論争を斬る」
――早稲田大学講師 高橋洋一
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論文自体は少し難しいですが、大変内容のある興味深いもので
あり、一読の価値はあると思います。しかし、この高橋洋一氏と
いうのは、既に述べたように、総務省参事官で、竹中総務相の懐
刀といわれる人物であり、当然のことながら竹中説の正しいこと
を強調する内容になっています。
この論文で述べられているのですが、「ドーマーの定理」とい
うのがあるのです。
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名目GDPの成長率が国債のコストよりも高ければ、国債残高
は自然に減少していく。 ――ドーマーの定理
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「国債のコスト」を長期金利と考えると、名目成長率と長期金
利の関係になってくるのです。現在の長期金利は1.4〜1.5
%で低水準です。問題は、この長期金利が量的緩和解除によって
どのくらいまで上がるかです。
3月3日の日本経済新聞によると、量的緩和が解除された場合
6月と12月の長期金利について、4人のエコノミストたちの予
測値が次のように出ています。
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6月 12月
佐野和彦氏 1.75% 1.75%
吉野昌雄氏 1.70% 1.90%
三浦哲也氏 1.80% 2.00%
小林益久氏 2.10% 2.20%
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財務省は2006年度予算を長期金利を2%と想定して組んで
います。したがって、最も高い場合でも長期金利は2%と考えて
間違いないと思います。
添付ファイルのグラフは、OECD諸国の中で、ドーマー条件
を満たす国の多寡を示しています。ドーマー条件を満たす国の数
から満たしていない国の数を引いて棒グラフにしたものです。条
件を満たしている国がそうでない国より多いときはプラスになり
逆のときはマイナスになります。
これを見ると傾向は明らかです。1960〜70年代は条件を
満たしている国が多く、1980〜90年代はマイナスになって
います。すなわち、1960〜70年代は名目成長率は金利を上
回っていたが、1980〜90年代になると、名目成長率は金利
を下回っているのです。しかし、2000年代になると、条件を
満たしている国とそうでない国が拮抗しています。
高橋洋一氏は、G7の主要先進国について1960年から20
04年までの平均で成長率と金利を比較しています。
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名目成長率 長期金利
アメリカ 7.3% 7.1% ◎
イギリス 9.1% 8.9% ◎
フランス 8.7% 7.9% ◎
カ ナ ダ 8.2% 8.1% ◎
イタリア 11.7% 9.8% ◎
ド イ ツ 6.3% 6.8% ▲
日 本 7.4% 5.4% ◎
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竹中総務相は名目成長率4%程度は堅実な前提とし、成長率は
長期金利を上回ると予測しています。この考え方に立てば、税収
は増えるので、増税をしないか、しても小規模の増税でプライマ
リーバランスの黒字化は可能という考え方です。
しかし、与謝野経財相は成長率4%は楽観的過ぎるとし、金利
は名目成長率を上回るのが常識的であるといって、竹中氏と真っ
向から対立しています。彼は財務省派で増税賛成なのです。
高橋氏は、この論争は物価上昇率がどうなるかによって決まる
といっています。現在、実質成長率は竹中氏も与謝野氏もともに
2%と予測しており、名目成長率は次の式で決まるからです。
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名目成長率=実質成長率+物価上昇率
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最近政府筋が日銀に対し、物価目標の設定を要求しているのは
こういう背景があるからです。日銀はどうなのでしょうか。名目
成長率と金利の関係について日銀の福井総裁は、2月の時点では
次のようにいっているのです。
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80年代以降、金融の自由化やグローバル化が進んだ後の各国
の例を見ると、長期金利は名目GDP成長率を幾分上回って推
移することが多い。 ――福井日銀総裁
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どうも竹中説は旗色がよくないようです。学者や日銀総裁まで
含めて増税の大合唱――谷垣財務相は土・日曜はテレビ各局にハ
シゴ出演し、財務省出身の評論家も経済番組に頻繁に出演して、
「増税不可避論」をひたすら説いています。菊池教授などはお呼
びがかからないようです。 ・・・[日本経済34]
≪画像および関連情報≫
・与謝野大臣と竹中大臣の違い
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与謝野経済財政担当相は現状の日銀の金融政策で十分とし、
インフレ目標政策には否定的である。一方、竹中総務相は、
現在政府と日銀が政策目標を共有しているとは言いがたい状
況に対して、インフレ目標政策の導入によって政府と日銀が
政策目標を共有し、そこまでは政府が金融政策への期待を表
明するが、ひとたび目標を掲げた後は日銀のオペレーション
は日銀に任せて、中央銀行の独立性を確保するという、世界
で標準的な金融政策を求めている。
『週刊/東洋経済』2/25日号所載/高橋洋一氏論文より
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・添付ファイルグラフ
『週刊/東洋経済』2/25日号所載/高橋洋一氏論文より