2010年04月01日

●「日本経団連御手洗会長の誤算」(EJ第2785号)

 2010年1月中旬のことです。予め予定されていた直嶋正行
経産相と御手洗経団連会長の会談がドタキャンされたのです。ど
ういう会談だったのかというと、経産相の諮問機関「産業構造審
議会」に産業競争力部会を設置する件に関する重要な会談であっ
たのです。
 産業構造審議会の会長は歴代経団連会長が兼務することになっ
ており、御手洗会長は、前奥田会長の跡を継いで2006年から
同審議会の会長を務めているのです。同審議会に新しい部会を設
ける場合、部会設置に先立って、経団連会長と経産大臣が会うの
は当然のことであり、それがドタキャンされるなど今までなら考
えられないことであったのです。
 実は日本経団連としては、政権交代が起きたため、民主党との
パイプがないことに困惑していたのです。そこで、トヨタ労組出
身の直嶋正行経産相との会談を政権との関係修復のチャンスとし
て期待していたのですが、それがドタキャンされたのです。なぜ
ドタキャンされたのか。どうやら、小沢幹事長の意向を忖度した
結果であることがわかってきたのです。
 日本経団連は慌てたのです。産業構造審議会に設置する産業競
争力部会は、鳩山内閣が今年の6月までにまとめる新経済成長戦
略を検討する部会であって、このままなら、日本経団連はこの部
会の委員から外される恐れが出てきたからです。
 なんとか小沢幹事長とパイプが作れないか──危機感を持った
日本経団連は、1月25日に、経団連名誉会長の今井敬・新日鉄
名誉会長と荒木浩・東京電力元会長(元経団連副会長)が小沢幹
事長と会談したのです。長老を引っ張り出したわけです。
 結果はどうだったかというと、どうやら小沢幹事長と2人の長
老との会談は失敗に終わったようなのです。なぜかというと、産
業構造審議会の財界人委員が、御手洗経団連会長抜きで進められ
たからです。経団連側の事情としては、5月に御手洗会長が退任
し、後任には評議員会議長の米倉弘昌・住友化学会長が内定して
いるので、民主党との関係修復は急務であったのです。
 鳩山政権は、トヨタ労組出身の直嶋正行経産相と松下電器産業
出身の平野博文官房長官が重要閣僚を占めていることから、「ト
ヨタ・パナソニック政権」と呼ばれているのですが、それを反映
したような人事が行われたのです。
 パナソニックの大坪文雄・社長、トヨタの渡辺捷昭・副会長、
東芝の西田厚聡・会長らが選ばれたのです。東芝の西田氏は日本
経団連の次期会長の有力候補であったにもかかわらず、日本経団
連の内部事情で外された人物だったのです。
 この人事を見た御手洗会長は、産業競争力部会の第1回会合が
開かれる前日になって正副会長懇談会を開き、献金斡旋中止を提
案したのです。もう自民党には献金しませんというサインを民主
党に送ったのです。あまりにも遅いタイミングであり、あわてて
恭順の意を表したかたちになったのです。御手洗会長は小沢幹事
長と民主党を軽く見ていたのでしょう。
 このタイミングで鳩山首相は、2月25日に民主党を支持して
日本経団連と距離を置いていた稲盛和夫・京セラ名誉会長を内閣
特別顧問に任命し、翌26日には前原国土交通相が同省の諮問委
員会の委員を大幅に交代させ、「交通政策審議会」会長の御手洗
氏を解任する人事を発表したのです。御手洗会長としては、小沢
の剛腕ぶりをみせつけられたかたちになったのです。
 もともと日本経団連と自民党は表裏一体の関係にあるのです。
1955年当時、社会党の台頭はすさまじいものがあり、社会主
義政党が政権を取ることを恐れた日本経団連は、総会において、
旧自由党と旧民主党の統一を要請する決議を行い、自由民主党の
結党を助けたのです。
 そして、日本経団連第3代会長の植村甲午郎氏と副会長の花村
仁八郎氏は、財界からの政治献金の窓口を一本化するために自民
党の政治資金団体「国民政治協会」の前身を設立したのです。
 この花村仁八郎という人物は「財界の政治部長」といわれてお
り、次の有名な言葉を残しています。
―――――――――――――――――――――――――――――
 政治献金は自由経済体制を守るための保険料であり、自民党政
 治を続けるためのコストである。      ──花村仁八郎
―――――――――――――――――――――――――――――
 もし、御手洗会長が細川連立政権で小沢が代表幹事として権力
を握ったとき何をしたかを調べる努力をしていたら、また、小沢
という稀代の政治家がどういう理念で政治をやっているかを多少
なりとも研究していたら、こんな事態にはなっていなかったと思
うのです。日本経団連のリーダーとしての資質を問われても仕方
がないと思います。
 実は非自民の細川連立政権ができたとき、小沢は自民党の資金
源を断ちに動いているのです。小沢は自民党政権を終わらせるこ
とを目的として離党したのですから当然のことです。
 何をしたかですが、政治資金規正法を改正して企業・団体献金
を規制し、日本経団連に対して自民党への献金斡旋禁止の申し入
れを行ったのです。当時の経団連会長であった平岩外四・東京電
力会長は小沢とパイプがあったので、平岩会長はこれに応じて、
「献金斡旋中止」を決めています。
 それに比べて御手洗会長の決断はあまりも遅過ぎたのです。政
権交代が起きてから、各種団体が続々と自民党から民主党に乗り
換えているにもかかわらず、日本経団連は小沢とのパイプ探しす
らしていないのです。もし、検察によって小沢は起訴され、失脚
すると読んだとすればお粗末の極みです。
 細川連立政権のときは、自民党が素早く政権を取り返したので
日本経団連に対し、献金再開を求めたのですが、豊田章一郎会長
と今井敬会長の10年間は復活しなかったのです。日本経団連が
献金斡旋を再開したのは、小泉政権時の奥田碩会長になってから
なのです。その奥田碩氏は今でも日本郵政の役員に留まっていま
すが、これには理由があるのです。―――[小沢一郎論/61]


≪画像および関連情報≫
 ●日本経団連とは何か
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  社団法人日本経済団体連合会とは日本商工会議所、経済同友
  会と並ぶ「経済三団体」の一つで東証第一部上場企業を中心
  に構成される。もともと経団連は日本の経済政策に対する財
  界からの提言及び発言力の確保を目的として結成された組織
  であり、日経連は労働問題を大企業経営者の立場から議論・
  提言する目的で結成された組織であり健全な労使関係を哲学
  としていた。加盟企業のほとんどが重複しており、また日経
  連は労使間の対立の収束と共に役割を終えつつあるとの理由
  から統合されたが派遣社員の急増は日経連の廃止と重なって
  いる。               ──ウィキペディア
  ―――――――――――――――――――――――――――

日本経団連・御手洗会長.jpg
日本経団連・御手洗会長
posted by 平野 浩 at 04:19| Comment(1) | TrackBack(0) | 小沢一郎論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
あまりに、自民党にくっつきすぎ方向転換が遅れた上に、時代の空気が読めない日本経団連。

産業競争力部会に参加するには、時代遅れの感覚がずれた団体はお呼びでないってことですね。
Posted by cova at 2010年04月11日 08:31
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