とき、少し難色を示したことはよく知られています。なぜかとい
と、藤井氏は財務省出身であり、結局のところ、財務省の官僚の
意のままになり、政治主導が果たせないのではないかと考えたか
らといわれています。しかし、民主党には他に財務大臣の適任者
がいなかっことも確かなことです。
そして、その小沢の懸念は現実のものになったのです。藤井氏
は、大臣に就任するや国債発行枠を44兆円以下にすることを発
言しはじめたのです。鳩山首相も藤井発言に同調する姿勢を示し
それから報道は鳩山発言をめぐってゴチャゴチャになってしまう
のです。数値目標は書かないとか、書いても努力目標にするとか
いろいろな案が出て誰もわけがわからなくなったのです。
この国債発行枠を設けることについて原口総務相は、鳩山首相
と平野官房長官に会い、次の表現を盛り込むことで意見は一致を
見たのです。
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国債発行額を約44兆円以下とする
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ところが、12月15日に総理官邸で閣議が行われたとき、表
現は次のように変更されていたのです。いわゆる財務省官僚によ
る「官僚作文」です。「約」がとれ、「以下」が「以内」になっ
ているのです。
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国債発行額を44兆円以内とする
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この変更をめざとく見つけた原口総務相は、内容が変更されて
いるとして、サインを拒否したのです。すったもんだのすえ、国
債発行枠の制限の表現は、次のように改められ、政府は追加経済
対策として7兆2000億円を計上した平成21年度予算編成の
基本方針を閣議決定したのです。
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国債発行額を約44兆円以内とする
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実は小沢幹事長は、鳩山首相が新規国債発行額を約44兆円以
内に収める意向を固めるまで、マニュフェストの実現のためにも
国債発行額を44兆円以上にすることも考えていたのです。何し
ろ税収が36兆円しかないのですから、国債の発行枠に制限など
設けるべきではないのです。小沢としては計画が狂ったと考えた
のでしょう。中国訪問から戻った小沢は、不機嫌そうに高嶋副幹
事長らに次のようにいっているのです。もともと小沢は44兆円
は麻生政権の国債発行額を上回りたくないというもので、そんな
ことはくだらないと考えていたからです。
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やむを得ないな。総理が決めたことに反対するかのように党が
「50兆円にしろ」なんていったら国民から総すかんを食う。
しかし、44兆円以内ということなら、すべてのマニフェスト
を実現することは無理だな。 ──大下英治著
『小沢一郎の最終戦争』/KKベストセラーズ刊
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3月26日の参議院本会議で、「子ども手当て法案」が成立し
6月からの支給が決まったのです。しかし、党が要望した所得制
限はつかなかったのです。そのため、今まで児童手当を受け取っ
ていなかった年収1000万円の家庭の手取りが増えるという結
果になり、中所得者層を優遇するという民主党の当初の方針とは
異なるかたちとなっています。
26日の参議院での採決に先立ち、自民党の丸川珠代議員は次
の反対意見を述べています。
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何の効果があるかも考えずに、2兆3千億円をばらまけるほど
我が国の財政に余裕はない。一人1万3千円を配ることそのも
のが目的で、効果は不明。 ──丸川珠代自民党参議院議員
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子ども手当については賛否両論があります。支給を受ける層が
歓迎するのは当然のことですが、少子化対策に一定の効果がある
ことは否定できないでしょう。支給対象にならない家庭でもそう
考える人は多いと思います。
少子化対策に担当大臣を置きながらも何もできなかった自民党
よりもマシといえるでしょう。自民党のいいたいことは、丸川議
員の発言の後段部分、要は参議院選を意識したバラマキではない
かといいたいのだと思います。
この点に関して小沢はどう考えているかについて次のエピソー
ドをご紹介しましょう。
幹事長室の高嶋筆頭副幹事長が「自民党や財務省の副大臣たち
が、子ども手当を満額支給すると5兆3千億円、防衛費と一緒で
すよ」と小沢に話したとき、彼は次のようにいったのです。
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そんなもの、子どもが少なくなったら、自衛隊に入る奴は、誰
もいなくなるぞ。子どもと自衛隊とどっちが大事だといってお
け。 ──大下英治著
『小沢一郎の最終戦争』/KKベストセラーズ刊
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しかし、子ども手当は、制度設計に大いに問題があります。こ
の制度の真の狙いは、日本人を増やすために日本人の子どもを対
象に手当を支給して子育て支援するというものであるはずです。
満額支給までに法案の改正を含めた議論が必要です。子どもが外
国に住む日本在住の外国人にまでなぜ手当を支給するのかについ
ては、制度の不備としかいいようがありません。
いずれにせよ、国債発行額を約44兆円以内と決めたために暫
定税率の維持は不可欠だったわけで、この点に関する小沢の判断
は正しかったのです。 ―――[小沢一郎論/59]
≪画像および関連情報≫
●深沢敦教授の指摘/子ども手当法案について
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法案は親について、「日本国内に住所を有するときに支給す
る」とだけ規定。このため、日本への留学生や数年だけ滞在
する外国人研修生でも、母国にいる子どもの人数分だけ手当
を受給できる。これは現行の児童手当と同様の仕組み。厚生
労働省児童手当管理室によると、1972年に制度ができた
児童手当は、当初は日本国籍を有する者に受給者を限定して
いたが、国籍による差別をなくす国際化の流れの中で82年
に撤廃した。児童手当には子どもの住所要件の規定がなく、
子ども手当もこれを踏襲した形。欧米の社会福祉に詳しい立
命館大産業社会学部の深沢敦教授は「そもそも無条件に海外
に居住する外国人の子どもまで手当を支払うのは国際的に異
例」と指摘。民主党が制度の参考にしたフランスでは、外国
人の場合、子が国外に住んでいるケースでは支払わず、例外
的に欧州連合(EU)加盟国など30カ国の人に限って支給
しているという。
──2010年3月10日付、「中日新聞」より
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原口総務相


