ントン前大統領の財政改革です。クリントンが大統領に就任する
前の米国経済の状況は次の通りです。ちなみにクリントン氏が大
統領に就任したのは、1993年1月のことです。
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1991年 ・・・・・ GDP実質成長率がマイナス
失業率 ・・・・・ 7.5%
財政赤字 ・・・・・ 2904億ドル(過去最高)
(1991年10月〜1992年9月)
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クリントン政権は2期行われていますが、その期間は次のよう
になります。
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第1期 1993年 〜 1996年
第2期 1997年 〜 2000年
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クリントン大統領は、1993年2月17日に議会で演説し、
経済戦略を次のように打ち出しています。
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1.支出を消費から投資に向ける
2.家族と勤労をとくに尊重する
3.保守的な見積りの予算の編成
4.政府支出削減と公平税制導入
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まず、クリントン大統領は、雇用を増やすための手を打ってい
ます。限られた政府予算から消費を削減して、投資項目に重点支
出することを表明したのです。
続いて予算方針を打ち出したのですが、それには次の3つの特
徴があったのです。
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1.予算は積極財政、物価の上昇率を上回る3.3%
2.消費項目を抑えて投資項目に予算を重点的に投入
3.政府職員を3万人削減、物価上昇でも支出は不変
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重要なことは、第1期、第2期とも予算は積極財政であるとい
うことです。支出項目別年平均の伸び率で見ると、第1期は歳出
規模で3.3%、第2期でも3.0%の伸びになっています。そ
して、第1期は軍事費を3.6%削って、投資項目にプラスして
いるのです。
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第1期 第2期
歳出規模 3.3% 3.0%
【裁量的経費】
全 体 0.1% 2.5%
国防費 △3.6% 1.2%
その他 公共投資 公共投資
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公共投資としては、第1期、第2期とも地上交通開発費、地域
社会開発、職業訓練、雇用増進費、教育費を大幅に増額している
のです。つまり、景気振興策を財政に組み込んだわけです。日本
は、なぜこういう投資ができないのでしょうか。
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第1期 第2期
地上交通開発費 37億ドル 70億ドル
地域開発その他 28億ドル 115億ドル
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第2期に入ると、財政赤字は大幅に縮小してきましたが、日本
のように緊縮財政を組むことなく、積極財政を続けたのです。そ
のため1998年には黒字となり、財政再建に成功しています。
公共投資は第1期よりも第2期の方が多いことが日本とは大きく
違うところといえます。
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第1期 第2期
歳出規模 5.6% 4.6%
【義務的経費】
社会保障 5.4% 3.7%
メディケア 10.9% 11.9%
その他 △0.1% 7.2%
利払い 4.4% △1.6%
その他 △0.1% 7.2%
利払い 4.4% △1.6%
菊池英博著、『増税が日本を破壊する/「本当は財政危機で
はないこれだけの理由』
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1990年代後半になって、長短ともに金利が低下してきたの
です。そこでクリントン政権は長期国債の書き換えを短期国債で
行い、国債コストの削減を行っています。
このように、クリントン大統領は消費項目を抑えて投資項目に
予算を重点的に投入し、景気振興策をとっているのですが、クリ
ントン政権は、2003年から景気が回復基調にあることを鋭く
見抜いていたため、こういう手を打ったのです。
巨額な財政赤字を解消するには、景気回復の力を借りて、思い
切ったメリハリのある手を打つべきです。日本の場合も小泉政権
の発足した1年後は景気回復基調にあったのです。
しかし、小泉政権は経済がデフレであるにもかかわらず、緊縮
財政をひいて需要を抑え込み、供給サイドを強くすると称して、
金融機関の不良債権処理を強行して企業をつぶしたのです。それ
が税収の大幅減少を招き、赤字国債の発行額を増やすという財政
再建とは逆のことをやったのです。それが改革なくして景気回復
なしの正体です。 ・・・[日本経済32]
≪画像および関連情報≫
・2001年度大統領の予算教書より
財政赤字が減少し始めたのは1993年度からである。これ
は米国の景気が回復し始めた時期であり、その後1995年
にかけて景気が回復し、税収が増加した。この間の財政赤字
減少の約7割は、景気回復によるものであり、税率の変更な
どの構造要因は約3割にすぎない。ついで1995年度から
1998年にかけては、税収が増加し、財政は黒字に転換し
た。この間の税収増加要因の約7割が、税率の引き上げなど
の構造要因である。 ――2001年度大統領の予算教書
