2010年03月01日

●「参議院鳥取一区で見せた小沢選挙」(EJ第2763号)

 営業をやったことのある人なら誰でも感ずることがあります。
それは、この仕事は何年続けてもつねに不安感がつきまとうとい
うことです。普通の仕事であれば、何年も続けてやればそこに何
らかの安定感のようなものが生まれるものですが、営業の仕事は
それがなかなか得られないのです。何年経っても営業は成果に対
する不安感が消えない仕事であるといえます。
 選挙も営業とまったく同じであり、いつもフワフワした感じで
安定感などとても得られない――これが、普通の選挙のイメージ
であると思います。組織頼み、風頼み、空中戦頼りの選挙をやっ
ているから、そうなるのです。
 小沢流の選挙は、田中角栄直伝といわれますが、対人コミュニ
ケーションを重視するもので、具体的には、次の5つになるとい
うのです。
―――――――――――――――――――――――――――――
 1.当選までに、候補者は有権者のもとへ三万回足を運び、辻
   立ち五万回をこなすこと
 2.支援してくれる組織に頼るよりも、まず自分一人の力で状
   況を切り開く
 3.演説は長時間ではなく、一分、三分、五分の短いものにす
   る。場所も人が集まるところでなくていい。たとえ人がい
   ない路地で演説しても、窓の向こうにいる人が聞いてくれ
   ていると信じて話をする
 4.世論調査は何度も繰り返す。つねに最新の数字をもとに、
   選挙運動、演説の中身を見なおす
 5.生のコミュニケーションを大切にする。テレビやインター
   ネットといったメディアよりも、一人でも多く、実際の有
   権者と会う
 6.頑固でもいい。自分の主張を通す。ぶれない。ふらふらし
   ない。強い主張と受けとめてもらうには、同じことを何度
   もいいつづけること
                ――野地秩嘉/小塚かおる著
      『小沢選挙に学ぶ/人を動かす力』/かんき出版刊
―――――――――――――――――――――――――――――
 小沢が重視しているのは「握手」なのです。民主党の若い政治
家は、少しでも長い時間をとって政策を話そうとしますが、小沢
は、演壇に立って長い時間話すよりも、一人ひとりと握手する方
が効果があると考えているのです。
 また、最近の政治家は政治のバラエティ番組にレギュラーのよ
うに出演していわゆる「空中戦」をやっています。テレビであれ
ば、大勢の人の目にとまるから有利だと考えているからです。
 しかし、既に述べたように小沢はそういう政治のバラエティ番
組にはいっさい出演せず、足を運んで多くの人と会い、握手を交
わすことに全力を尽くすのです。「ふれあいに勝るものはない」
と考えているからにほかならないのです。それに長い話をしてい
たら、多くの人に会えないので、話は極力短くして、一人でも
多くの人と握手を交わす方が効果があると説くのです。
 不世出の生命保険セールスパーソンといわれる原一平氏は、一
日15人に会うことを目的に活動していましたが、一人との面会
時間は3分から5分と極端に短かかったのです。それでいて、月
に30件以上の契約を成約していたのです。
 小沢にしても、原一平氏にしても大勢の人と会うということに
重点を置いており、そういう意味では同じことをやっているとい
えます。選挙も営業も多くの人に会うことは同じなのです。
 『小沢選挙に学ぶ/人を動かす力』の著者は、2007年の参
議院選において語り草となっている小沢の行動力を紹介していま
す。引用すると長くなるので、その概要を書くことにします。
 小沢は選挙初日の2007年7月12日、遊説先として参議院
一人区のひとつである鳥取一区を選んだのです。鳥取といえば自
民党の牙城のひとつであり、あの衆議院議員・石破茂氏の選挙区
です。そして、このときの参議院選も石破後援会が中心になって
動いていたのです。普通ならば民主党にとってとうてい勝ち目の
ある選挙区ではないのです。しかし、小沢はその自民党の牙城を
崩そうとしたのです。
 しかし、その7月12日は台風が日本を襲い、とても鳥取まで
行ける天候ではなかったのです。しかも、小沢が行こうとしてい
たのは、例によって川上に当たる鳥取県の山の中にある八頭町役
場前なのです。ここは米子空港に降り立ってから、車で何時間も
かかる場所なのです。そんな辺鄙な場所に台風の日に行ってもと
ても大勢の人が集まるとは思えないでしょう。集まってもせいぜ
い100人前後と予想されていたのです。
 スタッフは小沢代表に思い止まるよう説得したのですが、小沢
は聞き入れず、小型機をチャーターして台風をついて鳥取に飛ん
だのです。八頭町に着くと、何と2000名を超える人が集まっ
ていたのです。会場に着いた小沢は、話をはじめる前に会場に集
まっている一人ひとりと握手をはじめたのです。
 近くにいる何人かと握手を交わすのではない。2000人一人
ひとりと握手するのです。こんなことは前代未聞のことです。そ
のとき会場には石破陣営の人が偵察に来ていたのですが、その様
子を見て「これでは自民党は負ける」とつぶやいたそうです。
 選挙結果はその通りとなり、民主党の川上義博氏が勝利したの
です。川上氏は小泉郵政解散で造反し、自民党を離党して、20
06年に民主党に入っています。
 先に同じく自民党を離党して民主党入りした参議院議員に田村
耕太郎氏がいますが、田村氏も鳥取一区を選挙区としており、今
年が改選組なのです。小沢氏としては、そういう自民党の象徴的
な選挙区を潰すことで、自民党に壊滅的な打撃を与えることに成
功したのです。それは今年も続いているのです。
 自民党の石破茂氏が国会で鳩山首相や小沢幹事長の責任を声高
に攻めるのはこういういきさつがあるからなのです。
                ―――[小沢一郎論/39]


≪画像および関連情報≫
 ●参議院一人区――29選挙区
  ―――――――――――――――――――――――――――
  改選議席が1人のため、小選挙区的要素を持つ。二大政党制
  に近づくと、一人区は第一与党と第一野党の二政党で争われ
  ることが多くなる。大政党にとっては、自党候補が一人区で
  当選することは対立党候補の落選につながる。参議院選挙で
  は地方区選挙における一人区の数が多いことから、一人区の
  勝敗が選挙全体の鍵を握るとされている。1989年参院選
  の社会党のマドンナ旋風や2007年の民主党の民主旋風な
  どが起こると、選挙結果で参議院与野党逆転――ねじれ国会
  になることもある。         ――ウィキペディア
  ―――――――――――――――――――――――――――

川上義博氏と小沢一郎氏.jpg
川上義博氏と小沢一郎氏
posted by 平野 浩 at 04:18| Comment(0) | TrackBack(0) | 小沢一郎論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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