2010年01月14日

●「なぜ、今まで対米従属を続けたのか」(EJ第2732号)

 最近よく聞く言葉に「多極化」というのがあります。「一極集
中」の反対語です。これまで日本がとってきた「対米従属」の外
交は「一極集中」ということになります。
 田中宇氏は、この「多極化」という言葉をよく使います。世界
は多極化しつつある――田中氏の著書には、この言葉が多く登場
します。
 田中宇氏によると、米国はもともと多極主義の国であるという
のです。それは、自国が中心となって戦後の世界体制として結成
した国連の中枢である安保理常任理事国に、ソ連や中国のような
共産主義国家を加えたことにあらわれています。つまり、第2次
世界大戦の直後の段階では、米国はソ連や中国を敵視するつもり
はなかったのです。
 しかし、1950年に状況が一変します。朝鮮戦争が起こった
のです。ここで米国中枢ではそれまでの多極化推進派が後退し、
ソ連や中国を恒久的な敵とみなす冷戦派が台頭したのです。
 実はこれが日本には幸いしたのです。その理由について田中宇
氏は次のように述べています。
―――――――――――――――――――――――――――――
 第2次大戦後、もし冷戦が起こらず、米国が多極主義的な戦略
 を続けていたら、米国にとって東アジアで最も重要な国は共産
 中国となり、中国は軍事拡大や社会主義イデオロギーよりも経
 済発展が重視される傾向が続き、文化大革命も起きず、実際よ
 り30年早く経済発展の軌道に乗っていた可能性がある。米中
 関係が良好であるほど、日本は米国から軽視され、米国からの
 経済援助も日本ではなく中国に向けられていただろう。朝鮮戦
 争によって冷戦がアジアに波及し、米中が敵対する体制が固定
 化されたことは、日本にとってまさに「神風」であった。冷戦
 体制下で、日本は米国から気前のよい経済支援を受け続け、日
 本企業は技術面でも米国から大事なことを学び、日本の高度成
 長が実現した。
  ――田中宇著『日本が「対米従属」を脱する日』/風雲舎刊
―――――――――――――――――――――――――――――
 なぜ、多極主義が必要かというと、欧米や日本のような先進国
は、既に経済的に成熟しているので、今後あまり経済成長が望め
ないのです。したがって、いつまでも欧米中心の世界体制を続け
ることは、世界経済全体の成長を鈍化させてしまうことになるの
で、好ましいことではないのです。
 したがって、欧米中心主義を捨てて、いわゆるBRICsのよ
うな途上国に投資し、経済発展を促進させる必要が出てくるので
す。これが多極主義です。
 田中宇氏によると、これは「資本の論理」に基づいているとい
うのです。産業革命は英国で始まりましたが、英国の資本家たち
は自分たちが開発した技術を積極的に途上国に輸出し、多くの国
々でも産業革命を起こしてもっと稼いだのです。
 もし、そういう資本家たちが愛国主義者だったら産業革命で得
られた技術を国外に出さなかったと思われますが、実際は資本家
は英国の産業革命が一段落したら、英国を捨てて他の国に投資し
ているのです。つまり、欲得というものが愛国心などのイデオロ
ギーを超えている――これが資本の論理というものです。
 しかし、日本は1989年にベルリンの壁が崩壊し、冷戦が終
結した後も対米従属を続けています。最初のうちは、米英では金
融自由化による金融主導の経済発展体制が構築されたので、その
戦略は結果としてよかったのですが、1998年のアジア通貨危
機を契機にその体制が壊れてくると、対米従属主義はマイナス面
が多くなってくるのです。この時点で日本には、次の2つの選択
肢があったのです。
―――――――――――――――――――――――――――――
     1.これまで通り対米従属主義を継続する
     2.中国と協調し、アジア重視に転換する
―――――――――――――――――――――――――――――
 このとき出てきたのが、日本、米国、中国が等距離な正三角形
の関係になるべきであるという主張です。この考え方を主張した
のは、民主党の小沢一郎と自民党の加藤紘一などの政治家です。
 しかし、9・11が起きると、世界が対米従属を強めるなか、
当時の小泉首相は米ブッシュ首相との個人的人間関係から、強い
対米従属の姿勢をとりましたが、その本心は別であったのです。
 それは、2002年の小泉首相による北朝鮮への電撃訪問に見
ることができます。とにもかくにも金正日に拉致を認めさせると
ともに数人の拉致被害者を日本に連れて帰ったのですから、歴代
政権では成し得なかった大変な成果です。小泉首相はこのとき本
気で日朝関係改善を図る気持であったと考えられます。
 少なくとも小泉首相は、上記2つの選択肢のうち、2のアジア
重視を取る気持があったと思われます。これは優れた外交センス
であるといえます。しかし、日本では北朝鮮敵視のプロバガンダ
が強まり、事態は悪化し、中国との関係は自ら靖国神社に参拝す
ることによってすべてを壊してしまったのです。
 しかし、既にブッシュ政権のときから、いつまでも対米従属を
続ける日本に米国はむしろ冷淡になっていったのです。外交ジャ
ーナリストの手嶋龍一氏は、あの小泉政権のときから、「日米の
関係は冷え切っている」と明言していたのです。
 ところがです。2009年8月の選挙で政権交代が起こり、民
主党の鳩山政権が誕生すると、鳩山首相は米国に対しては「対等
な日米関係」を主張し、その分中国に接近してともに東アジア共
同体を推進しようと持ちかけるなど、明らかに対米従属から多極
主義に舵を切っています。
 鳩山政権は、その外交政策や沖縄問題の日米合意の見直しを要
求するなど、米国の怒りを買っているとマスコミにさんざん叩か
れていますが、本当にそうなのでしょうか。よく調べてみると、
そうともいえないことが起こってきているのです。
               ―― ―[小沢一郎論/08]


≪画像および関連情報≫
 ●多極化とは何か/坂本・中村両教授の解説
  ―――――――――――――――――――――――――――
  超大国以外ののいくつもの国が世界に影響の及ぶ争点に関し
  て主導性を発揮し、重要な決定に参加、秩序形成・維持を担
  う傾向と、それに伴う世界秩序再編成の過程。1960年代
  以降、二極システムが崩れる政治変動が始まり、70年代以
  降には米ソの経済能力が相対的に低下し、特に91年のソ連
  解体以降、二極システムは決定的に崩壊した。90年代の世
  界は多極化の様相が強まり、米・欧・日の三極システムなど
  と呼ばれることがあった。反対に2000年前半には、唯一
  の超大国となった米国の単独行動かが顕著になり、米国によ
  る一極支配の様相が強まった。ただし、2000年代後半に
  入ると、BRICsの台頭、米欧間の距離の広がりなどから
  再度、多極化の様相が強まっている。まだ新しい国際システ
  ムは明確になっていない。――坂本義和東京大学名誉教授/
  中村研一北海道大学教授――
  ―――――――――――――――――――――――――――

小泉首相とブッシュ大統領.jpg
小泉首相とブッシュ大統領
posted by 平野 浩 at 04:20| Comment(0) | TrackBack(0) | 小沢一郎論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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