2010年01月13日

●「辺野古案は自民党の沖縄利権」(EJ第2731号)

 沖縄の日米合意──辺野古移転案はどのようにしてできたので
しょうか。昨日のEJでも述べたように、米国側が望んだもので
はないのです。
 キャンプ・シュワブ沖の埋め立て計画は、自民党政権の「沖縄
利権」なのです。日米両政府が普天間基地の返還で合意したのは
橋本政権下の1996年のことです。
 橋本首相(当時)は、SACO(日米特別行動委員会)の最終
合意で辺野古移転案が決まると、新基地受け入れの見返りとして
名護市などの沖縄北部地域に基地建設費とは別に年間100億円
──10年間で1000億円の公共事業を行うことにし、その差
配権を経世会(旧橋本派)が握ったのです。
 橋本元首相が参院選の惨敗で破れると、今度は小渕首相がその
差配権を引き継ぎ、沖縄サミットを行うなど地元と太いパイプを
築き上げたのです。しかし、小渕首相の死で経世会は地元への影
響力を失い、基地移転事業の主導権は清和会(旧森派)が握るこ
とになったのです。
 軍事評論家の田岡俊次氏によると、はじめは「嘉手納統合案」
でまとまりかけたというのです。当初日本は最もお金のかからな
いこの案を米軍に提案したのですが、最初は米軍が難色を示した
のでまとまらなかったのです。
 しかし、2005年2月には今度は米軍が嘉手納統合案を受け
入れてもいいといってきています。しかし、そのときは日本側が
この案を蹴ったのです。なぜ、断ったのでしょうか。
 嘉手納統合案では、大部分は既存の施設が使えるので、別の基
地を作る必要はないのです。しかし、タダ同然でやれる案では、
小泉政権としては日本側の利権配分ができないので反対したので
す。こういう事実は、マスコミは知っていても絶対に書かないし
報道しないのです。それはマスコミが官僚機構に取り込まれてし
まっているからです。したがって、マスコミ報道だけで沖縄問題
を考えると間違った考え方を持ってしまう恐れがあります。
 岡田外相はこういう事実があったことを知り、嘉手納統合案に
飛びついたのです。米軍は一度は自ら嘉手納統合を申し出ている
ので、可能性があるかもしれないと考えるのは当然のことです。
しかし、その米軍もこの利権にかかわっているので──密約があ
るかもしれない──今度は米軍が頑なに岡田外相の提案を拒否し
たのです。田岡俊次氏は次のようにいっています。
―――――――――――――――――――――――――――――
 辺野古での新滑走路の工法についても、メガフロート(海上に
 浮かべる巨大な鉄の”いかだ”)案が出ると、「造船会社しか
 儲からない」と言われ、橋のような構造物という案には「マリ
 コン(海洋での工事を得意とするゼネコン)しかできないから
 地元に金が落ちない」と反対され、結局、沖縄の土建業者も潤
 う埋め立てになった。最初から利権絡みだったのです。
               ――SAPIO/1月27日号
―――――――――――――――――――――――――――――
 そこで、小泉政権は、滑走路1本の当初計画から、より埋め立
て面積の多い滑走路2本の「V字案」に拡張したのです。何のこ
とはない。国土防衛のためでも何でもなく、ただの土木工事の利
権問題に過ぎないのです。
 鳩山首相の故人献金問題や小沢幹事長の疑惑については、これ
でもかこれでもかと書き立てるマスコミは、こういうことについ
ては、すべて事実を掴んでいるにもかかわらず、一切報道しない
のです。いや、できないのです。
 鳩山首相と小沢幹事長が最初から「県外移設」を唱えていたの
は、こういう自民党の公共事業利権を潰して、白紙に戻すことを
狙ったものであり、社民党への配慮などではないのです。
 鳩山首相は、普天間問題については、岡田、北沢両大臣による
年内決着の要請にもかかわらず、のらりくらりと結論を先送りを
やっているように見えます。しかし、これは単なる優柔不断では
なく、十分成算のあることであり、けっして問題の先送りではな
いのです。
 鳩山首相は、沖縄県民に立ち上がって欲しいと考えているので
す。1月24日に投開票が迫っている名護市長選で、もし、辺野
古沖移転に反対する新人で前市教育長の稲嶺進氏が現職の島袋吉
和氏に勝つようなことがあると、沖縄県民の「基地はいらない」
の声ははっきりと前面に出てきます。
 そうすると、普天間問題は沖縄の問題の枠を超えて、日本の問
題になり、本土を巻き込んだ大議論に発展することになります。
そうなると、マスコミも官僚傘下の呪縛から解き放たれ、本当の
ことを書かなければならなくなる──鳩山首相は、そうなるのを
待っているのではないでしょうか。
 さて、問題は普天間の代替地はどこになるのでしょうか。最終
的には米海兵隊はグアムに引き上げると思われるが、日本がこの
まま具体的に代替地を示さないわけにはいかないのです。そうし
ないと、米国は本気で日本に対して不信感を持ち、日米関係にひ
ずみができる恐れがあるからです。
 実はここにひとつの代替地の候補があります。それは、宮崎県
の航空自衛隊新田原(にゅうたばる)基地です。ここには航空自
衛隊の第5航空団や飛行教導隊──空中戦教育部隊の本拠が置か
れています。面積は普天間の2倍近い9135平方キロメートル
に及ぶのです。鳩山首相は、選挙前からこの新田原基地について
九州出身議員と協議を重ねており、急に思いついた候補地ではな
いのです。辺野古案では埋め立て工事だけで5年はかかるが、新
田原基地であれば、5月に決定されれば年内にも移転は可能にな
るのです。
 もちろん簡単な話ではないのです。宮崎県民の反対もあるだろ
うし、利権を奪われるかたちになる自民党は死に物狂いで反対し
てくるはずです。しかし、宮崎県の県民所得は沖縄に次ぐワース
ト2であり、宮崎県復興のことを考えると、少なくとも辺野古よ
りもハードルは低いと考えられます。――[小沢一郎論/07]


≪画像および関連情報≫
 ●鳩山首相側近議員の話から・・・
  ――――――――――――――――――――――――――─
  まだ、プランの段階で、防衛省や地元自治体への根回しはこ
  れからだが、3000億円以上かかる辺野古案に比べると新
  田原は既存の施設が使えるし、現在進められている拡張工事
  を修正すれば、移設コストはかなり安い。もともと米軍と自
  衛隊の共同訓練を前提に整備してきた基地なので、米軍の立
  場から見てもハードルは高くない。
               ――SAPIO/1月27日号
  ――――――――――――――――――――――――――─

田岡俊次氏.jpg
田岡俊次氏
posted by 平野 浩 at 04:19| Comment(0) | TrackBack(0) | 小沢一郎論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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