2010年01月07日

●「米国は本当に怒っているのか」(第2728号)

 こちらから戦争を仕掛けるのではなく、他国から同盟国が侵略
された場合、米軍がどのように戦うのかについて整理しておくこ
とにします。
 もっとも昨日のEJでも述べたように、米国は世界中に諜報網
を張りめぐらせているので、ある日突然攻撃される可能性はほと
んどないといえます。とくに9・11以降は米国の諜報戦はきわ
めて強化されているのです。
 仮に日本が他国から地上軍で侵略されたとします。そのときは
当然のことですが、自衛隊が応戦します。平和憲法でも他国から
侵略された場合は自衛隊が実戦対応できるのです。そのために、
北海道や九州に陸上自衛隊が常駐しているのです。このさい、た
とえ米海兵隊が沖縄にいたとしても、沖縄を直接攻められない限
り、海兵隊が応戦することはあり得ないことです。
 有事になると、米軍は空母を中心とする機動部隊が出動すると
ともに海上自衛隊の艦艇も出動します。日本や韓国の米空軍基地
から米戦闘機が飛び立ち、航空自衛隊と連携を取りながら、陸上
自衛隊を援護します。この場合の日米両軍の連携力は、長年にわ
たる訓練の結果、そのパワーは世界一といわれるほどのレベルに
達しているといわれています。
 そうしているうちに米軍は、グアムにいる海兵隊を次々と空輸
し、敵に占領されている地域に反攻的な急襲を仕掛けるのです。
ここからが海兵隊の出番になります。グアムから日本まで飛ぶに
は途中給油が必要になりますが、これは空中給油をするので、何
も問題はないのです。
 したがって、米海兵隊はわざわざ沖縄に駐留する必要などない
のです。それを日本は莫大な駐留費を負担して米軍を沖縄に引き
留めているのです。いつから日本人はそんなに臆病な国民になっ
てしまったのでしょうか。海兵隊としても、日本にお金を出して
もらえば、米国にいるよりも安上がりなので、沖縄にいるだけの
ことなのです。
 このように、米軍の本心は2014年までに普天間基地の海兵
隊約2万人のほとんど全軍をグアムへ移転することなのです。そ
の方が戦略的にも合理性があるからです。しかし、日本は海兵隊
の一部を何とか日本に残したいと考えているのです。
 ここで、「日本」というのは、もちろん建て前としては日本政
府のことなのですが、もっと正確にいうと、日本の官僚機構――
具体的には外務省のことです。すなわち、外務省としては、「対
米従属」を続ける方が彼らにとって都合がよかったのです。
 そこで外務省が中心になって作りだしたのが、SACO――沖
縄に関する特別行動委員会なのです。SACOとは、米軍駐留に
伴う沖縄県民の負担――騒音、墜落事故、訓練場からの実弾飛来
など減らすために、日本政府が資金を出して代替施設などを建設
し、米軍施設の移転を行うことを目的とするものです。1995
年のことです。
 このSACO事業によって、日本政府は2008年までの12
年間に3000億円の予算を思いやり予算とは別に支出している
のです。その結果、辺野古沿岸を埋め立て、最新鋭の設備と離着
陸に制限のない新たな海上飛行場を建設することによって普天間
基地を返還することで2006年に日米が合意を見たのです。
 しかし、米軍は日米合意にもかかわらず、その後も着々と海兵
隊のグアム移転を進めており、その後沖縄に実戦部隊が残る余地
はないというのです。
 これは一体どうなっているのでしょうか。新聞やテレビでは、
民主党政権が日米合意を守らないので、米国は本気で怒っている
と報道しています。これについて、田中宇氏は、次のように述べ
ているのです。
―――――――――――――――――――――――――――――
 私が見るところ、日本政府が米軍を買収してまで駐留し続けて
 ほしいと思ったのは日本の防衛という戦略的な理由からではな
 い(急襲部隊である海兵隊は日本の防衛に役立っていない)。
 米国から意地悪されるのが怖かったからでもない(フィリピン
 の例を見よ)。日本政府が米軍を買収していた理由は、実は日
 米関係に関わる話ですらなくて、日本国内の政治関係に基づく
 話である。日本の官僚機構が、日本を支配するための戦略とし
 て「日本は対米従属を続けねばならない」と人々に思わせ、そ
 のための象徴として、日本国内(沖縄)に米軍基地が必要だっ
 たのである。
  ――田中宇著『日本が「対米従属」を脱する日』/風雲舎刊
―――――――――――――――――――――――――――――
 本当に米国は怒っているのでしょうか。日本の官僚はよくこの
手を使います。いわゆる「ガイアツ」です。昨年の12月21日
のこと。記録的豪雪で休みとなった米国務省に、藤崎一郎駐米大
使が出向き、クリントン長官と15分ほど話して出てきたという
あの話です。会談にはキャンベル国務次官補――東アジア・太平
洋担当らが同席したということです。
 藤崎大使の話を総合して朝日新聞と読売新聞は、今朝、クリン
トン長官から来て欲しいという連絡があったので(朝日)、出向
いて15分ほど話してきたというのです。しかし、国務長官が大
使を呼ぶということはめったにないことで、重く受け止めるべき
(読売)と書いているのですが、真相はきわめて不透明です。
 要するにコペンハーゲンで鳩山首相はたまたまクリントン長官
の隣の席であったので、普天間の問題について話し、日本政府の
方針を理解していただいたとコメントしているが、米国としては
そんなこと「了解したわけではない」といいたいわけです。
 ところが、国務省のクローリー次官補は「大使は(クリントン
長官に)呼ばれたのではなく、彼の方からやってきたのだ」と日
本の報道を否定しているのです。どうなっているのでしょうか。
明らかにこれは藤崎大使の芝居であり、「米国は怒っている」こ
とを演出したかったのです。官僚はよくこうして政府にガイアツ
をかけるのです。        ―――[小沢一郎論/04]


≪画像および関連情報≫
 ●アメリカは本当に怒っているのか
  ―――――――――――――――――――――――――――
  東京(12月11日) − 普天間基地の移設をめぐり日米
  関係に大きな亀裂が入り始めているらしい。新聞によって多
  少の温度差はあるものの、概ね、前政権下で日米両国が辺野
  古沖への移設で合意したはずの問題を、県外移設や日米合意
  の見直しを公約して民主党が政権の座に就いたため、新内閣
  は米国との約束と選挙公約との板挟みになり身動きがとれな
  くなっている間に、米国は日本を見放し始めているという話
  のようだ。
  http://www.videonews.com/news-commentary/0001_3/001306.php
  ―――――――――――――――――――――――――――

藤崎一郎大使.jpg
藤崎一郎大使
posted by 平野 浩 at 04:18| Comment(0) | TrackBack(0) | 小沢一郎論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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