2006年02月24日

竹中・中川と谷垣・与謝野の対決(EJ1782号)

 第三次小泉改造内閣になって、経済財政諮問会議の主導権はか
たちの上では、与謝野経済財政相率いる財務省主導に移ったかの
ように見えます。少なくとも財務省はそう考えたわけです。
 しかし、竹中総務相は、すでに自らが駆使してきた経済財政諮
問会議を早くも捨て、政策決定の新しいシステムを構築し、動か
していたのです。それは、昨年の11月に行われた政府系金融機
関の統廃合問題――国際協力銀行(JBIC)を残すか、解体す
るかの問題で明らかになっているのです。
 11月22日の経済財政諮問会議で、組織の温存を図る財務省
勢力を代表する谷垣財務相と与謝野経財相、1つに統合すべきで
あるとする竹中総務相が正面から対立したのです。しかし、小泉
首相が谷垣、与謝野両大臣を「官僚の言いなりになるな!」と激
しく叱責する一幕があったのです。
 同じ日の自民党金融改革合同部会は、出席議員の大半がJBI
C解体反対の大合唱だったのです。財務省のスタッフが議員を訪
ねて懸命に説得したからです。しかし、合同部会は28日に政策
金融は1つの機関で実施することを決めています。
 29日には諮問会議が開かれて一機関統合案を受け入れたもの
の、細部で意見がまとまらず、同じ日の自民党金融改革合同部会
で正式に決まったのです。明らかに政策決定権が諮問会議から自
民党に移行しているのです。竹中と与謝野の役者の違いを見る思
いがします。竹中は橋本、小渕、森、小泉という4人の宰相に密
着し、そのブレーンとして働くことによって、その間に驚くべき
政治力を身につけてしまったのです。
 ジャーナリスト桜井慶二氏は、月刊『現代』の内幕レポートで
次のように書いています。
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
 政策決定の重力構造が劇的に変わった。竹中平蔵総務相と中川
 秀直自民党政調会長の2人が、小泉首相の絶対的な権力を背景
 に、党の機関を拠点として政策決定の「実権」を掌握しつつあ
 るのだ。その裏側では、逆にこれまで改革の推進役を担った政
 府の経済財政諮問会議が急速に空洞化しつつある。
 ――月刊『現代』2月号/「新聞が書かない巨大与党の危険な
     現実/加速する『小泉・竹中革命』」より。講談社刊
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
 なぜ、自民党内の政策決定の現状について述べたかというと、
それが今後の日本経済に大きな影響を及ぼすからです。ところで
ここにきて、中川政調会長の発言がにわかに重みを増してきてい
ることに気がつかれた人も多いと思います。それは竹中総務相と
息の合った連携を見せているからです。
 諮問会議を捨てた竹中総務相の政調会長との連携は徹底してい
るのです。自分の秘書であった真柄昭宏氏をわざわざ自民党に転
職させ、政調会長の特別秘書に据えています。
 また、自民党金融改革合同部会の事務局に自分に近い官僚を送
り込んでいます。事務局を押さえるというのが竹中の基本的な戦
略なのです。さすがの財務省も手を焼いています。
 現在、竹中総務相の補佐官は高橋洋一という比較的著名な学者
――早稲田大学で講義――なのです。かつてEJで不良債権問題
を取り上げたとき、高橋氏の論文をいくつも読みましたが、なか
なか内容は優れていて、説得力があります。
 竹中総務相は、この高橋洋一補佐官――正確には総務省大臣官
房参事官を使って、中川政調会長に金融政策をレクチャーさせて
いるのです。中川政調会長の発言が急に重みを増したのはこの影
響が大きいと思うのです。
 このように書いていくと、竹中平蔵という人は大変な政治家で
あることがわかると思います。彼はむしろ学者よりも政治家に向
いているのです。学者としては、発言していることが一貫性を欠
いている面があり、そのときどきの情勢に合わせて発言を微妙に
変化させているところがあります。
 そのせいか、小泉構造改革の旗振り役をし、銀行の不良債権処
理をやっていたときの竹中氏と最近の竹中氏とでは、その発言に
おいて、かなり温度差があると感じないでしょうか。
 最近の竹中氏は中川政調会長と一体になって、デフレ克服、増
税反対の主張をして、谷垣財務相を代表とする増税推進派と対立
しています。桜井慶二氏は、そのことについて次のように解説し
ています。
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
 なぜ、竹中・中川ラインは谷垣の増税発言に反発するのか。中
 川は野球の打順になぞらえて、一番バッターはデフレ克服、二
 番が国の資産売却、三番が特別会計や特定財源、公務員など制
 度改革、四番が歳出削減、五番がようやく増税という。
 ――月刊『現代』2月号/「新聞が書かない巨大与党の危険な
     現実/加速する『小泉・竹中革命』」より。講談社刊
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
 現在小泉政権が推し進める「小さな政府」という方針は、政府
すなわち「官僚機構のスリム化」なのです。こんなものを推進さ
れたのでは官僚としてはたまらないので、官僚の総本山といわれ
る財務省との戦争がはじまっているのです。このこと自体は、国
民にとっては歓迎すべきことです。
 竹中・中川ラインは、デフレ克服を一番の目標に掲げています
が、その実現手段として次の政策を取ろうとしています。
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
      名目成長率を目標に掲げる金融政策
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 この実現のために中川政調会長は、党金融調査会に山本幸三衆
議院議員をヘッドにする金融政策小委員会を発足させています。
最近日銀の福井総裁は「量的緩和解除」に向けての発言を繰り返
しています。これは日本経済にとって大きな問題なのです。山本
委員会はそうした日銀の動きをチェックする狙いのある対応と考
えられます。            ・・・[日本経済24]


≪画像および関連情報≫
 ・福井日銀総裁の発言/2006.2.9
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   福井日銀総裁は9日、金融政策決定会合終了後の記者会見
  で、「量的緩和の枠組み修正後、必ずしもゼロ金利でなくて
  も、かなり緩和的な環境で持続的な景気回復のパスをより固
  めていく時間は、ある程度の距離がある」と述べた。
   そのうえで、総裁は「物価はプラス基調を強めていくと思
  うが、日本の物価固有の粘着性、そして経済環境全体から見
  て物価が上がりにくい環境が当面続く可能性が高い」との見
  通しを示し、「展望リポートで示した通り金利のレベルを修
  復していくプロセスは、なお、余裕を持って進められる可能
  性が強い」と語った。     [東京 9日 ロイター]
  ―――――――――――――――――――――――――――

1782号.jpg


posted by 平野 浩 at 08:43| Comment(0) | TrackBack(0) | 日本は本当に破綻危機なのか | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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