2009年12月28日

●「日本の垂直統合モデルの2つのタイプ」(EJ第2723号)

 仮にケータイの統一プラットフォームができたとします。その
プラットフォームが将来にわたってどのようなデバイスでも対応
できる適応力のある環境であれば、メーカーは自分たちの作りた
いケータイを低コストで開発できることになります。
 しかし、これは専門家にいわせると、夢の世界なのです。なぜ
なら、メーカーは競合上、他のメーカーの製品と差別化を図る必
要があるからです。この差別化とプラットフォームはどうしても
矛盾する面ができてしまうのです。
 本当にメーカーが端末の差別化をしようと思ったら、デザイン
などのレベルだけでは対応できず、OSレベルでの改良も必ず必
要になってきます。
 ひとつ実例を上げて説明することにします。ウインドウズ・モ
バイルといえば、端末メーカーにとって、少ない開発者で製品化
できる唯一のプラットフォームとして人気があります。
 シャープがイー・モバイル向けの端末「EM・ONE」を開発
したときの話です。その当時、ウインドウズ・モバイルは、ワイ
ドVGA表示には非対応になっていたのです。
 そこでシャープとしてはマイクロソフト社に対し、VGA対応
を要望したのですが、米国マイクロソフト社がなかなかいうこと
を聞いてくれなかったのです。マイクロソフト社としては、全世
界に向けたプラットフォームを日本個別に改良するというのは効
率的ではないとして要求には「ノー」をつきつけたのです。
 結局は米国マイクロソフト社としては、マイクロソフト日本法
人、シャープ、イー・モバイルの3社の合同の説得に屈し、VG
A対応をしたのですが、それにはお互いに多くの手間とコストが
かかったのです。
 その点アップル社のアイフォーンは、米国向けのモデルであっ
ても、英語以外の言語にもしっかりと対応していたのです。した
がって、米国向けの初代アイフォーンであっても、日本語のサイ
トを見てもきれいに閲覧できたのです。
 本体に日本語フォントと日本語入力アプリケーションが内蔵さ
れていたので、それが可能になったのです。もっとも、初代アイ
フォーンでは日本語入力アプリケーションに目につかないように
制限がかけられていたのですが、初期の段階からきちんと世界対
応を考えたうえで、手が打たれていたのです。
 それというのもアイフォーンの場合、MacOSはアイフォー
ンしか搭載されないという大前提があるからこそ、そういう全世
界対応ができたのです。アップル社のOSは統一機構なので、機
種差分は気にすることはないからです。これに対してウインドウ
ズ・モバイルは、それを採用するケータイ端末も多く、幅広いた
め、機種差分の問題はマイクロソフト社の大きな課題となってい
るのです。
 日本国内の携帯電話業界について考えてみます。キャリアと端
末メーカーは次のようになっています。
―――――――――――――――――――――――――――――
 ≪キャリア≫        ≪端末メーカー≫
 1.NTTドコモ      1.シャープ
 2.au          2.パナソニック
 3.ソフトバンクモバイル  3.NEC
 4.イー・モバイル     4.富士通
               5.東芝
               6.カシオ計算機
               7.日立製作所
               8.京セラ
               9.ソニー・エリクソン
―――――――――――――――――――――――――――――
 日本ではキャリアの力が圧倒的に強く、数が多くて競争環境に
ある端末メーカーを下に置くピラミッド型の「垂直統合モデル」
になっているのです。垂直統合モデルには、次の2つのタイプが
あります。
―――――――――――――――――――――――――――――
 ≪垂直統合モデル≫
  1.キャリア主導/メーカー指定 ・・・ SIMロック
  2.メーカー主導/現地キャリア ・・・ SIMロック
―――――――――――――――――――――――――――――
 日本の場合は、上記1のタイプです。キャリアがメーカーを指
定して端末を作らせるモデルであり、このケースはほとんど「S
IMカード」が外せないようにロックされています。
 SIMカードは、GSMやW−CDMAなどの方式の携帯電話
で使われている電話番号を特定するための固有のID番号が記録
されたカードのことです。SIMとは次の省略語です。
―――――――――――――――――――――――――――――
     SIM/Subscriber Identity Module Card
―――――――――――――――――――――――――――――
 SIMカードがロックされていると、キャリアを変更するたび
に現在持っている端末を捨てて、新しい端末を購入しなければな
らないのです。これはきわめて不合理な話ですが、キャリアを変
更しにくくなるので、キャリアにとって有利になります。
 上記2の垂直統合モデルは、具体的にいうと、アップル社のア
イフォーンのモデルです。アイフォーンは完全にメーカーである
アップル社主導であり、アップル社は現地キャリアであるソフト
バンク・モバイルのキャリアサービスを使っています。
 アップル社のメーカー主導は徹底していて、ソフトバンク・モ
バイルは、アイフォーンに自社マークすら付けることはできない
厳しさです。しかも、このケースでもSIMカードはしっかりと
ロックされているのです。
 日本は総務省の指導により、垂直統合モデルをもうひとつのモ
デルである「水平分離モデル」に移行させる計画を立てていたの
ですが、アイフォーンが登場したことで、ペンディングになって
しまっています。―─[クラウド・コンピューティング/51]


≪画像および関連情報≫
 ●GSM方式の携帯電話とは何か
  ―――――――――――――――――――――――――――
  日本と韓国を除く全世界で使用されている。2008年現在
  全ての携帯電話方式の中で世界で最も使われている。世界の
  携帯電話端末市場の82%はGSM方式であって、全世界の
  212ヵ国で約20億人が利用している。GSM方式のSI
  Mロックされていない端末を一台持っておくと、世界のほと
  んどの国で、現地の事業者の発行するSIMを格安の料金で
  買い求めて、現地の携帯電話として現地の電話料金で携帯電
  話を使用できる。多くの国では空港に携帯電話会社のサービ
  ス窓口があり、プリペイドSIMカードを入手しすぐに使用
  を開始できる。           ――ウィキペディア
  ―――――――――――――――――――――――――――

EM・ONE.jpg
EM・ONE
posted by 平野 浩 at 04:22| Comment(0) | TrackBack(0) | クラウド・コンピューティング | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス: [必須入力]

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]


この記事へのトラックバック
×

この広告は90日以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。