足の状態を作り出してきたかが明確になったと思います。やはり
小泉政権は供給サイドの改革に力を入れてきたのです。そのため
景気は2002年から回復していたにもかかわらず、それを十分
に生かすことに失敗しているといえます。
ここで、小泉政権発足前の2000年度と小泉政権4年目にあ
たる2004年度を比較して、小泉構造改革の成果を検証してみ
ることにします。
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2000年度 2004年度 増減
国民所得 372兆円 361兆円 ▲11兆円
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雇用者報酬 271兆円 255兆円 ▲16兆円
民間法人企業所得 44兆円 50兆円 6兆円
個人企業所得 19兆円 18兆円 ▲ 1兆円
――山家悠紀夫氏『世界』3月号、山家悠紀夫氏論文
「『実感なき景気回復』を読み解く」より。(岩波書店刊)
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まず、国民所得について見ると、小泉政権の4年間に11兆円
減少しています。問題は、そのツケをすべて家計部門――雇用者
と個人企業に押し付けたことです。
雇用者報酬を見ると、この4年間に16兆円も減少しているの
です。しかし、雇用者報酬の減少に関しては、すでに1998年
からはじまっており、構造改革だけが原因ではないという反論が
ありますが、けっしてそうとはいえないのです。
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景気悪化の年 ・・・ 2001年度 3兆円の減少
景気回復1年目 ・・・ 2002年度 7兆円の減少
景気回復2年目 ・・・ 2003年度 5兆円の減少
景気回復3年目 ・・・ 2004年度 1兆円の減少
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1998年度から2000年度までの3年間の雇用報酬の減少
は3兆円に過ぎないのですが、小泉政権になってからは、上に示
すようにそれが加速されています。2002年には景気は回復し
ていたにもかかわらず、構造改革はそれを生かすどころか、潰し
てしまっています。
それでは、なぜ、雇用者報酬が減少したのでしょうか。それに
は、次の3つの理由があります。
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1.雇用者数自体が減少したこと
2.正社員が非正社員化したこと
3.正社員の給与が減少したこと
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第1の理由は「雇用者数自体が減少したこと」です。
金融機関の不良債権処理を加速したことにより、資金の貸し剥
がしが起こり、多くの企業が破綻し、企業のリストラが加速した
のです。その結果、雇用者数はこの4年間で実に76万人も減っ
ているのです。
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2000年度 2004年度 増減
雇用者数 4999万人 4923万人 ▲ 76万人
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うち正社員 3640万人 3333万人 ▲307万人
うち非正社員 1359万人 1590万人 231万人
正社員平均年収 461万円 439万円 22万円
山家悠紀夫氏論文より
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第2の理由は「正社員が非正社員化したこと」です。
構造改革による規制緩和政策が推し進められ、労働基準法、労
働者派遣法が改正されたことにより、企業の正社員が賃金の安い
非正社員――パート、アルバイト、派遣者などに置き換えられた
のです。そうしないと、企業も競争には勝てない時代になってし
まったのです。
第3の理由は「正社員の給与が減少したこと」です。
その結果として、正社員自体の給与が、4年間で22万円も下
がっているのです。正社員の給与の減少は1998年からはじま
っていますが、2000年までの3年間では6万円程度であった
のに、小泉政権になってからこれが加速され、実に22万円の減
少に達しているのです。
このような構造改革によって、企業の立場は非常に強くなり、
働く者の立場は相対的に弱くなったのです。その結果、法人企業
――とくに大企業の所得は飛躍的に増大したのです。
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2000年度 2004年度 増減
法人企業経常収益 36兆円 45兆円 9兆円
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うち大企業 25兆円 33兆円 8兆円
うち中小企業 11兆円 12兆円 1兆円
山家悠紀夫氏論文より
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上記の法人企業統計の経常利益で見ると、4年間で企業利益は
9兆円増加していますが、そのうち8兆円は大企業で占めている
のです。なお、2004年度の経常利益45兆円は、バブル最盛
期である1985年の39兆円を大幅に上回っており、史上最高
を記録しているのです。
この数値を見れば、今回の景気回復が家計部門――雇用者と個
人企業にとって、何ら実感のないことは当然のことといえます。
企業の現在の繁栄が家計部門の犠牲によってもたらされているの
に、小泉政権はその家計部門に照準を絞って大増税の追い討ちを
かけようとしているのです。 ・・・[日本経済22]
≪画像および関連情報≫
・国会のやりとりから/2005年3月10日
●大門実紀史君 日本共産党の大門実紀史でございます。こ
の間竹中大臣は、現状の判断として、要するに所得が下げ
止まり横ばいになっていると、これから上向くと、だから
定率減税の縮小、廃止をしても家計や景気は持ちこたえる
というふうにおっしゃってまいりました。ただしかし、こ
の所得は下げ止まってこれから上向くというような話は、
ちょうど去年の今ごろもされていたんではないですか。
●国務大臣(竹中平蔵君) 景気回復の過程で企業部門にま
ず、キャッシュフローが増えて、それが家計部門に至って
いかなければいけない、そのプロセスが従来に比べて非常
に遅いということは、私たちも大変注意深く見ているとこ
ろでございます。ここは、いつどのように向かっていくか
かということはこれからも注意深く見てまいりますが、直
近の雇用者報酬につきましてそういう動きが出てきており
ますので、何とかそういったことを伸ばしていきたいと思
っております。
