2009年12月11日

●「6500万人のIDを持つアップル」(EJ第2713号)

 アイフォーンのアプリケーションを開発するキット「SDKプ
ログラム」――その開発に使われる言語は「オブジェクティブ―
C」というやや特殊な言語です。開発者はこの言語をマスターす
る必要があります。
 開発したアプリケーションは、アップル社の審査を受けてアッ
プストアに掲載されることになりますが、その手続きがかなり面
倒で3週間ほどかかるということです。しかし、NTTドコモや
KDDIの公式サイトのビジネスに比べると、問題にならないほ
ど営業がラクであると開発業者はいっています。
 公式サイトでビジネスを行うには、まず携帯電話事業者(キャ
リア)へ企画書・ビジネス提案書を提出したうえで、その事業内
容の精査を受ける必要があるのです。それらの審査にパスしない
と、公式サイトにコンテンツを載せられないのです。したがって
そこで提供されるコンテンツが無料ということはほとんどないと
いっていいでしょう。
 それに比べると、アップストアの場合は、企画・提案などの面
倒なことは一切必要なく、利用料の99ドルさえ払えば企業でも
個人でも参加できるのです。しかし、「オブジェクティブ―C」
という特殊な言語をマスターしなければならないことと、複数の
書類を用意するなどの、やや複雑な手続きという2つのことが壁
になり、逆に質の良いコンテンツが集まる傾向があります。
 既出の西田宗千佳氏は、スマートフォンのアプリケーションに
ついて、次のように述べています。
―――――――――――――――――――――――――――――
 ソフトウエアには色々な形態がある。それなりに体裁の整った
 ゲームやアプリケーションのように「お金を払うのが当然」と
 いう体をなしたものもあれば、ちょっとした操作を補助するユ
 ーティリティ・ソフトや、単に人を笑わせるだけの、一発芸的
 なジョークソフトなど、お金をとるほどの規模はないが、みん
 なで使って、楽しんでほしい、というようなものもある。イン
 ターネットの活力はこういった「雑多なクリエイティビティ」
 を支えるインフラとなっている、という点にある。携帯電話の
 公式サイト型ビジネスモデルは「企業のつながり」でできあが
 るシステムであるだけに、こういった部分を取り込むことが難
 しいのだ。だがアップストアのシステムなら、それも可能であ
 る。だから、ソフトがどんどん増えてゆき、活気ある市場がで
 きあがる。               ――西田宗千佳著
           『クラウド・コンピューティング』より
―――――――――――――――――――――――――――――
 アップストアで販売しているアプリケーションの中に、西田氏
がいう「単に人を笑わせるだけの一発芸的なジョークソフト」が
たくさんあります。そのひとつに「印籠」というアプリがありま
す。価格は115円。アップストアで販売されています。これは
おそらく人を笑わせ、人間関係の緊張を解くという目的で使われ
るアプリでしょう。このアプリケーションを起動すると、カウン
トダウンが始まるので、「0」のタイミングで次のセリフをいう
と、その声がマイクに入ってプログラムが起動し、荘厳な音楽と
ともに印籠が表示されるのです。
―――――――――――――――――――――――――――――
         この紋所が目に入らぬか
―――――――――――――――――――――――――――――
 こういうアプリケーションは、アップストアのようなシステム
でないと、出てこないでしょう。同じような目的で使われるアプ
リケーションにアイフォーンの全画面に赤色と黄色が交互に表示
されるだけのものがあります。色の切り換えはアイフォーンを回
転させて行うのです。何かで問題があるとき、イエローカードと
レッドカードを突き付けるとき使います。こういうアプリがある
というところにアップストアの強さがあります。ちなみにこのア
プリの価格は無料です。
 なお、アイチューンズにはウインドウズ版が用意されています
が、アイフォーンのSDKはMacOS−X対応だけしかなく、
ウインドウズ版は用意されていないのです。したがって、このS
DKを使ってアイフォーン用のアプリを開発するには、iMac
を導入する必要があります。これもアップル社の仕掛ける「トロ
イの木馬」になる可能性があります。アップル社はなかなかよく
考えて戦略を練っています。
 このアップストアのビジネスモデルをグーグル社が黙って見逃
すはずはないのです。グーグル社は「アンドロイド」という携帯
電話用OSを無料で提供し、その開発キットであるSDKプログ
ラムを公開しています。
 そしてアップストアに当たるものとして「アンドロイド・マー
ケット」を作り、アプリケーションの開発を促しています。しか
し、アップル社に比べこの面では大きく立ち遅れています。
 今のところ、NTTドコモが早くもアンドロイド・ケータイを
投入したことは既に述べましたが、台湾のHTCの製品です。そ
れにNTTドコモという企業は世界のさまざまなプラットフォー
ムをいずれも積極的に取り入れ、幅広い製品を用意しようとして
いるのですが、これで行くというものが決まっていないのです。
 アンドロイド陣営がもたもたしている間にアップル社において
は、アップル社のオンラインショップに入るためのアップルID
のアカウント数が6500万を超えているのです。この数字は、
2008年9月時点のものであり、現在ではもっと増えているは
ずです。しかも、このIDはクレジットカードの番号をひも付け
られているのです。つまり、アップル社はIDとして6500万
人の決済機能を持っていることになります。
 これに対して、アンドロイド陣営はまだまだこれからという感
じがします。既に勝負ありと考えるのは私だけでしょうか。この
ように、アンドロイドはまだ完全に立ち上がっていないのですが
グーグル社は、33億人という膨大な広告市場に手を伸ばしつつ
あるのです。  ――[クラウド・コンピューティング/41]


≪画像および関連情報≫
 ●「オブジェクティブ―C」とは何か
  ―――――――――――――――――――――――――――
  オブジェクティブ―CはCを拡張してオブジェクト指向を可
  能にしたというよりは、Cで書かれたオブジェクト指向シス
  テムを制御しやすいようにマクロ的な拡張を施した言語であ
  る。従ってベターCに進んだC++と異なり、C&オブジェ
  クトシステムという考え方であり、ある意味2つの言語が混
  在した状態にある。プログラマは問題領域に合わせて双方を
  使い分けることができるため、お互いの利点を活かしやすい
  のが特徴である。          ――ウィキペディア
  ―――――――――――――――――――――――――――

アプリ/印籠.jpg
アプリ/印籠 
posted by 平野 浩 at 04:15| Comment(0) | TrackBack(0) | クラウド・コンピューティング | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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