2001年10月05日

不良債権の間接償却と直接償却の違い(EJ716号)

 不良債権の最終処理について昨日のEJで触れましたが、今朝
はこの説明からはじめます。
 X銀行がY商事に対して5000万円貸し付けます。この場合
X銀行のバランスシートには、貸金5000万円が記載されるこ
とになります。もちろん、この融資には担保をとっていますが、
その担保の価値は、当時5000万円以上の価値があったことは
確かです。
 ところが、担保にとった土地の価値が下がり、現在はその担保
価値は半分以下の2000万円になってしまったとしましょう。
しかし、Y商事のビジネスは順調で、銀行に対する元利払いを続
けているとします。この場合、何も問題は発生しないのです。Y
商事への貸金は不良債権ではないからです。
 しかし、Y商事は経営不振に陥り、X銀行に対して利息しか支
払えないようになり、元金の返済が滞るようになったとします。
この場合、問題なのは、銀行がY商事への貸金を不良債権として
扱うかどうかです。
 銀行によって判断は違ってきますが、Y商事のような債権はお
そらく「要注意先」に分類されるはずです。元本は滞っています
が、利息は支払われているし、価値は相当減ったとはいえ担保も
あるからです。
 しかし、X銀行の期待も空しく、Y商事は、利息の支払いも滞
るようになったとします。ここにいたってX銀行は、債権の分類
を1ランク下げて「破綻懸念先」とし、担保価値の減少分300
0万円分の引当金を積立てます。これが間接償却といわれるもの
です。しかし、X銀行のバランスシート上には、不良債権として
残っているのです。
 しかし、X銀行がY商事の担保物件を売却し、いったん現金に
してしまうと、X銀行のバランスシートからY商事の債権は消滅
することになります。これが直接償却であり、不良債権のオフバ
ランス化というのです。
 このところ間接償却はだめで直接償却でなければならないとい
うことがよくいわれるのですが、間接償却でもそれが時価で引き
当てられていれば立派な不良債権の償却であって、何も問題は起
こらないわけです。
 しかし、日本の銀行で「直接償却」といっているものの中には
「部分直接償却」というものが含まれていることを木村剛氏は明
らかにしています。「部分直接償却」というのは実は間接償却の
ことなのです。引当済みの実質破綻先の債権であっても、会計上
は担保を処分しない限り厳密な意味での「直接償却」にはならな
いのです。つまり、オフバランス化されておらず、会計上残って
しまっているのです。
 しかし、不良債権問題が社会問題化し、ディスクロージャーが
拡充されて数字を公表することになったときに金額が残っている
のはみっともないということで、その引当金を償却とみなして不
良債権の元本から差し引かせて欲しいという要望が銀行から出て
金融庁はそれを認めたという経緯があるのです。これは会計上は
インチキなのです。
 不良債権の直接償却について金融庁がいっていることは、かな
りおかしいことがたくさんあります。今年の2月26日に金融庁
は次のように発表していますが、正しくないのです。
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
 『68兆円の不良債権の処理のうち、80%はオフバンラ
 ンス化、すなわち直接償却によって処理されている』。
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 全銀協の統計によれば、次のようになっています。
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 ・平成4年度以降12年度中間9月期まで
  不良債権処分損の累計 ・・・・ 69兆9896億円
  このうち、直接償却などの累計  29兆1520億円
                        43%
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 80%と43%の違いは推測ですが、金融庁の数字にはおそら
く部分直接償却が入っているものと思います。少しでも公表数字
をよく見せかけるために粉飾が行われているわけです。
 しかも、この直接償却などの累計の33%に当たる9兆572
6億円は共同債権買取機構への売却なのです。ところが、共同債
権買取機構は、その売却元の銀行より融資を受けて不良債権を引
き取っているのです。これでは“不良債権飛ばし”と同じ手法で
あるといえます。不良債権は直接償却できても、銀行の同機構へ
の貸金が残っているのですから、不良債権は完全にオフバランス
化されたとはいえないと思います。
 しかし、間接償却よりも直接償却をすべきであるという理由が
あります。それは、冒頭の例でいうと、引当金3000万円を積
んだ間接償却のままであると、その金額は帳簿上残ってしまい、
そのお金は新たな貸し出しに振り向けることはできないので、ど
うしても新規の貸し出しが増えないということです。やはり、不
良債権は担保を売却してオフバランス化する必要があります。
 しかし、間接償却にせよ直接償却にせよ、償却のために膨大な
資金を使うわけですから、一挙にやろうとすると、銀行の中には
過少資本になってしまうところも出てくるわけです。そういうと
ころには公的資金を注入すべきです。
 その代わり公的資金を投入するなら、厳格な会計検査をやるこ
とを前提とすべきです。そして、それと同時に経営者責任を厳し
く問うべきなのですが、これがキチンと行われていないのです。
 それにしても、この不良債権問題で分かったことは、銀行の経
営者にしかるべき能力を持った人物が少ないということです。不
良債権の処理が遅れている原因のひとつでもあります。
 なぜなら、10年以上もかかって不良債権問題が解決できない
国は日本だけであるからです。それは、日本の銀行の経営者が経
営上真にリスクをとろうとする姿勢に欠けているからです。この
問題については、9日のEJで取り上げる予定です。

posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(0) | TrackBack(0) | その他 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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