2001年10月04日

木村提案/大手30社問題とは何か(EJ715号)

 3日の日本経済新聞に「明治ドレスナーのMMF急減」という
心配な記事が出ています。倒産したマイカルを組み入れていて元
本割れを起こしており、ファンドの純資産が急減していると伝え
ているのです。
 発売されたばかりの「週刊文春」10月11日号に、「破綻寸
前大手30社リスト」をめぐる金融庁と政府との対立の様子がレ
ポートされています。これは、いわゆる不良債権問題の核心とい
うべき問題であり、不良債権問題に関する情報を整理する目的で
取り上げることにします。
 この「大手30社問題」というのは、元日銀マンで、現在は金
融コンサルタント会社、KPMGフィナンシャルの社長を務める
木村剛氏が提唱しているものです。この渦中の人物である木村剛
氏は、最近いろいろな面で注目されている人物であり、慶応義塾
大学教授、金子勝氏との対談で日本経済を論じた次の近著は、な
かなか読みごたえがありました。
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  『日本経済「出口」あり』
   金子勝、木村剛 宮崎哲弥(企画・進行) 春秋社刊
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 木村氏の提案とはこうです。
 現在、不良債権問題は、銀行の自己査定の甘さが批判の対象に
なっている。その中でもとくに「要注意先債権」として査定され
ている企業大手30社は本来なら「破綻懸念先債権」のレベルで
あり、十分な引当金を積むことが不良債権処理の優先課題のはず
である。もし、そのために過小資本に陥る銀行があればためらい
なく公的資金を再注入すべきである――これが木村提案です。
 ここで、銀行の債務者区分がどうなっているかについて知る必
要があります。これについてはEJで一度取り上げたことがあり
ますが、再現します。債務者は次の5つに区分されます。
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    1.正常先        4.実質破綻先
    2.要注意先       5.破綻先
    3.破綻懸念先
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 このうち「要注意先」と「破綻懸念先」についてその定義を示
しておきます。
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 ≪要注意先≫
  金利減免・棚上げを行っているなど貸出条件に問題のある
  債務者、元本返済もしくは利息支払いが事実上延滞してい
  るなど、履行状況に問題のある債務者のほか、業況が低調
  ないしは不安定な債務者または財務内容に問題がある債務
  者など、今後の管理に注意を要する債務者
 ≪破綻懸念先≫
  現状、経営破綻の状況にはないが、経営難の状態にあり、
  経営改善計画などの進捗が芳しくなく、今後経営破綻に陥
  る可能性が大きいと認められる債務者
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 ここで問題になっている大手30社は「要注意先」に分類され
ているのですが、木村氏は「破綻懸念先」のレベルであると指摘
し、それらの企業は小泉政権の骨太方針によれば2年以内に処理
すべき債権に当るとしています。
 この30社の企業名はいろいろ取り沙汰されていますが、「週
刊文春」では、数社については実名を上げています。フジタ、佐
藤工業、大京、藤和不動産、ダイエー、日本信販、オリコ、日商
岩井、兼松、それに既に破綻したマイカルです。マイカルも破綻
懸念先ではなく、要注意先に分類されていたのです。
 それにしても金融庁の態度はおかしいのです。再検査して現状
を掴み、十分な引当金を積んで、必要ならば公的資金を再注入す
べきであるという周囲の声に対して、柳沢大臣は頑として耳をか
さず公的資金はいらないと明言しているのです。
 このかたくなな態度に、竹中平蔵経済財政担当相は柳沢大臣が
9月に訪米している間に、山崎幹事長、樋口広太郎内閣特別顧問
を味方につけただけでなく、経済産業省の平沼大臣も、金融庁批
判グループに引き入れています。
 平沼大臣は「確かに木村理論によれば、銀行が大手企業の過剰
債務に手をつけないが故に、中小企業への貸し出しにシワ寄せが
きていると読める」として、木村氏を自民党の経済産業部会に迎
え入れています。木村剛氏なかなか大モテなのです。
 小泉首相も木村氏から大手30社問題について説明を受けたと
されており、小泉首相は柳沢大臣に対して「政策は状況によって
変わるのであるから、政策変更しても恥ではない」と説得し、公
的資金注入を含めて対応策を報告せよと期限を切って求めたのに
もかかわらず、柳沢大臣はこれに従っていないのです。彼は一体
何を守ろうとしているのでしょうか。
 さらに首相は、今度は金融庁の森長官を呼び出し、木村氏、樋
口氏とともに大手30社への引当と公的資金投入を求める激しい
議論をしたと伝えられます。
 これに対する金融庁の答えが「特別検査の実施」です。あれほ
ど再検査はしないといっていた金融庁ですが、ここにきて特別検
査をやるといい出したのです。特別検査というのは、要注意先債
権について、格付けや株価などの市場評価の動向に応じて引当金
を積ませたり、最終処理を促すというものです。
 この引当金を積ませるということや最終処理をするという意味
については、明日のEJで具体的に取り上げますが、柳沢大臣は
国会答弁で「大手30社に十分な引当をしても自己資本比率は、
10%台」と明言しており、公的資金の再注入の必要なしという
主張をしています。したがって、金融庁は、検査する企業の選定
やどの債権を選ぶかという点について手心を加えるはずです。
 これに対して竹中経済財政相は、「検査結果を経済諮問会議で
点検する」といっています。結果はどうなるのでしょうか。

posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(0) | TrackBack(0) | その他 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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