2009年11月27日

●「クラウドの実現を支える2つのこと」(EJ第2703号)

 クラウド――クラウド・コンピューティングがもの凄い勢いで
進んでいます。クラウド自体はけっして新しい技術ではなく、構
想としては前からあったのですが、今までなかなか実現しなかっ
たのです。どうして、実現しなかったのでしょうか。
 結論からいうと、次の2つが実現していなかったからです。ク
ラウドには2つとも揃うことが必要なのです。
―――――――――――――――――――――――――――――
        1.通信速度の高速化
        2.モバイルの高普及
―――――――――――――――――――――――――――――
 「通信速度の高速化」は、いわゆるブロードバンドの普及が拡
大するにつれて一気に進んだのです。回線利用料が月額固定制に
なり、ネットを時間を気にしないで使えるようになったことで通
信速度も一挙に2ケタ高速化したのです。
 とくに日本は、通信速度当たりの利用料金において、世界で最
も安価な水準を維持続けているのです。このように少なくともク
ラウドが実現する条件のひとつである「通信速度の高速化」は実
現しているといえます。
 「モバイルの高普及」についてはどうでしょうか。
 モバイルの前に、PCの普及について考えてみます。2008
年現在、全世界で10億台のPCが利用されています。調査会社
ガートナーの調べによると、年間1億8000万台のPCが買い
換えられ、2014年のはじめには全世界での利用台数は20億
台に達するといわれています。
 続いて携帯電話ですが、国際電気通信連合(ITU)の発表に
よれば、2007年末時点での携帯電話の世界普及台数は33億
台であり、PCの3倍以上になっています。
 携帯電話に関しては、文字通り街を歩いている人の全員が持っ
ているといっても過言ではないほど普及しており、なかには一人
で複数台数の携帯電話を持っている人も少なくないのです。
 しかも、これらの夥しい数の携帯電話はすべてがネットに繋が
り、ネットがいつでも、極端にいうと本人がそれと気がつかない
うちにどこでも使われている――これが現在の状況なのです。
 今までPCは建物の中で使われるというのが常識であったはず
です。しかし、ノートPCが増加して少しずつ外でも使われるよ
うになりましたが、それはパーセンテイジでいえばわずかなもの
であったはずです。
 しかし、携帯電話がネットに繋がるようになり、その機能が拡
大されて、PCに近づいてきています。その結果、誕生したのが
アイフォーンによって代表されるスマートフォンです。スマート
フォンになると、これはPCそのもの――究極のネットブックで
あるといえます。
 その結果、PCは建物の中で使われるのは当たり前のこととし
て、外においても非常に多くの人が使うようになってきているの
です。そうなると、ほとんどが外で使われる携帯電話については
建物の中のPCとの関係において、何らかのサポートなり、管理
が必要になってきます。
 ここにクラウドの必要性が出てくることになります。「通信の
高速化」と「モバイルの高普及」の2つが実現したからです。そ
うなると、今後のモバイルがどうなっていくかが、重要な問題に
なってきます。
 アップル社は、2009年9月9日にアイフォーンの世界全体
の出荷台数が累計3000万台を超えていることを発表したので
す。初代のアイフォーンの登場から2年強ということを考えると
急成長であるといえます。
 アイフォーンと同じOSを搭載しているアイポッド・タッチの
出荷台数と合わせると、全世界で5000万台の規模に達してい
るのです。
 この5000万台という実績をどう評価するかについてはいろ
いろな意見があります。携帯の端末で比較すれば、フィンランド
のノキアの出荷台数は四半期だけで1億台近くを売り上げており
アイフォーンなどはその足元にも及ばないのです。
 現在のNTTドコモの契約者数は5500万人前後であること
を考えると、アイフォーンとアイポッド・タッチの5000万台
はアップル社が「iモード」を抜き去りつつあることを意味して
いるのです。なぜなら、日本の携帯電話市場の飽和状態とNTT
ドコモの「iモード」の利用がほとんど国内に限定されているこ
と、それに全世界に展開を図っているアイフォーンの成長性を考
えたときそういえるのです。
 アップル社が口火を切ったのは確かです。これに続けとばかり
グーグル社はアンドロイド端末の世界展開を目指しており、さら
にノキアやスウェーデンのエリクソンも同様のコンテンツプラッ
トフォームを考えているといわれます。
 実はアップル社は、日本の「iモード」をよく研究しているの
です。日本では約1億人が携帯電話を使っていて、その80%は
象徴的な意味での「iモード」を使っているのです。なぜなら、
「iモード」は、EZWebやヤフー!ケータイを含めたモバイ
ル・インターネットの象徴であるからです。
 しかし、世界のケータイ・ユーザー33億人の中で、「iモー
ド」を使っているのはわずかに2%以内なのです。1999年に
アップル社に在籍し、プラットフォームや製品戦略の仕事をして
いた日本通信常務取締役CMO兼CFOの福田尚久氏は「iモー
ド」について、アップル社としては、1999年の時点で次の結
論を出していたと語っています。
―――――――――――――――――――――――――――――
 「iモード」は当然日本では伸びるだろうが、世界では伸び
 ない。                 ――福田尚久氏
―――――――――――――――――――――――――――――
 何しろ、日本の端末メーカー全社の世界シェアは5%を切って
いるのです。  ――[クラウド・コンピューティング/31]


≪画像および関連情報≫
 ●「iモード」の世界展開について
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  日本での「iモード」の大成功を背景に、2002年ごろか
  ら諸外国の携帯電話サービス会社に対して「iモード」の技
  術とライセンスを供与し始めた。しかし、「iモード」のよ
  うな閉鎖的なコンテンツへの需要が少ないこともあり、海外
  展開は苦戦を強いられている。海外では「iモード」のライ
  バル規格であり、事実上の世界標準となっているWAPとM
  MSが普及している。シンギュラーワイヤレスに買収される
  前のAT&Tワイヤレスは、ドコモが大株主であったことも
  あり、AT&Tワイヤレス版の「iモード」を展開し始め
  ていたが、立ち上がってほどなく、AT&Tワイヤレス自体
  が買収によりなくなってしまった。  ――ウィキペディア
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posted by 平野 浩 at 04:17| Comment(0) | TrackBack(0) | クラウド・コンピューティング | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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