2009年11月20日

●「アップス対ウインドウズ・アジュール」(EJ第2699号)

 「クラウド」を解説しようとすると、どうしても話が理屈っぽ
くなってしまいます。しかし、クラウドを正しく理解することは
近未来のIT環境をビジネスに使いこなせるかどうかの重要なカ
ギを握るので、もうしばらくお付き合いください。
 考えていただきたいことがあります。現在のほとんどのPCは
ウインドウズというOSを搭載したコンピュータという箱にソフ
トウェア──アプリケーションが閉じ込められた状態にあるとい
うことをです。こういう状態が20年ほど続いているのです。
 ほとんどのPCがウインドウズPCですから、ユーザーの観点
からいえば別に不自由はないのです。しかし、全体を俯瞰して見
ると、ほとんどのユーザーは強大なマイクロソフト王国に閉じ込
められ、それよりも外に出ることが困難になっています。既出の
小池良次氏は、この状態を「OSの束縛」と呼んでいるのです。
 しかし、ウインドウズだけがOSではないのです。マックOS
もありますし、リナックスというOSもあるのです。OSが違う
ということは、それぞれのPCが違うマシンであることを意味し
ています。
 もし、ウインドウズ対応のローカル・アプリであるワードやエ
クセルをそのままアップルPCやリナックス・マシンで使おうと
しても使えないのです。これが小池氏のいう「OSの束縛」とい
うことになります。つまり、ソフトウェアはOSに閉じ込められ
ている状態であり、他のOSの環境では動かないのです。
 しかし、インターネットの利用については、OSに関係なく、
使うことができます。たとえば、ウェブサイトを見る場合はOS
が異なるどのPCでも表示できます。それはOSの違いをウェブ
ブラウザが中和してくれるからです。そのため、ここにきてウェ
ブブラウザの機能をどのように強化するかが大きな課題となって
いるのです。
 このようなネット時代に力をつけてきた代表的な企業がグーグ
ル社です。グーグル社は「ネットの申し子」といわれているので
す。グーグル社は次のような壮大な目標を掲げています。
―――――――――――――――――――――――――――――
 すべてのアプリケーションをインターネット経由で提供する
                     ──グーグル社
―――――――――――――――――――――――――――――
 現在、グーグル社は「グーグル・アップス」というサービスに
力を入れています。メール、スケジュール管理、チャット、表計
算、ワープロソフトをセットでネット経由で提供するサービスで
そのターゲットは企業であり、着々と成果を上げつつあります。
 この企業向け「グーグル・アップス」には次の2種類があって
現在ユーザー数は着実に増加しています。
―――――――――――――――――――――――――――――
        1.スタンダード版──無料
        2. プレミアム版──有料
―――――――――――――――――――――――――――――
 「プレミアム版」について説明します。
 このサービスは、2007年2月から開始されています。ユー
ザー1人当たりの料金は年間50ドル、広告を外して、セキュリ
ティを強化しています。利用企業は現在100万社を超えている
といわれます。同社のエンタープライズ部門担当社長のデイブ・
ジラールド氏は次のように述べています。
―――――――――――――――――――――――――――――
 当初は、一日平均1000件程度が利用を始めていたが、現在
 では一日3000件と利用企業数は加速度的に増えている。
                 ──デイブ・ジラールド氏
―――――――――――――――――――――――――――――
 世界的な景気後退の時期でもあり、どの企業でもITコストを
削減しようとしてアップスを採用する企業が増えています。アッ
プスを採用すると、アプリケーション運用コストを大幅にカット
できることやサーバーのお守りする専門スタッフが不要になるの
で、その分大幅にコストを削減できるのです。
 現在のところアップスの利用は中小企業が中心ですが、大手バ
イオ企業ジェネンテックが採用するなど、大企業が採用する動き
も出てきているのです。
 アップスの課題としては、ウェブ・アプリをオフラインでも使
えるようにすることです。実際に顧客からの要望が一番多いのは
「Gメール」をオフラインでも使えるようにして欲しいという要
望です。既に「グーグル・ギアーズ」という機能を使って文書作
成ソフトはネットにつながっていない状態でも利用可能になって
います。
 このようにグーグル社は、グーグル・アップスなどを使って法
人向けのサービスに力を入れているのです。これに対してマイク
ロソフト社はウインドウズ・アジュールでこれに対抗しようとし
ています。
 これについてグーグル社のデイブ・ジラールド氏は次のように
述べています。
―――――――――――――――――――――――――――――
 マイクロソフトの進出は「脅威にはなりうる」とジラールド氏
 も認める。もともと多くの企業はこれまでに、ウィンドウズ上
 で走らせる社内アプリケーションソフト等に莫大な投資をして
 おり、大企業などはこうしたアプリケーションを容易にはクラ
 ウドヘ移植できないという事情があった。ところが、マイクロ
 ソフトが新たに発表した「ウィンドウズアジユール」を用いれ
 ば、簡単にタラウド上へ移植できる。
    ──2008年12月13日付、「週刊東洋経済」より
―――――――――――――――――――――――――――――
 確かにウインドウズ・アジュールが画期的であることはグーグ
ル社も認めるところですが、これはネット上のウインドウズその
ものであり、「OSの束縛」からは依然として逃れられないこと
になるのです。 ――[クラウド・コンピューティング/27]


≪画像および関連情報≫
 ●「グーグル・アップス」とは何か
  ―――――――――――――――――――――――――――
  グーグル・アップスは独自ドメインでいくつかのグーグル製
  品を使えるようにする、グーグルによって提供されているサ
  ービスである。グーグル・アップスはには従来のオフィスス
  イートに似た機能を持つ、Gメール、グーグル・カレンダー
  トーク、ドキュメントやサイトといったウェブアプリケーシ
  ョンが含まれる。          ――ウィキペディア
  ―――――――――――――――――――――――――――

デイブ・ジラールド氏.jpg
デイブ・ジラールド氏
posted by 平野 浩 at 04:12| Comment(0) | TrackBack(0) | クラウド・コンピューティング | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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