2009年11月19日

●「クラウド開発ツールをめぐる競合」(EJ第2698号)

 昨日のEJで述べたように、OSの世界で成功を収めるには、
そのOSの環境上で動くアプリケーション――たとえば、ワード
やエクセルなど――の数や種類が多いことと、それぞれのアプリ
ケーションの質が高いことが条件になります。
 そのためには、そういうアプリケーションを開発するツールを
充実させる必要があります。マイクロソフト社の場合、「ビジュ
アルスタジオ」という開発ツールがあり、これが世界中の開発者
たちに受け入れられていることがウインドウズというOSの成功
につながったのです。
 マイクロソフト社は、この「ビジュアルスタジオ」に加えて、
「MSDN」というサービスを開発者に提供しています。MSD
Nとは、開発者が必要とする情報をタイムリーに提供するととも
に、開発時に必要となるソフトウェアのライセンスを条件付きで
提供するサービスのことです。
 このビジュアルスタジオとMSDNによって、開発者はワンス
トップで開発に必要となるほとんどの情報と環境が得られるよう
になり、開発の効率化に大きく寄与したのです。
 これに関連して、チーフソフトウェアアーキテクトのレイ・オ
ジー氏は次のようにいっています。
―――――――――――――――――――――――――――――
 開発ツールとサービスがプログラマーたちの支持を得ている
 限り、マイクロソフトは敗れない    ――レイ・オジー
―――――――――――――――――――――――――――――
 マイクロソフト社は、このようにしてPCのOSの世界では覇
権を成し遂げたのですが、今や主戦場はクラウドの世界――サー
バーの世界に移っているのです。しかし、クラウドの世界では、
グーグル社が先行しているように見えます。
 2008年4月のことです。グーグル社は「グーグル・アップ
・エンジン」というクラウド・アプリケーション用の開発キット
を発表しています。これに対してマイクロソフト社がウインドウ
ズ・アジュールを発表したのは、2008年10月であって、グ
ーグル社よりも大きく遅れているように見えます。
 クラウド・コンピューティングのプラットフォームを提供して
いる企業は、マイクロソフト社以外にグーグル、セールスフォー
ス・ドットコム、アマゾンなどがあります。これらの企業は、そ
れぞれが展開するサービスをコンポーネントとして利用するため
のインターフェース仕様を公開し、開発者が独自のクラウド・ア
プリケーションを開発できるようにしているのです。
 クラウド時代になり、ソフトウェアの中心がクラウドに移行す
るに当たって、開発者たちはどこの企業の開発環境を選ぶか迷っ
ていたのです。というのは、現行の「クライアント・サーバー」
と「クラウド・コンピューティング」の間には断絶があって、今
までとは違う新しい技術――たとえば、パイソン(関連情報を参
照)などを勉強しなければならないのではと考えたからです。
 しかし、マイクロソフト・アジュールの発表によって、開発者
たちが抱いていた不安は一掃されたのです。どうしてかというと
ウインドウズ・アジュール上で動くアプリケーションを開発する
には、ビジュアルスタジオを使うことができることがわかったか
らなのです。
 現在、PCのOSの世界は、ウインドウズがほぼ独占している
ので、開発者のほとんどはその開発環境であるビジュアルスタジ
オを使っています。したがって、アジュール上で動くアプリケー
ション、すなわち、クラウド・アプリケーションがビジュアルス
タジオでやれるのであればラクだからです。
 つまり、これによって、今まであると思われていた現行の「ク
ライアント・サーバー」と「クラウド・コンピューティング」の
間の断絶がなくなってしまったからです。どうやらこれはグーグ
ル社の「宣伝」に乗せられていたと思われるのです。
 たとえば、こんなことが可能です。マイクロソフト社が70%
のシェアを持つデーターセンター向けのアプリケーションをきわ
めて容易にアジュールに移植したり、ある顧客向けに開発したア
プリケーションをアジュール上でパッケージ商品として実装し直
すことによって、自社でクラウドサービスを提供するデータセン
ターを持っていなくても、クラウド向けのサービスを簡単に実施
できるからです。
 話が相当ややこしくなってきたので、ここで整理をしておきた
いと思います。
 マイクロソフト社はPCのOSとしてウインドウズを導入し、
それを大きく普及させたことによって、そのアプリケーションは
PCの機種の違いを乗り超えることができたのです。そのウイン
ドウズもバージョンを重ねて現在では「ウインドウズ7」が最新
バージョンになっています。
 しかし、クラウド・コンピューティングの時代になり、ウェブ
・アプリケーション――クラウド・アプリケーションが登場して
きています。その先陣を切ったのはグーグル社です。2004年
には「Gメール」、2006年には「グーグル・ドキュメント/
グーグル・ドッグズ」の無料運用を開始し、それまでマイクロソ
フト社の牙城であったローカル・アプリケーションの分野を脅か
すことになったのです。そして、2008年4月にグーグル社は
「グーグル・アップ・エンジン」を発表し、開発者が独自のクラ
ウド・アプリケーションを開発できる道を拓いています。
 これに対してマイクロソフト社は、2008年10月にウイン
ドウズ・アジュールを開発し、アジュール上で動作するアプリケ
ーションをビジュアルスタジオで開発できるようにしたのです。
 ウインドウズ7搭載のPCからウェブ・アプリケーションを使
うには、ブラウザでネットにアクセスするのですが、ブラウザは
インターネット・エクスプローラでなくてもよいのです。しかし
その先にはウインドウズ・アジュールというOS上でウェブ・ア
プリケーションは動くことになるのです。
        ――[クラウド・コンピューティング/26]


≪画像および関連情報≫
 ●「グーグル・アップ・エンジン」とは何か
  ―――――――――――――――――――――――――――
  「グーグル・アップ・エンジン」における開発言語は「パイ
  ソン」で、プログラムコードを一度記述すれば、あとはグー
  グル・アップ・エンジンがすべてのプラットフォームで作動
  するように処理を行う。また、アクセス増加による突発的な
  トラフィックにも対処し、グーグルのの他のサービスに容易
  に統合できるという特徴がある。これにより、開発者による
  システム管理や、メンテナンスなどに関わる労力の軽減が図
  られるとされている。
    http://www.sophia-it.com/content/Google+App+Engine
  ―――――――――――――――――――――――――――

マイクロソフト社のクラウド・サービス.jpg
マイクロソフト社のクラウド・サービス
posted by 平野 浩 at 04:17| Comment(0) | TrackBack(0) | クラウド・コンピューティング | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス: [必須入力]

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]


この記事へのトラックバック
×

この広告は90日以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。