2009年11月13日

●「アイフォーン対各社各様のGフォーン」(EJ第2694号)

 エリック・シュミット氏がノベル社の会長の地位を捨て、まだ
学生ベンチャーの雰囲気が抜けないグーグル社のCEOになって
5年間――グーグル社は大きく変貌を遂げたのです。
 その間、グーグル社に何が起こっていたのでしょうか。
 シュミット氏をCEOに迎えたグーグル社は、2004年には
オンライン写真サービスの「ピカサ」、2005年には携帯ベン
チャーの「アンドロイド」、2006年にはウェブ・ワープロの
「アップ・スタートル」、3Dモデリングソフトの「アットラス
ト・ソフト」――これらの企業を次々と買収しています。
 これらの企業はいずれも検索サービスとはまるで無縁の企業ば
かりです。それに加えて、2005年から2006年にかけては
国際回線事業者大手のグローバル・クロッシング社から大量の国
際回線を購入しています。
 また、2006年の秋にも米国内で光ファイバーの買い漁りを
行っており、その年には、グーグル社が本社を構えるマウンテン
ビューで、無料の無線ISPサービスを始めているのです。
 一体グーグル社は何を目指しているのか――その疑問に答える
ように、エリック・シュミットCEOは、2006年8月にカリ
フォルニアで開催された「サーチエンジン戦略会議」において、
今から考えると、きわめて重要な発言を行っているのです。そこ
には、グーグル社が今後進むべき道が示されていたのです。
―――――――――――――――――――――――――――――
 我々はまさにいま新しいモデルに直面しています。ですが、そ
 れがどのくらい大きなチャンスをもたらすか理解してません。
 (中略)PCかマックか、携帯電話かは無関係です。「雲/ク
 ラウド」のような、巨大なインターネットにアクセスすれば、
 その利益、恵みの雨を受けられる時代になつています。
        ――エリック・シュミット/グーグル社CEO
                     ――西田宗千佳著
           『クラウド・コンピューティング』より
―――――――――――――――――――――――――――――
 このシュミット氏の発言から、IT業界では「クラウド・コン
ピューティング」という言葉が、誰いうともなく流行することに
なったのです。
 シュミット氏のいう「クラウド」に対して、敏感に反応したの
はアップル社です。同社はアイフォーン3Gの発売と同時に開始
した「モバイル・ミー」というネット・サービスのシンボルマー
クにクラウドのイメージを採用しているのです。雲の中にカレン
ダーや電子メール、写真などが隠れているというものです(添付
ファイル参照)。ちなみにこの「モバイル・ミー」は、アップル
社がそれまで提供していた「ドットマック」というサービスを発
展させたものなのです。
 グーグル社が何をしようとしているかは、2005年に同社が
携帯ベンチャーのアンドロイド社を買収したことによって、ある
程度見当がついていたのです。それはグーグル社が携帯事業に参
入するというものだったのです。「Gフォーンが来る」――この
噂は世界中を駆けめぐったのです。
 しかし、2007年11月5日、グーグル社の発表した内容は
意外なものだったのです。「Gフォーン」の姿などはどこにもな
く、実際に発表されたのは、次の2つだったのです。
―――――――――――――――――――――――――――――
  1.OHA/,オープン・ハンドセット・アライアンス
  2.オープン・ソースの携帯OS「アンドロイド」提示
―――――――――――――――――――――――――――――
 ちょっと拍子抜けしたような発表のようにみえますが、アップ
ル社にとっては衝撃的な内容なのです。なぜなら、OHAには、
KDDIやNTTドコモ、スプリント・ネクステル、ティー・モ
バイル、テレフォニカなどの大手携帯事業者が参入しており、さ
らに、モトローラやサムスン電子などの端末メーカーなど、多彩
なメンバー34社が顔を揃えているからです。
 アイフォーンのアップル社からみると、グーグル社がGフォー
ンを出してくるよりも、アンドロイドOSを使った強力な携帯大
手が端末メーカーと手を組んで、各社色とりどりのGフォーンを
出してくる方が明らかに脅威です。これは、グーグル社がアップ
ル社に対して挑戦状を叩きつけたかたちになっているのです。
 しかも、携帯OS「アンドロイド」は、オープンソースであり
自由に自社風にカスタマイズできるのです。
 グーグル社のモバイルプラットフォーム担当重役のアンディ・
ルビン氏は、次のように抱負を語っています。
―――――――――――――――――――――――――――――
 この業界のビジネスモデルをオープンにしていきたい。これま
 での垂直統合ではできないことがアンドロイドの登場によって
 実現可能になってくる。たとえば、加盟している各社はアンド
 ロイドに付加価値を加えて提供することができるようになる。
                  ――アンディ・ルビン氏
  ――石川温著『グーグルVSアップル/ケータイ世界大戦』
                       技術評論社刊
―――――――――――――――――――――――――――――
 実際に「アンドロイド」は、各機能を部品のように使えるよう
になっており、メーカーやキャリアはその中から自由に機能を取
捨選択できるのです。
 記者会見が行われた2週間後の11月12日にはアンドロイド
の開発キット――SDKのベーター版が公開され、誰でも無償で
ダウンロードできるようになっています。
 さらにグーグル社は、アンドロイド向けのアプリケーションを
一般から募集するキャンペーンを打ち出しています。グーグル社
は、自分の得意なところは自社開発し、不得手なところは一般に
開放して、アイデアを募る――非常にうまい作戦を展開している
のです。アイフォーン対アンドロイド搭載のGフォーンの激突の
構図です。  ―――[クラウド・コンピューティング/22]


≪画像および関連情報≫
 ●OHA/オープン・ハンドセット・アライアンスとは何か
  ――――――――――――――――――――――――――
  OHAとは、2007年11月にグーグル社の呼びかけで設
  立された、携帯電話における共通のソフトウェア基盤の開発
  ・普及を推進する業界団体。同社および世界の携帯電話事業
  者や端末メーカーなど34社により設立された。OHAでは
  グーグル社が推進する携帯電話端末向けのソフトウェア実行
  環境「グーグル・アンドロイド」を基盤に、対応端末の開発
  や関連するソフトウェアやサービスの普及などに取り組む。
  OHAは緩やかな連合で、アンドロイド搭載端末や関連サー
  ビスのリリースが義務化されているわけではないため、参加
  企業が将来必ずしもアンドロイドへの対応を行なうとは限ら
  ない。          http://e-words.jp/w/OHA.html
  ―――――――――――――――――――――――――――

アップル/モバイル・ミー.jpg
アップル/モバイル・ミー
posted by 平野 浩 at 04:16| Comment(0) | TrackBack(0) | クラウド・コンピューティング | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス: [必須入力]

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]


この記事へのトラックバック