2009年11月11日

●「エリック・シュミットの予言」(EJ第2692号)

 今回のテーマの狙いは、現象的には電話がスマートフォンに変
貌する時代をとらえると同時に、それを裏側で支えるクラウド・
コンピューティングを明らかにすることにあります。
 まず、アイフォーンが注目されているアップル社を取り上げ、
それに対抗するマイクロソフト社の戦略について19回にわたっ
て述べてきたのです。しかし、もうひとつ語るべき重要な会社が
があります。それは、グーグル社です。今回からグーグル社につ
いて述べていきます。
 グーグル社について述べるとき、注目しなければならないのは
グーグル社の最高経営責任者であるエリック・シュミットという
人物です。エリック・シュミット氏とは何者でしょうか。
 エリック・シュミット氏は米パロアルト研究所や米ベル研究所
米ザイログ社を経て1983年にソフトウェアマネージャーとし
て米サン・マイクロシステムズ社に入社しています。シュミット
氏は同社でJavaの開発とインターネット戦略をプログラミン
グし、後に最高技術責任者と執行役員を歴任したのです。
 そして、1997年から米ノベル社の最高経営責任者を務め、
重要な経営戦略や技術開発の中心的な役割を果たしたのです。し
かし、2001年3月に米グーグル社の会長に就任したのです。
そして、ラリー・ページ氏、セルゲイ・プリン氏の2人とともに
「三頭政治」を展開することになるのです。
 1997年の春、このエリック・シュミット氏は、ノベルの会
長になってはじめて行った基調講演において、きわめて注目すべ
き発言を行っています。この講演をリポートしたITジャーナリ
ストの小池良次氏による記事の一部を紹介します。
―――――――――――――――――――――――――――――
 シュミット博士は、これからのネット時代をさまざまに分析し
 た。まず、これまでのクライアント/サーバー時代は、「クラ
 イアント/サービス」の時代に変わろうとしている。そして現
 在のネットワークは階層構造になっているが、インターネット
 ・イントラネットの普及で階層を持たない「ミックスド・ティ
 ア」の時代になるという。また、DSL技術の登場によって、
 データと音声の垣根がなくなり、データ回線の上に音声が走る
 時代がくると展開した。あんまり「自己宣伝はしたくはないの
 だが」と前置きしながら、こうした新時代にはディレクトリー
 (ネットワーク上の住所録に当たる)がますます重要になる。
 ネットワークはデスクトップばかりでなく、ラップトップ、携
 帯電話、ページャー、テレビなどさまざまな端末と結ばれるこ
 とになる。「それはホモジーニアス(同質)な世界における調
 和じゃない」とウィンドウズでネットワークの制覇をねらうマ
 イクロソフトをやんわりと皮肉り、「ノベルはヘテロジーニア
 ス(異質)な世界での調和を目指している」と話した。
   ――小池良次著、『クラウド』より/インプレスR&D刊
―――――――――――――――――――――――――――――
 ここでの指摘は、とても今から12年前に行われたものとは思
えないほど新鮮な内容なのです。とくに、「クライアント/サー
ビス」や「ミックスド・ティア」、「ヘテロジーニアス(異質)
な世界での調和」という概念は、まさにクラウド――グーグル社
が現在展開しているものと同じなのです。そのため、この基調講
演は「エリック・シュミットの予言」といわれているのです。
 ところで、ノベルとはどういう企業でしょうか。
 ノベル社といえば、インターネットの原型といわれるARPA
NET(アルパネット)まで源流をさかのぼれる企業なのです。
いわば、ネットワーク・ビジネスの最先端にいた企業です。とく
にノベルは「ネットウェア」というネットワークOSによって初
期のLANの時代――1980年代はネットワークの世界で君臨
していたのです。
 1993年には、AT&Tからユニックス・システム・ラボラ
トリーを買収してユニックスOSを手に入れ、続いてクアトロ・
プロを買収して、ワードパーフェクトや表計算ソフトでマイクロ
ソフト社のウインドウズやオフィスとしのぎを削ったのですが、
敗れています。そのため、シュミット氏がCEOに就任した19
97年には同社は相当疲弊していたのです。
 したがって、ノベル社としてシュミットCEOに期待したこと
は経営の再建とマイクロソフト社を打倒することだったのです。
しかし、シュミット氏は2001年に、まだ海のものとも山のも
のともわからないグーグル社のCEOに移籍したのです。
 当時のグーグル社は、ヤフーやAOLに検索機能を提供するサ
ービス・プロバイダの一つに過ぎなかったのです。検索サービス
は商業化することはとても難しい世界で、それまでにもライコス
やインフォシーク、アルタビスタなどの多くのベンチャーがそれ
に挑んでいずれも成功していないのです。
 したがって、グーグル社という企業は、当時いかに業績が疲弊
していたとはいえ、ユニックスコミュニティーの老舗であるノベ
ル社の会長がその任期途中で移るような企業ではないのです。
 当時グーグル社は合議制による経営を行っていたのです。さま
ざまな経営事項を社員全員が参加する会議で議論して決めていた
のです。シュミット氏は自らそういう会議に参加したのです。
 シュミット氏がグーグル社に移った2001年から3年間とい
うもの、シュミット氏の消息はまるで消えてしまうのです。一体
何をしていたのでしょうか。
 今考えると、その間グーグル社内部では、ラリー&サーゲイ体
制からシュミット体制への移行が進み、はっきりとクラウド・コ
ンピューティングやモバイル・サービスに経営の向きが大きく変
えられていたのです。つまり、グーグル社はエリック・シュミッ
ト氏によって、単なる検索エンジンプロバイダからの脱却を果た
していたのです。シュミット氏はまるでクラスルームのような企
業であるグーグル社をクラウドを制する大企業へと方向変更させ
ることに成功したのです。
       ―――[クラウド・コンピューティング/20]


≪画像および関連情報≫
 ●米グーグル社とはどういう会社か
  ―――――――――――――――――――――――――――
  米国グーグル社は、人類が使う全ての情報を集め整理すると
  言う壮大な目的をもって設立された。独自開発したプログラ
  ムが、世界中のウェブサイトを巡回して情報を集め、検索用
  の索引を作り続けている。約30万台のコンピュータが稼動
  中といわれる。検索結果の表示画面や提携したウェブサイト
  上に広告を載せることで、収益の大部分をあげている。検索
  エンジンとしては後発であるものの、リンクの集まる重要な
  ページを上位に表示したり、表示に備えて検索対象のウェブ
  ページを保存しておいたりと、それまでの検索エンジンには
  ない機能によって2002年は世界で最も人気のあるものに
  なり、AOLなどのクライアントを通じてインターネット検
  索のトップを占めるまでになっている。日本では、ヤフー・
  ジャパンに次いでシェア2位である。 ――ウィキペディア
  ―――――――――――――――――――――――――――

エリック・シュミット氏.jpg
エリック・シュミット氏
posted by 平野 浩 at 04:19| Comment(1) | TrackBack(0) | クラウド・コンピューティング | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
すごく面白いブログですねっ!
これからも頑張って下さい!
Posted by ネットワークビジネスマン at 2009年11月17日 13:57
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