2009年11月10日

●「ウィニーと似ているライブメッシュ」(EJ第2691号)

 マイクロソフト社の最新の技術「ライブメッシュ」の説明の続
きです。一般論として、複数の人でデータを共有するときどうす
るでしょうか。
 どこかのサーバーにデータを預けて、それにさまざまな場所か
らアクセスするというかたちになると思います。いわゆる集中管
理方式です。グーグル・ドキュメントはこの方式を採用している
のです。
 しかし、集中管理方式には難点があります。それはアクセスの
過度の集中です。とくに無料でワープロや表計算ソフトが使える
となると、常態的にアクセスが殺到するのは当然であり、いかに
パンクを防ぐかが大きな課題になります。現実的にグーグル・ド
キュメントには、過度のアクセス集中によるトラブルやデータ共
有において多くの問題が発生しているのです。
 ところで、昨日のEJで述べたように、ライブメッシュはデー
タ共有ソフト、ウィニーと大変よく似ているのです。データを単
純にサーバーに集めるのではなく、各自のPCにデータを分散し
て持ってもらい、あるデータを欲しい人は、そのデータを持って
いる近くのPCに取りに行く方式なのです。といっても、この説
明では、イメージが描けないと思います。
 ウィニーの場合、ユーザーのPCのハードディスクの一部を共
有エリアとして設定し、ネット上でそれらの共有エリアを連結し
巨大な共有ハードディスクを構築するのです。
 この場合、ユーザーは自分が共有しようと思うデータ──ウィ
ニーの場合は音楽データや映像データなど──そういうデータを
自分のPCのハードディスクに設定した共有エリアにコピーする
だけでよいのです。
 どのようなデータがどこにあるのか──これはユーザー同士で
は検索すればわかるようになっているので、それを取りに行くこ
とができるのです。それが音楽のデータであれば、その音楽をユ
ーザー同士で共有できるわけです。もちろん無料です。
 このウィニーの最大の欠陥は、公開してよいデータと公開した
くないデータを厳然と切り分けることができなかった点にあるの
です。たとえば、あるウィニーのユーザーが自分のPCのハード
ディスクの共有エリアに音楽データを置いたとします。
 しかし、そのPCのハードディスクには仕事用の重要情報がた
くさん入っており、当然のことながら、これらのデータは非共有
エリアにあったのです。
 ところが共有エリアと非共有エリアの切り分けがきちんとでき
ず、ハードディスクのすべてのデータが公開情報として外部に流
出してしまったのです。この場合、いったんデータが流出してし
まうと、それは不特定多数のウィニー・ユーザーに流通してしま
い、取り返しがつかないことになります。
 このウィニーによって代表される通信とデータの流通のシステ
ムは、「P2P/ピア・ツウ・ピア」と呼ばれ、ライブメッシュ
はこの仕組みを採用しているのです。
 しかし、ライブメッシュの場合は、共有されるのは「自分が指
定した機器同士」の「自分が指定したデータ」だけであり、ウィ
ニーのように不特定多数と共有されるわけではないのです。
 ライブメッシュの場合、一見ローカルにデータがあるようにみ
えて、実はネットにつながっているのです。つまり、ローカルと
ネットとの境目がなくなっているので、これがマイクロソフト社
のいう「壁のない世界」ということになるわけです。
 ところで、データ共有のやり方として、グーグル・ドキュメン
トのような集中管理方式とライブメッシュのようなピア・ツウ・
ピア方式の2つがあるのですが、これはLAN――ローカル・エ
リア・ネットワークの次の2つの方式に対応しています。
―――――――――――――――――――――――――――――
      1.クライアント/サーバー方式
      2.   ピア・ツウ・ピア方式
―――――――――――――――――――――――――――――
 ここまでマイクロソフト社の「ウインドウズ・アジュール」と
「ライブメッシュ」という2つの技術について説明してきました
が、これら2つの技術がいわゆるクラウド・コンピューティング
の基礎になるものです。イメージが描けるように、2つの技術を
整理しておくことにします。
 オフィス14ではじめて登場するウェブ・アプリ版オフィスは
ウインドウズ・アジュール上で動作します。ユーザーは、ブラウ
ザ──マイクロソフト社のインターネット・エクスプローラだけ
でなくアップルのサファリやその他のブラウザでもOK──を通
じて、オフィスを操作することになります。
 この場合、ウインドウズ・アジュールは登録ユーザーがどのソ
フトのどの機能をどれだけの時間使ったかを管理します。今のと
ころマイクロソフト社は発表していませんが、当面はウェブ・ア
プリ版オフィスは無料で使えるようです。しかし、近い将来ユー
ザーがオフィスを使った分だけ料金を請求するスタイルになると
思われます。これを「SaaS/サース」というのです。
―――――――――――――――――――――――――――――
      SaaS/Software as a Service
―――――――――――――――――――――――――――――
 一方、これに加えてマイクロソフト社は、とくにメールなどを
中心に指定した機種間においてデータを「同期」するサービスを
展開します。例えば、自宅のPC、携帯電話、マイクロソフト社
のサーバーの三者の特定データをつねに同じに保つのです。これ
により、ユーザーがどこにいても携帯電話で着信メールを確認し
たりエクセル・データを参照したりできることになります。これ
を可能にしているのが、「ライブメッシュ」です。
 アップル社でも、アイフォーンと自宅PCの特定データを同期
する「モバイル・ミー」という有料サービスを実施しています。
今や情報の入手は場所を選ばないのです。
        ――[クラウド・コンピューティング/19]


≪画像および関連情報≫
 ●「SaaS」について
  ―――――――――――――――――――――――――――
  ソフトウェアをネットワーク経由でサービスとして提供する
  事自体は、ASPとして、従来より行われている。有料の電
  子メールサービス、各種の検索サービス、オンラインゲーム
  などである。1999年に設立された米国のセールス・フォ
  ース・コムは、「SaaS」を提唱し、SaaS専業ベンダ
  ーとして、従来はパッケージ販売される事が多かったCRM
  ソフトウェアのSaaSによる提供を開始した。2006年
  には「クラウド・コンピューティング」という言葉が普及し
  SaaSはその一形態と呼ばれるようになった。
                    ──ウィキペディア
  ―――――――――――――――――――――――――――
 ●図出典
   http://itpro.nikkeibp.co.jp/article/COLUMN/20060315/232609/

ウィニーにおける検索の仕組み.jpg
ウィニーにおける検索の仕組み
posted by 平野 浩 at 01:00| Comment(0) | TrackBack(0) | クラウド・コンピューティング | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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