2001年06月13日

糸瀬教授の身体をかけた提言を聞け!(EJ636号)

 9日の「ウェークアップ」における糸瀬氏へのインタビューで
糸瀬氏はこういっています。第一勧業銀行の銀行マンとして社会
人をスタートしたが、中途退社してソロモンブラザーズ・アジア
証券に転進しました。銀行をやめた理由は、明らかに債務超過で
ある企業に付き合いが長いというだけの理由で、無定見に貸し続
ける銀行の体質にアイソが尽きたからです。
 「債務超過なのになぜ貸すのか」と上司に聞くと、「君は貸す
のに不安がないという趣旨の審査書類を書けばいいんだ」といわ
れ、それが退職のキッカケとなったのです。銀行マンとしての良
心が許さなかったからです。
 昨日の続きです。銀行では、債権分類を行う前に債務者の「経
営実態」に応じた次のような分類手続きが行われるのです。
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  1.正常先   ・・・ 業況良好、財務内容は健全
  2.要注意先  ・・・ 貸し出し条件に問題がある
  3.破綻懸念先 ・・・ 現状経営難/破綻恐れあり
  4.実質破綻先 ・・・ 深刻な経営難/再建が困難
  5.破綻先   ・・・ 法的経営破綻の事実が発生
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 この分類手続きのあと、債権分類を行うのです。しかし、糸瀬
氏によると、外資系のアナリストたちは、たとえこれら要注意先
破綻懸念先、実質懸念先、破綻先に区分された債権であっても、
「優良な担保や保証」がある場合は銀行は分類債権ではなく非分
類債権に区分しているのではないかと疑っているそうです。
 確かにそういう傾向はあるのです。銀行としては、不良債権を
少なく見せようとするので、そうなってしまうのです。たとえ破
綻しても、優良な担保や保証が付いているので、回収可能として
分類債権(U、V、W)に入れず、非分類債権(T)に入れてし
まう傾向があるといえます。まさに典型的な問題の先送り体質と
いえると思います。
 さて、不良債権を直接償却するには、そのための引当金を積ん
だうえ、バランスシートから外していくことになります。ところ
が、糸瀬氏によると不良債権150兆円のうち引当金を積んでい
ない額は40兆円もあるというのです。この額を現在の日本の銀
行の実力で償却するには、どのくらいの資金と期間がかかるので
しょうか。
 2000年9月期における銀行の自己資本は、全銀行ベースで
36兆円、大手16行ベースでは23兆円です。しかし、これか
ら既に投入されている公的資金などを差し引いたネットの自己資
本、すなわち銀行が自力で調達した自己資本は20兆円、大手行
ベースで10兆円しかないのです。そして、全国の銀行が稼いで
ある業務純益はせいぜい年間5兆円程度でしかないのです。
 自己資本には手をつけることはできないので、業務純益を全部
使って償却を進めるとすれば、単純計算で8年もかかることにな
るのです。
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     不良債権40兆円÷業務純益5兆円=8年
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 しかも、金融ビックバンの進むなか、これからの銀行経営は一
段と厳しさを増すのは必至の情勢です。そんな中にあって日本の
銀行は、果たして今まで通りの業務純益を稼ぐことができるので
しょうか。もしできないとすれば、8年以上かかってしまうこと
になります。これでは日本経済は瀕死の状態になります。
 ところが、最近になって不良債権の最終処理には次の3つの方
法があるということが盛んにいわれています。
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    1.民事再生法の適用などの法的整理
    2.不良債権の流通市場における売却
    3.債権放棄
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 これら3つで不可解なのは3の「債権放棄」です。確かに1と
2は、不良債権がそっくり銀行のバランスシートから消えるので
最終処理といえますが、「債権放棄」はなぜ最終処理になるので
しょうか。
 債権放棄というのは、このままの状態では貸出先企業の再建は
困難であるという認識に立って、再建計画の提出と引き換えに借
金の一部を棒引きにし、残額については長い期間をかけて返済し
てもらうというものです。
 これがいかに実現性の乏しいものであるかは、過去2〜3年の
間に、数百億〜数千億単位の債権放棄を受けた大手ゼネコンの現
況を見れば明らかなことであり、不良債権の先送り以外の何物で
もないのです。糸瀬氏は、最終処理という美名のもとで行われる
債権放棄とは、小渕・森政権が行ってきた国家規模の自民党の先
送り政策そのものであると警告しているのです。
 糸瀬氏は、病気の喩えを使って次のように述べています。糸瀬
氏自身の身体の現況を考えたとき、この表現は強いインパクトが
あります。

 『病状はさらに悪化して普通の鎮痛剤では効かなくなった。そ
 れでも外科手術には合併症などの危険が伴うので、もう暫くの
 間(夏の参院選まで)様子を見ることとしたい。そこで、取り
 あえず今後は、強力な麻薬であるモルヒネを使った対症療法に
 移行する』。

 これは、医師(政治家)が患者(国民)に病状を説明しないで
勝手に治療につながらない処方を行っているのと同じです。彼ら
がここまで続けてきた先送りは、日本という国家を生死にかかわ
る状態に追い込んでしまっている――と糸瀬氏は警告します。
 そして「われわれには、橋本元総理が犯した同じ誤りを繰り返
すだけの時間は与えられていない。私は自分の病気と同様に日本
の行く末にもまだ希望を捨てていない」としめくくっています。


posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(0) | TrackBack(0) | その他 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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