2009年10月29日

●「iPodはトロイの木馬である」(EJ第2684号)

 私はMS−DOSの時代からマイクロソフトOSを使い続け、
ウインドウズにいたっては、仕事の関係もあって、ウインドウズ
3.0 の頃から使ってきています。現在もウインドウズ・ビスタ
搭載のPCを使っていますから、根っからのウインドウズ・ユー
ザーということになります。
 しかし、そういう私でも、既にマイクロソフト社の最新OSに
なっている「ウインドウズ7」へのバージョン・アップ(?)を
ためらっています。少し様子見をしたいというのが本音です。な
ぜかというと、今回ばかりは本当にバージョン・アップになるの
かどうか疑問だからです。
 ところで、アップル社は「ウインドウズ7」の発売に合わせて
デスクトップの「iMac」とノートPCの「MacBook」
の新機種をぶつけてきています。
 しかし、PCの世界では、一度ウインドウズ・ユーザーになっ
てしまうと、アップル社からいくら魅力的な製品が出ても、もろ
もろの事情から途中でアップル社のPCに乗り換えることはきわ
めて困難になります。
 少なくとも今までに関しては、ほとんどのウインドウズ・ユー
ザーにとって、アップル社のPCはまるで関心がなく、それはま
さに別の世界のものであって、この世に存在しないものになって
しまうわけです。
 スティーブ・ジョブズはこの点を悩んでいたのです。しかし、
ジョブズは、iPodにウインドウズ・ユーザーの関心が集まっ
ているのを知って、ひらめいたのです。そして、直ちに音楽ジュ
ークボックスソフトウェアである「アイチューンズ」のウインド
ウズ版を開発するとともに、iPod自体のウインドウズ対応の
充実化を図ったのです。そして、アイチューンズはネットを通じ
て無料で頒布したのです。
 今までのアップル社であれば、純正のウインドウズソフトを開
発するのは敵の軍門に下るとして絶対にやらなかったことである
と思います。しかし、「マックOS−X」の開発以降、アップル
社の戦略は明らかに考え方が変わっていて、自社ビジネスを柔軟
にとらえ直しているのです。
 ウインドウズ版アイチューンズを無料でダウンロードできるこ
とを知った音楽ファンは、iPod以外のMP3プレーヤーを持
つユーザーまでが使い始めたのです。そして、その使い勝手の良
さをはじめて知ることになるのです。
 ところでアップル社は日本市場を非常に重視しています。なぜ
かというと、日本にはアップルPCの熱烈なファンが多くいるか
らです。そこでジョブズはiPodの発売を機に日本の象徴的な
場所にアップルストアを建築し、そこに、マックPC以外のPC
ユーザーを集客することを考えたのです。
 2003年11月──こうした狙いで誕生したのが、アップル
ストア銀座店です。ちょうど銀座松屋デパートの道路をはさんだ
反対側で銀座4丁目交差点からすぐ近くの場所であり、銀座に来
た人が普通に通る場所に面しています。あの齧ったリンゴのロゴ
マークがきわめて目立っています。
 私がiPodミニを手に入れたのは2004年秋のことです。
これは私が手に入れた最初のアップル社の製品なのです。そうい
う人は多いと思います。そしてアップル社の製品のユニークさ、
使い勝手の良さを知ることになります。そして私自身もiPod
ナノ、アイフォーンと続いてアップル製品を購入したのです。
 ところで、アップル社がアイチューンズを無償提供したことに
ついて、既出の大谷和利氏は次のように述べています。
―――――――――――――――――――――――――――――
 ギリシア神話のトロイア戦争において、トロイを陥落させる決
 め手となったのは城壁の中に持ち込まれた大きな木馬だった。
 城壁の外側から攻めても強固な守りに阻まれて落とすことので
 きなかったトロイも、木馬の中に隠れていた兵士による内側か
 らの侵攻にはなすすべもなく陥落した。これになぞらえて、ア
 イチューンズはウィンドウズユーザーにiPodを購入させる
 ための「トロイの木馬」として機能したと言える。
                      ――大谷和利著
     『iPhone をつくった会社』/アスキー新書/073
―――――――――――――――――――――――――――――
 ひとつでもアップル製品を持っている人なら、たまたま銀座の
アップルストアの近くに来たとき、ブラッと入ってみようという
気になるものです。そうすると、店にはあらゆるマック製品が陳
列してあり、操作することができるのです。
 2階には相談コーナーがあり、何でも相談に乗ってもらえるし
スタッフの応対もなかなかのものです。3階はマックPCなどの
使い方のデモをいつもやっており、4階にはアップル・グッズを
販売しています。
 こういう店舗が持てるのもアップル社がハードウェアを扱って
いるからであり、OSやソフトウェアを主力商品とするマイクロ
ソフト社にはできない芸当であると思うのです。マイクロソフト
社としては、せいぜいビックカメラのような量販店で製品のPR
をするしかないのです。
 私のようにiPodやアイフォーンを持つウインドウズ・ユー
ザーが、各地にあるアップルストアに行って最新のアップルPC
を操作してみるということを繰り返すことにより、アップル製品
に関する心理的バリアが薄れてくるものです。
 そこでPCの買い替えのさいに思い切ってアップルPCに切り
替えるユーザーも出てくるはずです。つまり、今までこの世に存
在しなかったものを現実的に触ってみる──ちょっと前ではあり
得なかったことが現実に起こりつつあるからです。
 iPodはトロイの木馬である──実に含蓄に富む表現である
と思います。現実に私の書斎の中にも少しずつアップル社の木馬
が増えつつあるのです。しかし、ジョブズの仕掛けはこれだけで
はないのです。 ──[クラウド・コンピューティング/12]


≪画像および関連情報≫
 ●アップルストア/銀座店のオープンに米国から参加!?
  ―――――――――――――――――――――――――――
  感謝祭の休暇を利用しゲリー・アレン氏(56歳)は、20
  03年11月26日(米国時間)、16歳の息子と2人でカリ
  フォルニア州バークレーの自宅を出て、日本行きの飛行機に
  乗った。米アップルコンピュータ社が東京の銀座にオープン
  する直営店の開店イベントに立ち会うためだ。29日(日本
  時間)の早朝に起床した2人は、30日午前の開店時には行
  列の先頭にいようと、雨の中28時間、新店舗の外で過ごし
  た。そして目的を達成し、記念品のTシャツを手にすると、
  翌日の12月1日には帰国した。
   http://wiredvision.jp/archives/200312/2003121101.html
  ―――――――――――――――――――――――――――

アップルストア/銀座店.jpg
アップルストア/銀座店
posted by 平野 浩 at 04:14| Comment(0) | TrackBack(0) | クラウド・コンピューティング | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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