2009年10月28日

●「マックOS−XはどのようなOSか」(EJ第2683号)

 もともとアップル社では、ハードウェアとOSとを一体のもの
と考えており、「××OS」という呼び方はしていなかったので
す。どうしてかというと、アップル社のOSは同社のPC「マッ
キントッシュ」専用のOSであり、とくにハードウェアとOSを
区分する必要がなかったからです。そのため「システム××」と
呼ばれていたのです。
 しかし、EJ第2680号で述べたように、1994年にマイ
ケル・スピンドラーCEOのときにOSのライセンスに踏み切っ
ているのです。つまり、その時点で数社のマック互換機が誕生し
ているわけです。
 しかし、OSのライセンスはジョブズがアップル社に戻ると同
時に打ち切られるのですが、その時点からアップル社では、ハー
ドウェアとOSは一体のものではなく、別のものという考え方が
生まれ、「マックOS」と呼ばれるようになるのです。
 ジョブズがアップル社に復帰したとき、アップル社の財政は底
をついている状況だったのですが、ジョブズは、これからのイン
ターネット時代に備えて新しいOSを開発する必要性に迫られて
いたのです。
 そのため、すべてをアップル社で自社開発することをあきらめ
他社の技術を導入しようと考えたのです。一時は「BsOS」や
「ソラリス」をはじめ、「ウインドウズNT」まで検討の対象に
したといわれます。
 結局、ジョブズが主宰していたネクスト社のOS「オープンス
テップ」と「マックOS」の融合版である「ラプソデイ――コー
ドネーム」を開発したのです。しかし、その後2001年にジョ
ブズの頑張りによる、今までのものとはまったく異なる新OSを
発表したのです。これが「マックOS−X」なのです。
 「マックOS−X」はどのようなOSなのでしょうか。
 「マックOS−X」は、従来の「マックOS」と比べると動作
が非常に安定しており、「アクア」と呼ばれる独自の美しいユー
ザーインターフェースのウインドウシステムを採用しており、ア
ップル社のOSとしては珍しくオープンな標準規格を採用してい
るのです。すなわち、すべてのバージョンで、アップル社のC
PUである「パワーPC」版とインテルのCPU版が用意されて
いたのです。ウインドウズPCとの互換です。
 「マックOS−X」のもうひとつの大きな特色は、UNIXベ
ースになっていることです。そのため、UNIX系のOS――B
SDやリナックスなどのソフトウェア資産は、ごく簡単な移植に
よって「マックOS−X」上で動くのです。
 UNIXは、1968年に米国のAT&T社のベル研究所で開
発されたOSであり、C言語というハードウェアに依存しない移
植性の高い言語で記述され、またソースコード(プログラム)が
比較的コンパクトであったことから、多くのブラットフォームに
委嘱されたのです。
 実はこの「マックOS−X」――モバイル機器のアイフォーン
やiPod、iPodタッチ、それにテレビに接続して使用する
ビデオ再生装置「アップルTV」に使われているのです。大きく
てパワフルな製品から小さくて省電力の製品までスケーラブルに
対応できる万能OSの様相を呈しているのです。
 ところで、現在のPCには文字入力にはキーボード、ウインド
ウズ画面操作はマウス──ウインドウズ・マウスはボタンが2つ
というようにかなり複雑です。しかし、アップル社のPCは全体
がスッキリしており、マウスのボタンもひとつしかないのです。
 アイフォーンを使っている人は分かることですが、文字入力ボ
ードは必要なときに画面上にあらわれ、スクロールなどは「ころ
がす」という表現がぴったりです。
 アップル社のノートPCである「パワーブック/G4」は、手
前の中央にかなり広いトラックパットがあり、そこに指を1本当
てて動かすときはマウスポインタが移動し、指を2本にするとウ
インドウのスクロール、指を2本置いた状態でボタンをクリック
すると、ウインドウズ・マウスの右クリックと同じことになり、
右クリックメニューが表示されるのです。こんなことが2005
年頃からできるようになっていたのです。これがアイフォーンの
操作性につながってくるわけです。
 実はこれを可能にしたのは、アップル社がフィンガーワークス
社を買収したからです。このフィンガーワークス社は、米国デラ
ウェア州の企業で、「マルチタッチ」という技術を得意とし、手
を使ってジェスチャーをファイルを開くなど,ごく一般的なコン
ピューター操作の命令に置き換える優れた技術を開発していたの
です。ジョブズは早くからこの企業に目をつけ、交渉を重ねて、
2005年に同社を買収したのです。
 2005年当時、フィンガーワークス社買収はまさに青田買い
に近い先行投資であったのです。しかし、アップル社は同社の技
術をさらに発展させ、ハイレベルのマルチタッチスクリーン技術
にまで育て上げたのです。このあたりはマイクロソフト社は完敗
といったところです。
 このマルチタッチ技術は、PCの操作にある程度慣れたマック
ブック上でだんだん熟成されていったのです。たとえば、トラッ
クパッドに指2本をあてて、回転すると選択されている画像が回
転したり、コントロールキーを押した状態で2本指の上下方向に
スライドさせると、画面全体の拡大と縮小ができたり、3本指を
上下左右方向へスライドさせると、前後の写真の表示の切り替え
やページめくりができるまでになったのです。
 これらの技術はすべてアイフォーン上でもっと簡単な操作で実
現しており、アップル社の先行投資はモノをいったといえます。
既にマルチタッチ技術は特許の関係で他社は追随できない部分が
多くなっており、アップル社はとくにノートPCや携帯電話の世
界でほぼ独占的にこの技術を向上させていくようになると思われ
るのです。このように技術面においては、今やアップル社は首位
に立っているのです。[クラウド・コンピューティング/11]


≪画像および関連情報≫
 ●UNIXとは何か
  ―――――――――――――――――――――――――――
  UNIXはコンピュータ用のOSKの一種である。公式な商
  標は「UNIX」だが、商標以外の意味として「Unix」
  またはスモールキャピタルを使用して「Unix」などとも
  書かれる。UNIXは1969年にAT&Tで最初に開発さ
  れたが、現在では「UNIX」という語はUNIX標準に準
  拠するあらゆるオペレーティングシステムの総称でもある。
  現在ではUNIXシステムは多数の系統に分かれており、A
  T&T開発時代の後も、多数の商用ベンダーや非営利組織な
  どによって開発が続けられている。
                    ──ウィキペディア
  ―――――――――――――――――――――――――――

パワーブック/G4.jpg
パワーブック/G4
posted by 平野 浩 at 04:14| Comment(0) | TrackBack(0) | クラウド・コンピューティング | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス: [必須入力]

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]


この記事へのトラックバック