2009年10月26日

●「デザイン重視のジョブズのアップル社」(EJ第2681号)

 1996年にスティブ・ジョブズがアップル社に暫定CEOと
して復帰したとき、ジョブズは技術者よりもデザイナーの流出を
心配したというのです。
 業績の悪化した企業からは優秀な人材が流出してしまうもので
すが、ジョブズはマーケティング・スタッフや一部の技術者の流
出は仕方がないと考えていたものの、優秀なデザイナーの流出だ
けは何とか食い止めたいと考えていたのです。
 技術者についてジョブズは、アップル社に復帰するとき、ネク
スト時代の技術者を連れてきているので、技術者よりもむしろデ
ザイナーを守ろうとしたものと考えられます。
 その結果、アップル社にとってきわめて幸いだったのは、工業
デザイン担当副社長兼工業デザイングループディレクター、ジョ
ナサン・アイブが残ったことです。このアイブが後のiMac、
PowerBook、iPod、そしてアイフォーンを生み出す
ことになるのです。
 ジョナサン・アイブは現在42歳ですが、英国出身で、大学在
学中から多くの有名企業の誘いを受けていたという天才的インダ
ストリアル・デザイナーなのです。
 ジョナサン・アイブをアップル社に入社させた功績は、工業デ
ザイン担当副社長の前任者ロバート・ブルーナーにあります。ブ
ルーナーは自分の後継者を探していて、アイブに目をつけたので
す。そのとき、アイブは、ロンドンにおいて急成長を続ける自分
のデザイン・スタジオ「タンジェリン」を率いていて、その地位
を捨てて、一企業のインハウスデザイナーになるとはとても考え
られなかったのです。
 しかし、ブルーナーはアイブを熱心に口説いたのです。実はそ
のときアイブは、タンジェリンであらゆる分野のデザインを担当
してみて、自分のライフワークは電子機器のデザインで行こうと
決めていたのです。
 アイブは熱心に入社を勧めるブルーナーの勧めにしたがい、家
族と一緒にアメリカに移住したのです。そして1992年にアッ
プル社に入社し、20周年記念のマッキントッシュのデザインで
頭角をあらわし、ロバート・ブルーナーの退任後は同社のデザイ
ン部門を率いているのです。
 結局、アイブはスピンドラー、アメリオという2人のCEOを
経て、デザインに知識も理解もあるジョブズCEOとの出会いを
果たすのです。
 ところで、アイフォーンの製品外装を見ると、次のように印刷
されています。
―――――――――――――――――――――――――――――
       Designed by Apple in California
      Assembled in China. Model No.A1241
―――――――――――――――――――――――――――――
 最近は、ほとんどの電気製品で「メイド・イン・チャイナ」と
か、「メイド・イン・タイワン」とか、「メイド・イン・マレー
シア」というように、生産国表示をアジア諸国とするものがほと
んどですが、アップル社の製品も例外ではないのです。
 しかし、アップル社の製品にはすべて次の一文を掲げられてお
り、他社との違いをみせています。
―――――――――――――――――――――――――――――
    Designed by Apple in California
    この製品はカリフォルニア州のアップル社で
    デザインされたものである
―――――――――――――――――――――――――――――
 これを見れば、アップル社がいかにデザインを重視し、誇りを
持っている会社かわかると思います。もうひとつ興味深いのは、
「米国のアップル社」ではなく、「カリフォルニア州のアップル
社」となっている点です。アップル社に限らず、シリコンバレー
で起業した企業にとって、カリフォルニアの自由な風土は愛すべ
きものであり、こだわりを持っているのです。これは、もはやカ
リフォルニア州を離れることはないというアップル社の決意表明
と受け取ることもできると思います。
 もうひとつアップル社には、製品製作のこだわりとして、次の
フレーズを守っているのです。
―――――――――――――――――――――――――――――
        “Hot,Simple and Deep”
        ホットで、シンプルで、ディープ
―――――――――――――――――――――――――――――
 これは、アップル社が、アップルU向けに優れたゲームソフト
を開発するさいの指針として打ち出したフレーズなのですが、こ
の指針にこだわって製品開発を進めるのです。
 最先端で格好良いものを見たとき、英語では「It's hot !」と
いうのですが、そういうものを作る――これがアップル社の指針
なのです。もっとも最近では、比較的若い人の間では、同じ表現
を「It's cool !」 ともいうのです。
 例えば、iPodを広告や店頭で初めて見た人は、どう感ずる
でしょうか。
 まず、シンプルですっきりとしたデザインに惹かれるものがあ
ります。だが、電気製品に付きものの、ボタンスイッチが一切な
いことに奇異に感ずるはずです。
 そこで実際に製品を手にして、クリックホイールを回してみる
と、その動きと画面のスクロールやボリーム調整の表示が直結し
ているような感覚に一驚する。そしてスムーズに音が出る――そ
の時点で「It's hot !」または「It's cool !」となります。
 「斬新で、取っつきやすく、それでいて奥が深い!」――アイ
フォーンにしても同様のことがいえると思います。別にマニュア
ルがなくても、あっちこち触っていると、基本的なことはすぐで
きるようになる――それでいて一台のマシンで多くのことができ
るので、奥が深いのです。アップル社の製品はすべてそういう仕
様になっています。―[クラウド・コンピューティング/09]


≪画像および関連情報≫
 ●ジョナサン・アイブについて
  ―――――――――――――――――――――――――――
  iPodの爆発的人気は社会現象となっており、日本でもソ
  ニーなど他社の追随を許さないほど。今年は、記憶媒体に軽
  量で音跳びが少ないフラッシュメモリーを使ったiPodシ
  ャッフルとiPodナノを発売し、各ユーザーの需要に合わ
  せた商品展開で人気を不動のものとしているのだ。iPod
  デザインチームのリーダーであるアイブ氏は、アップル社の
  チーフ・デザイナーでロンドン生まれ。アイブ氏のチームは
  iPodだけでなくiMac、iBookなどのデザインも
  担当し、英国美術協会や広告業界団体、ドイツのデザイン博
  物館、米国工業デザイナー協会などから数多くの賞を受け、
  その作品はニューヨーク近代美術館など世界中の美術館で展
  示されているそうなのだ。
        http://www.narinari.com/Nd/2005125410.html
  ―――――――――――――――――――――――――――

ジョナサン・アイブ.jpg
ジョナサン・アイブ
posted by 平野 浩 at 04:17| Comment(0) | TrackBack(0) | クラウド・コンピューティング | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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