インドウズを使っています。それはウインドウズがOSのデファ
クト・スタンダード(業界標準)になっているからです。
その結果、ウインドウズが本当に使い勝手の良い優れたOSな
のかどうかの判断は、普通のユーザーにはわからないと思うので
す。選択肢があまりにも限定されているからです。すなわち、ど
こにでもある普通のウインドウズPCを選ぶか、マックPCを選
択するかの二者択一であるからです。
それでは、ウインドウズOSとマックOSはどちらが使い勝手
が良く、どちらがより優れているかということになると、これは
後者に軍配を上げざるを得ないのです。
それは、業界標準のOSが大幅な機能の変革をやりにくいのに
対し、マックOSは世界にただ一つアップル社しか使っていない
OSなので、変革がやりやすいということもあると思います。
前回少し触れたように、マイクロソフト社創立者のビル・ゲイ
ツは、初期のウインドウズの開発と販売に不安を持っていて、当
時アップルのCEOのジョン・スカリーに対して、マックOSを
ライセンスして欲しいと提案したのです。
そのときのビル・ゲイツの考え方は、マイクロソフト社はOS
の開発から手を引き、アプリケーションソフトウェアの開発と販
売に注力するつもりでいたのです。ウインドウズ戦略が大成功し
た現在ではそのことを知る人はあまりいないと思います。
もともとマイクロソフト社はOSの開発はどちらかというと苦
手であったのです。IBM社から開発を委託されたウインドウズ
の前身OSである「MS−DOS」にしても、当時のデファクト
・スタンダードであったデジタル・リサーチ社の「CP/M」を
模倣したものであったし、ウインドウズについても先行するアッ
プル社のOSを参考にせざるを得なかったのです。したがって、
ビル・ゲイツはマックOSのライセンスを提案したのです。
しかし、ビル・ゲイツのこの提案は、アップル社の役員会で否
決されてしまうのです。逆にいうと、これがマイクロソフト社に
とって幸いしたといえます。ここでOS事業から手を引いていれ
ば現在のマイクロソフト社はなかったと思うからです。
その後アップル社は、マイケル・スピンドラーがCEOのとき
マックOSを他社にライセンスすることに踏み切るのです。19
94年のことです。
その翌年から、数社からマック互換機が発売になっています。
アップル社のこの変貌を見て、多くのアナリストたちは、アップ
ル社はやがてハードウェアから撤退し、マイクロソフト社のよう
にOSやソフトウェア開発に専念のではと考えたのです。
しかし、1996年にアップル社に復帰したジョブズは、この
マックOSライセンスを打ち切り、マック互換機戦略を終焉させ
たのです。そのため、再びマックOSをプラットフォームとする
メーカーはアップル社だけとなったのです。
ジョブズにいわせると、ハードウェアを捨ててソフトウェアに
専念するなどということは絶対にやってはならないと考えている
のです。どうしてジョブズがこういう考え方を持ったのかという
と彼はネキストコンピュータ時代にハードウェア事業を切り捨て
ソフトウェア事業に特化して失敗しているからです。事実ジョブ
ズはネキストコンピュータ社からネキストソフトウェア社に社名
を変更しているのです。
なぜ、ハードウェアを切り捨てることが問題になるのでしょう
か。このことに関するジョブズの考え方は非常に説得力がありま
す。テクノロジー・ジャーナリストの大谷和利氏の言葉を借りて
いうと、次のようになります。
―――――――――――――――――――――――――――――
OSやソフトウエアの良さは、ある程度使い込んでみないとわ
からない。しかも、その分野に対するそれなりの知識がないと
的確な判断が下せない場合が多い。これは、自動車の走行運動
性能などと似ている。これに対し、ハードウェアの外観は車の
外装と同じく、好きか嫌いかという主観レベルのものも含めて
誰もが話題にできる。つまり、その価値判断を行うことで、製
品に興味を持ち、心理的に関われるのだ。そこでアップル社は
同社製品がもたらす優れたユーザー体験を知ってもらうための
呼び水として、魅力的な外装デザインにも力を入れた。これは
自社ブランドのハードウェアを持たなければ採ることのできな
い戦略だ。 ――大谷和利著
『iPhone をつくった会社』/アスキー新書/073
―――――――――――――――――――――――――――――
マックOSがどんなに良いといわれても外形的に見ても絶対に
わからないのです。しかし、アップル社のiMacはデザインが
斬新で魅力的であるということは誰もが認めています。もちろん
使ってみなければiMacが本当に良いかどうかわかりませんが
それだけで「欲しい」と思わせることは十分可能なのです。
しかし、機能に関しては、アップル社ほどの知名度のある企業
であれば、他のメーカーに比べてそれほど差があるものではない
ことはユーザーはわかっているので、デザインの斬新さと価格し
だいで売れるのです。
こういう点で、今まで基本的にハードウェアを持たない戦略で
急成長してきたマイクロソフト社は現在方針を変更しつつありま
す。確かにマイクロソフト社のハードウェアというと、携帯音楽
プレーヤー「Zune」や家庭用ゲーム機「Xbox」、PC向
けのキーボードとマウスなどしかないのが現状です。
しかし、ZuneはiPodに遠く及ばず、Xboxは米国で
は成功しているものの、全世界的なヒット商品にはなっていると
はいえないのです。しかし、マイクロソフト社の中心製品はOS
ですが、シェア90%に達している現状では良くて当たり前であ
り、問題のあることだけが批判の対象になる――ここにきてハー
ドウェアを持っていないことがマイナスに働いてきているといえ
ます。 ――[クラウド・コンピューティング/08]
≪画像および関連情報≫
●スティーブ・ジョブズの真骨頂
―――――――――――――――――――――――――――
ようやくアップルに復帰をしたものの、ここも赤字で、ブラ
ンド力も低下していた。パソコンiMacをヒットさせたが
長くは続かない。「よし、つぎは携帯音楽プレーヤーだ」と
思いつくが、開発できる社員は、アップルにはいない。それ
でもなんとか開発したiPodを専門家はみんな「ダメだ」
とこき下ろした。音楽楽配信サービスiTMSの立ち上げに
は、大手音楽会社の強者たちとのタフな交渉が待ち受けてい
た。このようなピンチ続きを、ジョブズは決して嘆かなかっ
た。むしろ「チャンスだ」ととらえ、すさまじい執念をもっ
て要所要所の交渉を成功させた。それが彼の真骨頂といえる
かもしれない。ピンチは嘆くものではなく、乗り越えるペき
ものと考える人だけが、チャンスの入り口に立てるのだ。
――竹内一正著/リュウブックスアステ新書
『スティーブ・ジョブズ/神の交渉力』より
―――――――――――――――――――――――――――
竹内一正氏の本


