なことをいっています。
―――――――――――――――――――――――――――――
数年に一度、革命的な製品が世の中に現れて、すべてを変えて
しまう。そういう製品を一度でも送り出すことができれば恵ま
れているが、アップル社は、非常に幸運なことに、過去に革命
的な製品をいくつか誕生させてきている。
――スティーブ・ジョブズ
―――――――――――――――――――――――――――――
このジョブズの発言に該当するものとしては、1984年の初
代マッキントッシュと2001年のiPodが上げられます。前
者はその後のコンピュータ業界を一変させましたし、iPodは
音楽業界の在り方をすっかり変えてしまっただけでなく、それに
続く存在としてアイフォーンが登場し、携帯電話の世界に変革を
もたらしつつあります。
ところで、ジョブズはなぜ携帯音楽プレーヤーに目をつけたの
でしょうか。
ジョブズは日本や台湾のメーカーから発売されている携帯音楽
プレーヤーの操作が必ずしも簡単ではなく、PCとのやり取りも
複雑である点に目をつけたのです。「これなら総取りすることは
可能だ」とジョブズは考えたのです。
そこで、ジョブズは、敏腕のエンジニア、トニー・ファデルを
加えた携帯音楽プレーヤーの開発チームを編成し、2つの注文を
出したのです。
―――――――――――――――――――――――――――――
1.説明書なしで、簡単に使うことのできる独創的プレーヤー
2.製品の完成は一年後のクリスマスシーズンに間に合わせよ
―――――――――――――――――――――――――――――
しかし、ジョブズから毎日のように電話がきて、次々と条件を
加えはじめたのです。
―――――――――――――――――――――――――――――
曲を出すのに3回もボタンを押すなんてダメだ。それに音量が
低いし、シャープさが足りない。メニュー表示も遅い。デザイ
ンもよくない。もっとオシャレなデザインにすべきだ、など。
―――――――――――――――――――――――――――――
期間は約1年半程度しかないのです。その期間中に世界のどこ
にもない独創的な携帯音楽(MP3)プレーヤーを作れというの
です。しかも、ジョブズの出す条件はどんどん厳しくなる一方な
のです。それに、アップル社はPCのメーカーであって、音楽プ
レーヤーなんか作ったことはないのですから、無茶苦茶です。
しかし、アップル社には、こういう困難な開発をやり遂げるD
NAがあるのです。果せるかな、約束通りクリスマス商戦に間に
合う2001年10月――ちょうど1ヵ月前の同時多発テロの影
響が色濃く残るなかでiPodは発表されたのです。
iPodは、「四角と丸で表すことができる」独特のデザイン
それに大きな液晶画面を備え、その下にはiPodの象徴ともい
うべきホイールがあるのです。このホイールを用いて選曲、音量
調整、早送り、巻き戻し、画像・動画閲覧などすべての操作を直
感的に行えるのです。
iPodの出来栄えは自らも音楽をよく聴くジョブズを満足さ
せるものだったのです。しかし、最大のネックはやはり価格――
399ドルにあったのです。発売当初、マスコミは「たかが携帯
音楽プレーヤーに399ドルも払って1000曲もの楽曲を持ち
歩く者などいるものか」と冷たく批判したものです。
しかし、iPodは市場を独占するほどの人気を得るようにな
り、収録する楽曲は1000曲では足りないとまで、いわれるよ
うになったのです。それにiPod成功の最大の要因はiTMS
に5大レーベルを参加させることに成功したからです。ちなみに
iTMSとは音楽配信サービスのことです。
―――――――――――――――――――――――――――――
iTMS/iTunes Music Store
―――――――――――――――――――――――――――――
本来アップル社は、というより、スティーブ・ジョブズは、音
楽のビジネスに関しては門外漢のはずです。それにもかかわらず
大手レコード会社を巻き込んで音楽配信サービス――iTMSを
大成功させています。どうしてうまくいったのでしょうか。
それは、ジョブズ自身が音楽が好きだったからです。彼はとく
にボブ・ディランの大ファンであり、新製品のお披露目のときな
どはよくボブ・ディランの「時代が変わる」の音楽を使っている
ほどです。もし、ジョブズが音楽好きでなかったら、iTMSは
成功しなかったでしょう。「好きこそものの上手なれ」、このあ
たりがビル・ゲイツと違う点です。
iTMSの交渉において、当時全米レコード協会会長を務めて
いたヒラリー・ローゼン氏は次のようにいっています。
―――――――――――――――――――――――――――――
テクノロジーの世界の人々にとって、音楽はソフトウェアにす
ぎない。でも、スティープは熱狂的な音楽ファンだった。これ
は音楽業界の人々にとって大きな意味があった。
竹内一正著/リュウブックスアステ新書
『スティーブ・ジョブズ/神の交渉力』より
―――――――――――――――――――――――――――――
音楽業界の人は、音楽をビジネスの道具と考える人に対しては
ガードを高くしてなかなか妥協しないのですが、ジョブズのよう
に自身が熱狂的な音楽ファンであり、音楽を生み出すことの大変
さをよく知り、そのすばらしさを理解している人との交渉に関し
てはガードを下げて話し合うことがあるのです。
また、アップル社は、あのビートルズとも長い法廷論争を行っ
てきたのですが、ジョブズはビートルズにもiTMSに参加する
よう呼び掛けていたのです。しかし、ビートルズ側はかたくなで
あったのです。 ――[クラウド・コンピューティング/05]
≪画像および関連情報≫
●iPodが大成功した理由/竹内一正氏
―――――――――――――――――――――――――――
iPodが大ヒットした理由は、iTMSに5大レーベルを
参加させ、利用者を満足させたことにある。だがジョブズは
決して、気楽に5大レーベルのCEOたちとの交渉に臨んだ
わけではない。彼は音楽業界の専門家ではなかったからだ。
だが、「専門じゃないからやりたくない」と言っていたら、
iPodの成功はなかった。いやなことをやり遂げて、やっ
と自分の好きなことをやれるようになるのだ。コミック大国
・日本で、総販売数2億冊を誇るメガヒット「ゴルゴ13」
の作者さいとうたかをは、好きで「ゴルゴ13」を描き始め
たのではないという。本当は時代劇を描きたかったのだ。し
かし、出版社の要請で、我慢して「ゴルゴ13」を描いた。
それだけでなく入魂の作品にした。そのおかげで、その後、
時代劇漫画もつぎつぎと手がけることができたのだ。日常の
仕事で、つい「専門外です」と自分に限界線を引いてはいな
いだろうか。線引きをしている限りは、仕事の質を高めるこ
とは難しい。能力アップも起こらない。新しいチャンスも摘
み取ってしまっている。それではもったいない。
竹内一正著/リュウブックスアステ新書
『スティーブ・ジョブズ/神の交渉力』より
―――――――――――――――――――――――――――
iPod/1G


