2009年10月16日

●「アップルには秘密警察がある」(EJ第2675号)

 スティーブ・ジョブズは、暫定CEOに帰り咲くと、まず最初
にやったことは、宿敵マイクロソフト社のビル・ゲイツに直接電
話を入れたことです。1997年のことです。いったいどんな話
をしたのでしょうか。
 電話の内容は、アップル社の持っている特定の知的財産のいく
つかをマイクロソフト社に譲渡したいという提案だったのです。
それは、ウインドウズのGUI――グラフィカル・ユーザ・イン
ターフェース構築のためにビル・ゲイツがのどから手が出るほど
欲しがっていることをジョブズはよく知っていたからです。
 マイクロソフト社がウインドウズを構築するときにアップル社
の持つ多くの知的財産(特許)が大きな壁になったのです。その
ときの詳しい状況については、元イギリスのマイクロソフト社に
入社し、その後同社の日本法人に移籍したトム・佐藤氏の著書に
出ているので、その一部をご紹介します。
―――――――――――――――――――――――――――――
 ウィンドウズ1.0 出荷のさい、アップルとマイクロソフトは
 大喧嘩をした。そしてマイクロソフトがマック用ソフトを開発
 して販売する代わり、ウィンドウズのルック&フィール(デザ
 インなど視覚的なもの)を認める契約を交わしていた。ゲイツ
 は交渉事に関しては圧倒的に強く、2.0 がマックに似たよう
 なものになっても問題ないように、契約をしたつもりだった。
 ところが、ウィンドウズ2.0 についてアップルのジョン・ス
 カリーCEOは、マイクロソフトを契約不履行ではなく、コピ
 ーライトの侵害で提訴した。アップルはGUIのルック&フィ
 ールは自社の知的財産権であり、真似した部分を削除せよと要
 求したのである。      ――トム佐藤著/新潮社298
        『マイクロソフト戦記/世界標準の作られ方』
―――――――――――――――――――――――――――――
 とにかくこのときの訴訟合戦は大変だったのです。もともとウ
インドウズのGUIの原型はゼロックス社の「STAR」であり
これを巡りゼロックス社、アップル社、マイクロソフト社――そ
れにウインドウズ2.0 上で簡単なユーザーインターフェースを
制作したヒューレッド・パッカード(HP)社までが訴訟合戦に
巻き込まれたのです。
 この訴訟合戦を見てIBMはウインドウズをOS/2プロジェ
クトから遠ざけたのです。もし、ウインドウズ2.0 をPCにバ
ンドルすると、このドロ沼の訴訟合戦に巻き込まれる懸念があっ
たからです。後から考えると、このことがマイクロソフト社に幸
いし、IBMは大きなチャンスを逃したのです。
 それはさておき、アップル社のジョブズ暫定CEOから提案が
あった件についてビル・ゲイツは、それを受け入れる決断を下し
たのです。
 その結果、ジョブズはマイクロソフト社からアップル社へ1億
5000万ドル(173億円)の投資を引き出したのです。さら
に、マッキントッシュPC用の「マイクロソフト・オフィス」の
販売とアップデート継続の約束をとりつけたのです。
 スティーブ・ジョブズは、人から受けた恩義などはすぐ忘れる
人であり、人間的には大いに問題がある人物なのですが、事業経
営に関しては天才のひらめきを見せるのです。こういうジョブズ
について、既出の竹内一正氏は次のようにいっています。
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 「過去をなつかしんで見る暇があったら、未来を見る」―――
 ジョブズにとって過去は忘れ去るべきものでしかないようだ。
 だから、受けた恩にも感謝しない。恩知らずと言っていいほど
 情実無用だ。だからこそ、しがらみによって判断が鈍ることが
 なかったともいえる。目的達成のためには、たとえ宿命のライ
 バルであるビル・ゲイツとでも、平気で手を結ぶことができる
 のである。恩義を忘れる一方で敵とは握手を交わすという驚愕
 の行動はアップルのファンから轟々たる非難を受けたが、ジョ
 ブズは気にもとめなかった。生み育てたアップルが、自分が不
 在の間に、パソコン市場の片隅に追いやられている。この会社
 を短期再生するためには、市場を牛耳っているマイクロソフト
 と提携するのが唯一の策だったのだ。
         ――竹内一正著/リュウブックスアステ新書
         『スティーブ・ジョブズ/神の交渉力』より
―――――――――――――――――――――――――――――
 スティーブ・ジョブズが戻る前のアップル社が業績不振にあえ
いだ理由のひとつに社内情報の管理不足があるのです。この会社
は、社員でないと知り得ない情報がすぐ漏れるのです。たとえば
新製品の出荷時期などは簡単に漏洩してしまうのです。
 良い意味ではオープンな社風なのですが、だんだん度が過ぎる
ようになっていったのです。例えば、社内であるプロジェクトの
計画があるとき、それに反対するスタッフが仲の良い記者にマイ
ナスの情報をリークしてプロジェクトを潰すということまで行わ
れるようになったからです。
 暫定CEOになったジョブズは、この情報リークを防ぐため、
旧ソ連の秘密警察KGB並みの情報統制をひいたのです。社員が
マスコミと話すことを禁止し、内部情報を漏らした者は即解雇す
るという厳しい情報管理体制です。
 やがて、アップル社からの新製品を含む発表は、スティーブ・
ジョブズ暫定CEOの口から直接語られるようになったのです。
そのため、マックワールドなどのフェアにおけるジョブズの基調
講演には、マスコミ各社が大勢押し掛けて、何を話すか真剣に聞
き入るようになったのです。
 首相のぶらさがり会見のように多くの記者はジョブズのコメン
トをとろうとして追いすがりますが、ジョブズは絶対に話さない
のです。その様子は何となく民主党の小沢幹事長を見ているよう
な感じがします。しかし、どんなにじゃけんにされても記者たち
の間ではスティーブ・ジョブズは人気があるのです。不思議な魅
力があるからです。―[クラウド・コンピューティング/03]


≪画像および関連情報≫
 ●ジョブズはチョコレート/ある女性記者
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  ジョブズはチョコレートのようなもの。私にとってよくない
  ことはわかっている。でも、とっても好きなの。だから家の
  真ん中には置かないようにするの。私はジョブズのまわりに
  いることが好き。それは彼が世界の中心的存在だから。
         ――竹内一正著/リュウブックスアステ新書
         『スティーブ・ジョブズ/神の交渉力』より
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ジョブズCEOのスピーチ.jpg
ジョブズCEOのスピーチ
posted by 平野 浩 at 04:17| Comment(0) | TrackBack(0) | クラウド・コンピューティング | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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