07年のアイフォーンの発売、いずれも成功し、今やアップル社
は世界中の注目を浴びる企業になっています。何しろアップル社
は米『フォーチュン』誌による「21世紀初頭に全米で最も尊敬
される企業」のひとつになっているのです。
しかし、今から15年ほど前の1990年代半ばにはアップル
社の財政は最悪の状態にあり、いつ倒産してもおかしくなかった
のです。それなのにどうしてアップル社は立ち直ることができた
のでしょうか。
それは、1996年にかつてCEOであったスティーブ・ジョ
ブズが特別顧問としてアップル社に復帰したことが、アップル社
の大復活につながったことは間違いないのです。
これからのケータイ新時代において、アップル社が何を仕掛け
てくるかはきわめて重要です。それを予測するには、ジョブズが
アップル社に復帰してから何をしたかについて知っておくことは
役立つと思うので、それについて調べてみることにします。
アップル社の創業は1976年ですが、スティーブ・ジョブズ
は1985年にアップル社を追われています。それも自らがペプ
シコーラから引き抜き、CEOに据えたジョン・スカリーによっ
て社を追われているのです。なぜ、アップル社を追われたかにつ
いては著作もたくさんあるので、それに譲ることにします。
スティーブ・ジョブズが去った1985年から、ゆっくりとで
すが、アップル社の求心力は失われていったのです。1990年
代に入ってしばらくすると、アップル社はウインドウズPCメー
カーに追従するようなしないような曖昧な戦略をとり、OS開発
の滞りなども重なって評判を落とし、1990年代半ばには会社
の存続は風前のともしび同然になってしまったのです。
ジョブズはアップル社を追われた1985年に所有していた同
社の株式650万株を売却し、そのお金でネクストという会社を
設立したのです。
しかし、事業は成功せず、赤字続きだったのです。業績不振の
会社は人間関係がおかしくなるものです。まして、ジョブズとい
う人物は、傲岸不遜の言動、超自己中心的な性格として知られて
おり、創業時の優秀な人材が次々と辞めていったのです。
ジョブズは自分のメガネに合う5人の人物をネクストに連れて
行っています。この人選はジョブズがアップル社の会長のときに
行われたのですが、ジョブズは「業務や現在アップル社が手がけ
ている製品開発に支障をきたすメンバーではない」と明言してい
たのです。しかし、これは本当ではなかったのです。
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新会社へ行くのは、アップルの重要な仕事には関わっていない
低レベルのメンバーだと信じていたスカリーにも、やっとジョ
ブズの本心がわかったのだ。リストには、アップル技術者の最
高の名誉「アップルフェロー」であるリック・ペイジが入って
いた。ソフトウェア開発マネジャーのダニエル・ルインも入っ
ていたし、アップルがもっとも強いとされる教育市場のマーケ
ティング責任者まで名を連ねていたのだった。
――竹内一正著/リュウブックスアステ新書
『スティーブ・ジョブズ/神の交渉力』より
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しかし、ジョブズをアップル社に復帰させたのは、1996年
からアップル社のCEOであったギル・アメリオなのです。アメ
リオは、アップル社の再生を託すのはジョブズしかいないと考え
て、ネクスト社の作ったOS「ネクストステップ」を次期アップ
ルマシンのOSとして採用し、同時にネクスト社自体を買収して
ジョブズの復帰を歓迎したのです。それに現金3億7750万ド
ル(約434億円)とアップルの株式150万株を贈るという破
格の待遇です。つまり、ジョブズにとってアメリオはとても足を
向けては寝られない大変な恩人になるのです。
アメリオは膨れ上がったアップル社の在庫を圧縮し、大幅な人
員整理に手をつけ、当時数百にも及んでいた大量の新規プロジェ
クトを一気に削減しています。これらの果断な処置でアップル社
の財務体質は確実に改善されていったのです。そのうえで、ジョ
ブズにアップル社の再建を委ねたのです。
しかし、当のジョブズは、恩人であるアメリオに感謝するどこ
ろか、その追い落としを仕掛けるのです。ジョブズは、アップル
社の取締役でデュポンの会長を兼務するエド・ウラードに接近し
味方に引き入れています。そして、取締役会でウラードにアメリ
オCEOがアップル社の業績向上に寄与していないことを発言さ
せ、辞任を迫ったのです。このクーデターは成功し、アメリオは
1997年に退社しています。アメリオを退任に追い込んだ取締
役会は、ジョブズにCEO就任を要請したのです。
しかし、ジョブズもしたたかです。彼は年俸を「1ドル」とし
さらにCEOの頭に「暫定」の文字を付けてみせたのです。年俸
を1ドルにしたのは、「お金が目的でCEOをやってるんじゃな
い。自分のつくった会社を救いたいだけである」ことをデモンス
トレーションし、「暫定CEO」としたのは、「ずっとCEOを
やるんじゃない。適任者が見つかるまでのつなぎである」ことを
アップル社の社員に訴えたのです。
これに関して、アップル社でマックOSのライセンス事業に携
わったこともある竹内一正氏は、アップル社の再生について次の
ように述べています。
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危機的状況にあった企業が、たかがトップの交代によって、ほ
んの数か月で復活するはずがない。本当の立役者は、在任中に
財務を改善した前CEOギル・アメリオなのだ。彼のまいた種
が芽を出そうとした絶妙のタイミングで、ジョブズがCEOを
引き継いだだけのことである。 ――竹内一正著の前掲書より
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――[クラウド・コンピューティング/02]
≪画像および関連情報≫
●スティーブ・ジョブズについて
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スティーブ・ジョブズはアメリカ合衆国の企業家。スティー
ブ・ウォズニアック、マイク・マークラらと共に商用パーソ
ナル・コンピュータで世界で初めて成功を収めたアップル社
の共同設立者の一人。また、そのカリスマ性の高さから、発
言や行動が常に注目を集め続ける人物である。ファーストネ
ームをスティーブンまたはステファン、ファミリーネームを
ジョブスとして表記されることもあるが、アップル日本法人
公式サイトではスティーブ・ジョブズと表記している。
――ウィキペディア
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アップル社/スティーブ・ジョブズ


