ナリオの第2幕の部分を書き出しておくことにします。
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第1幕ではサブプライム・ショックに対して何ら有効な手だて
をせず、危機を助長させたブッシュ前大統領と、うろたえたふ
りをしながら規制強化に乗り出したポールソン前財務長官が登
場した。彼らは「道化師」たるオバマ大統領を担ぎ出す下準備
をした。そして第2幕は、ヒーローを演じる道化師=オバマに
よる「デフォルト」宣言。その混乱による「国土安全保障ビジ
ネス」の展開と、怒り狂うアメリカ国民をなだめすかすための
「スケープゴート」探し。 ――原田武夫著
『計画破産国家/アメリカの罠』/講談社刊
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オバマ大統領は、まだ「デフォルト宣言」を行っていませんが
仮に新ドル紙幣を発行しても米国民に対しては旧ドル紙幣との交
換を行うので、直接的な損害はないはずです。しかし、経済の悪
化によって、職を失ったり、家を失ったりする人が増えている状
況では、当然のことながら「どうしてこんなことになったんだ」
という非難や批判が、最高責任者であるオバマ大統領自身に向け
られるのは必至です。
そういう怒り狂う米国民に対してオバマ大統領としては、歴代
政権のやってきたことに問題があるとしてその悪行を白日のもと
に晒すための「情報公開のための法案づくり」に全力を上げるは
ずであると原田氏は予測します。いわゆる、犯人探し、スケープ
ゴート探しです。ガス抜きといってもいいでしょう。
さて、第3幕はどうなるのでしょうか。これについて原田氏の
本から書き出します。
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その間に北米自由協定「NAFTA」推進派のヒラリー・クリ
ントン国務長官が北米大陸共通通貨「アメロ」を導入する第3
幕。その結果、アメリカは、あえて自らをエマージング・マー
ケットヘと落とし込むことで搾取すべきマーケットを「国外」
ではなく、「国内」、それもメキシコ、カナダと拡大した北米
大陸という「国内」に移していく。その時になって、第1幕で
打ったポールソン前財務長官の布石が活きてくる。排他的なア
メリカ内の地域勢力から牙を抜いておくという意味で。このシ
ナリオを描き、スポンサーでもあるのはあくまでもアメリカ系
「越境する投資主体」なのだ。 ――原田武夫著
『計画破産国家/アメリカの罠』/講談社刊
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この第3幕については既に述べているので、最後の第4幕につ
いて原田氏の主張をご紹介することにします。第4幕のヒロイン
はヒラリー・クリントン国務長官です。これは、原田氏によると
これらのシナリオはすべて予め計画されていたことなのです。
ここで「覇権」の維持――すなわち、他者に対して圧倒的な力
を用いることで、世界を支配下に置く方法のことですが、これに
は次の4つがあるのです。
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1.「武力」による覇権
2.「通貨」による覇権
3.「知財」による覇権
4.「資源」による覇権
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第1は『「武力」による覇権』です。
これは言うことを聞かないと、力でねじ伏せるという圧倒的な
武力によって覇権を維持する方法です。これによる覇権の典型は
米国であり、中国がそれに続いています。やはり覇権を維持しよ
うとするには、この「武力」による覇権を確保しておくことが、
残念ながら不可欠のようです。
第2は『「通貨」による覇権』です。
これは出回っているカネの大元を握って、いざとなればそれで
いうことを聞かせるという通貨による覇権の維持です。これと1
の「武力」による覇権が一緒になると、大きな力を発揮すること
になります。米国は現在までこれらの2つで覇権を維持してきて
いるのです。
第3は『「知財」による覇権』です。
ここで「知財」とは、知的財産権のことです。例えば、ある収
益を上げる方法を開発したとします。その仕組みを守るには法律
によって権利化することが必要になります。このような有形・無
形の「儲けの仕組み」を権利化したものが知的財産権です。
米国は技術の国であり、多くの先端技術の知的財産権を持って
います。これを有効に使うと、それは覇権に結び付くのです。米
国は今後もこれを使い、覇権の維持に結びつけるでしょう。
第4は『「資源」による覇権』です。
覇権国の条件のひとつに「資源を多く保有する」ことは不可欠
な条件です。しかし、原田氏がここでいう資源とは「原子力」の
ことなのです。なぜ、原子力なのかについては少し説明がいるの
で、最終回のEJ第2672号で説明します。
原田氏によると、ヒラリー・クリントン国務長官の役割は、こ
れらの覇権の4つの条件のうち「知財」による覇権と「資源」に
よる覇権――原子力の2つをフルに使って覇権の維持を目指すこ
とであるというのです。原田氏は次のようにいっています。
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そのカギを握るのはヒラリー・クリントンだ。彼女の真の役割
は「アメロ」導入だけではない。むしろ、新たなアメリカ覇権
の道筋をつけることにある。だからこそ彼女は、このシナリオ
における「ヒロイン」となったのだ。新たなるアメリカ覇権へ
の足掛りは2つ。第1は「知的財産権」、第2に「原子力」で
ある。 ――原田氏の前掲書より
――――――――― ――[オバマの正体/61]
≪画像および関連情報≫
●「知財」――知的財産権について
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知的財産権は、有体物に対して個別に認められる財産権とは
異なり、無形のもの、特に思索による成果・業績を認め、そ
の表現や技術などの功績と権益を保証するために与えられる
財産権のことである。知的所有権とも呼ばれる。知的財産と
は、知的財産権を含むより広い概念であり、その性質から、
「知的創作物(産業上の創作・文化的な創作・生物資源にお
ける創作)」と「営業上の標識(商標・商号等の識別情報・
イメージ等を含む商品形態)」および、「それ以外の営業上
・技術上のノウハウなど有用な情報」の三つに大別される。
――ウィキペディア
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クリントン国務長官