テーマは13日で終了します。今後米国は一体どうなっていくの
でしょうか。
原田武夫氏によると、米国のシナリオは次のようになると予測
しています。
第1幕の主役は、ブッシュ前大統領とポールソン前財務長官で
す。彼らは空いてしまった大きな穴をいかに小さく見せるかに腐
心し、緩慢に対処して事態を深刻化させます。これについては既
に述べた通りです。
第2幕の主役はオバマ大統領です。彼は大統領選では敵として
戦ったはずのヒラリー・クリントン氏を国務長官という要職に就
けるのです。ここがポイントです。クリントン国務長官の役割は
米国、カナダ、メキシコの北米共同体を作り上げることです。
このクリントン国務長官の役割について原田氏は次のように述
べています。
―――――――――――――――――――――――――――――
アメリカはこれまでの国家運営という「ビジネス・モデル」に
ついて明らかな行き詰まりを見せている。(中略)そうである
時、アメリカ勢が資本主義の大原則に則ってできることはただ
一つ。「国外」という過去100年近くにわたって築き上げて
きたビジネス・モデルが展開されたグラウンドを壊し、捨て去
る一方で、一度打ち捨てたはずの「国内」という古くて新しい
グラウンドで展開すべき新たなビジネス・モデルへと回帰する
ことなのだ。 ――原田武夫著
『計画破産国家/アメリカの罠』/講談社刊
―――――――――――――――――――――――――――――
それではオバマ大統領の役割は何でしょうか。それはデフォル
ト宣言をすることである――オバマ大統領の仕事はまさにこれで
あると原田氏はいうのです。
「デフォルト宣言」といってもストレートに宣言するのではな
いのです。そんなことをしたら、世界中がパニックに陥ってしま
うでしょう。新ドル紙幣――部分兌換紙幣を発行すると同時に金
本位制に復帰し、巧妙かつ精緻にデフォルトを実施するのです。
どのように「デフォルト宣言」が行われるかについては、前々
回のテーマ「大恐慌後の世界はどのようになっていくか」で既に
述べているので、次のURLを参照してください。
―――――――――――――――――――――――――――――
●2009年03月30日/EJ第2540号
http://electronic-journal.seesaa.net/article/116423009.html
●2009年03月31日/EJ第2541号
http://electronic-journal.seesaa.net/article/116472819.html
―――――――――――――――――――――――――――――
しかし、そのさい大損害を被る大国として中国と日本がありま
すが、米国は中国には事前に手を打っておくでしょう。中国の損
害分は全額負担する、と。しかし、おそらく日本は一顧だにされ
ないはずです。どうしてそうなるのでしょうか。
もし、中国に手を打たないでデフォルトなどをやったら戦争が
避けられなくなりますが、日本とはそういうことには絶対になら
ないからです。日本は何でもいうことを聞くからです。
既出の国際ジャーナリストの浜田和幸氏は、今回の金融危機も
米国の出来レースではないかと疑問を投げかけており、米国が従
来のドルに代わる新通貨を投入するさいは中国以外の国には一切
の配慮を払わないであろうと述べています。原田武夫氏の主張と
ほとんど同じであることは注目に値します。
―――――――――――――――――――――――――――――
アメリカという国は状況次第でどんなことでもやりかねない。
ニクソン大統領の声明だけで、昨日までできたドルと金の交換
をチャラにしてしまったことを思えば、この「アメロ」も単な
る構想ではすまないのである。すでに見てきたように、アメリ
カの国家財政は破綻している。だから、今回の金融パニックも
新しい体制に向けての「起死回生の出来レース」という側面も
否定できない。将来の復活を賭けて、自滅を演出したのかもし
れない。この事態を重く見たロシアは「アメリカ財務省が新通
貨アメロを最大のドル保有国の中国だけには事前に搬送した」
という情報を明らかにしている。保有額第2位の日本や第3位
のロシアには一言の断りもない。このロシア情報が正しければ
アメリカと中国は21世紀の新たな通貨ゲームを勝ち抜くため
水面下で手を結んだということになる。 ――浜田和幸著
『大恐慌以後の世界/多極化かアメリカ復活か』/光文社刊
―――――――――――――――――――――――――――――
鳩山首相が初デビューした2009年9月のG20――鳩山首
相は「G20だけでなく、G8も必要だ」と主張したのですが、
受け入れられなかったのです。
重要なのは、G8の場合、日本はアジアの代表になりますが、
G20になると、日本はアジアの一国でしかないのです。もっと
も、世界第2位の経済大国の地位を保つことができれば、G20
でも、日本はアジアの代表になりえますが、その座も中国に奪わ
れるとなると、G20では中国が事実上のアジアの代表――軍事
力でも経済力でも文字通りダントツの代表になるのです。
ところで、「チメリカ」という言葉をご存知ですか。
かつて未来学者のトフラー氏は、日本と米国の関係を「ジャメ
リカ」と呼んだことがあるのです。いうまでもなく、ジャメリカ
とは「世界で最も重要な2国間関係」という意味です。
しかし、現在では「チメリカ」――すなわち、G2、中国と米
国のことであり、米国では中国との2国間関係を「世界で最も重
要な2国間関係」と呼ぶようになっているのです。日本の新聞な
どは一切伝えないので、知らないのは日本人だけです。
世界は多極化して米国の影響力は落ちる――このように予測す
る人は多いですが、米国は想像を絶する逆転劇を演ずる可能性が
あるのです。 ――[オバマの正体/60]
≪画像および関連情報≫
●新型インフルエンザとアメロ構想/浜田和幸氏
―――――――――――――――――――――――――――
最近、アメロ構想が絵空事ではないと思わせるある出来事が
あった。2009年、メキシコで発生した「豚インフルエン
ザ」(新型インフルエンザ)の影響で、アメリカとメキシコ
の国境を封鎖し、検疫体制を強化すべきとの意見が出た。し
かし、オバマ大統領は「その必要はない。馬が逃げ出した後
で、馬小屋に柵をしても意味がない」と、それこそ意味不明
の表現で反対した。NAFTAには国境がいらないというこ
となのだろうか?いずれにせよアメリカは、中国の力を利用
することで、米中2国による新たな世界秩序の構築を目指し
ていると言えるだろう。 ――浜田和幸著
『オバマの仮面を剥ぐ』/光文社刊
―――――――――――――――――――――――――――
チメリカの関係