2009年10月06日

●「米国、カナダ、メキシコ地域統合」(EJ第2668号)

 米国、メキシコ、カナダ――これらの3国が地域統合すると何
が起こるのでしょうか。原田武夫氏によると、米国は、欧州にお
ける共通通貨「ユーロ」をめぐり、ドイツがとった戦略をビジネ
スモデルとして考えているのではないかといっています。
 ユーロが導入されたのは1999年1月のことです。それまで
欧州では当然のことながらそれぞれの国がそれぞれの通貨を持っ
ていたのです。ドイツならマルク、フランスならフラン、オラン
ダならギルダーというようにです。
 1990年10月3日のこと、ドイツは悲願のドイツ統一を成
し遂げています。しかし、これはドイツという国にとってきわめ
てリスキーな試みであったといえます。どうしてかというと、当
時安定性のある輝かしい業績を誇る経済力を持つ先進国旧西ドイ
ツ、かたや比べものにならないほど経済的に荒廃した旧東ドイツ
――その西ドイツが東ドイツを抱え込むということは、西ドイツ
経済をも荒廃させる恐れがあったからです。
 事実、1990年に約50億ドルの黒字であったドイツの経常
収支は翌年には約26億ドルの赤字に転落しています。そしてド
イツの経常収支が再び黒字に戻るのは、10年後の2000年に
なってからのことなのです。
 西ドイツは、ドイツの国外にいる者に積極的にマルク建て国債
を売ると同時に金融引き締めを行うことで長期金利を上昇させる
――そういう政策をとったのです。これに関して原田武夫氏は、
次のように述べています。
―――――――――――――――――――――――――――――
 ここで注意して見ておきたいことが一つある。それは、言い方
 は悪いが、ドイツ統一とは後から振り返ってみると結局のとこ
 ろ、先進国であった旧西ドイツがさらなる繁栄をとげるべく、
 旧東ドイツを経済的な植民地、しかも無関税・障壁なしで利用
 できるエマージング・マーケットとして使い倒したという側面
 が否めないということである。       ――原田武夫著
         『計画破産国家/アメリカの罠』/講談社刊
―――――――――――――――――――――――――――――
 ここで重要なのは、西ドイツが「旧東ドイツを経済的な植民地
しかも無関税・障壁なしで利用できるエマージング・マーケット
として使い倒したという側面」という部分です。エマージング・
マーケットとは何でしょうか。
 エマージングマーケットとは近年急速に成長し、貿易や投資の
対象として有望な国の市場――マーケットのことです。エマージ
ングというのは英語の「emerging」からきています。「emerge」
という動詞には、「浮かび上がる」、「台頭する」という意味が
あります。エマージング・マーケットは、新興諸国の市場という
意味になります。エマージング・アジアというと、アジアの新興
諸国という意味になりますし、エマージング・カントリーという
と、世界中の新興諸国を指すのです。
 先進国がある程度経済成長を遂げると、それ以上大きく経済成
長させることが困難になります。そういう場合、先進国はエマー
ジング・マーケットになる地域を見つけて、これを統合していく
過程で積極的にビジネスを展開し、富を集めて、それに対する評
価として自らの国の通貨の価値を上げるというやり方をとるので
す。西ドイツは東ドイツを無関税・障壁なしで利用できるエマー
ジング・マーケットとしてとらえ、10年以上かかったものの、
見事に経済成長を成し遂げたのです。
 ドイツはその後、EUという大きな舞台において、同じ手法を
使って経済発展を遂げています。EUは2004年に第5次拡大
を行っていますが、そのさいに新規加盟をした10ヶ国――チェ
コ、ハンガリー、ポーランド、バルト3国、スロヴァキア、スロ
ヴェニア、マルタ、キプロス――これらの大半は、ドイツの近隣
の国であり、ドイツにとってはエマージング・マーケットそのも
のにあたり、ドイツは大いに稼いだのです。
 米国は、このドイツの成功を参考にして、地域統合を行おうと
していると考えられるのです。実は、ドイツの成功がだんだんわ
かってきたのが、1990年代の半ばなのですが、ちょうどその
1994年からNAFTAが発効しているのです。
 さて、米国、メキシコ、カナダ3国の特徴を一口でいうと、次
のようになります。
―――――――――――――――――――――――――――――
    アメリカ ・・・・・ 世界有数の技術大国
    メキシコ ・・・・・ 低廉な労働力抱える
    カ ナ ダ ・・・・・ 世界有数の資源大国
―――――――――――――――――――――――――――――
 米国は、カナダおよびメキシコ間の国境が事実上撤廃されるこ
とになるので、そこに米国流資本主義を全面展開することが可能
になります。
 通貨の面からいうと、米国は、米国と比べて明らかに国力の劣
るカナダとメキシコを抱え込むことになるので、仮に新通貨「ア
メロ」を発行したとしても、他の主要通貨――日本円、人民元、
ユーロなど――との関係では大幅に低くなることは確かです。し
かし、これによって、3ヶ国から域外、とりわけ中国に対して輸
出するさい、きわめて条件が有利になるのです。これについての
原田氏のコメントです。
―――――――――――――――――――――――――――――
 最終的には域外への輸出ドライブによって成長が確約されたの
 も同然な北米3ヶ国の共通通貨「アメロ」を支える根拠は何か
 といえば、従来のような金(ゴールド)だけではなく、域内で
 とくに産出される商品(コモディティー)、具体的に「金(ゴ
 ールド/カナダ)」、「銀(メキシコ)」、「各種穀物(アメ
 リカ)」などを一定の割合で組み合わせたバスケットとなる可
 能性が高い。               ――原田武夫著
         『計画破産国家/アメリカの罠』/講談社刊
―――――――――――――   ――[オバマの正体/58]


≪画像および関連情報≫
 ●英国は統一を望まず/INTEROGUE
  ―――――――――――――――――――――――――――
  9月10日と11付英タイムズ紙は、1989年のベルリン
  の壁開放直前の英ソ首脳(サッチャーとゴルバチョフ)の非
  公式のやり取りを伝える旧ソ連秘密資料について、マイケル
  ・ビニオン記者などによる一連の記事を掲載した。それによ
  ると、当時の英米仏首脳は一致して壁(ドイツ分断)の維持
  を望みソ連の軍事介入さえ容認(というより期待)して、ゴ
  ルバチョフ書記長が慎重に行動するよう説得を試みていた。
  20年目にして伝えられる真実だ。国際関係専門家にとって
  は、さして驚きではないのかもしれないが、公式には絶対に
  聞けない率直な発言が、冷戦終結へのサッチャーの懸念、ゴ
  ルバチョフの楽観を示しておもしろい。歴史というものを考
  えるのによい教材となるだろう。
http://www.intelogue.com/2009/09/12/thatcher-berlin-wall/
  ―――――――――――――――――――――――――――

ベルリンの壁.jpg
ベルリンの壁
posted by 平野 浩 at 04:18| Comment(0) | TrackBack(0) | オバマの正体 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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