ことは事実です。この巨額の赤字を後世に先送りするべきでない
ということは確かです。何とか解決する必要がある――そのため
にはどのような方法があるのでしょうか。
財政赤字を解決する方法には次の3つがあるのですが、実際に
は、3つを組み合わせてやることになります。
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1.財政支出削減
2.大増税の実施
3.経済成長政策
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第1の手段は「財政支出削減」です。
具体的には、徹底的な緊縮財政をひき、財政支出を抑制するこ
とです。家計の経済でいうなら、家計の赤字を解消するには無駄
な支出をしないようにし、現在の収入にプラスして別の収入が得
られるよう工夫して、少しでも赤字を埋める努力をする――とい
うことになると思います。
しかし、国の場合は家計のそれとは違うのです。デフレの下で
緊縮財政を行うと、物価は下がり、名目GDPは減額し、その結
果税収が減るので、国債を発行せざるを得なくなって、かえって
財政赤字を増やしてしまうことになります。
小泉政権は発足以来緊縮財政をとっています。国民経済が縮小
しようと、企業倒産と失業がいくら増えようと、デフレ不況がど
んなに深刻化しようと、ただひとすら緊縮財政を続けてきたので
す。その結果、10兆円税収を減らしてしまったのです。
第2の手段は「大増税の実施」です。
税収を増やすには国民から徴収する税額を多くする――きわめ
て単純なというか直接的な方法です。しかし、増税だけで巨額の
赤字を解消できるものではありません。狙いは、何はともあれ、
基礎的財政収支の均衡化か黒字化です。
財政の基礎的財政収支――プライマリーバランス(PB)とい
うのは、ネットの歳入――国債による収入を除いた収入とネット
の歳出――国債の元利払いを除いた支出のことをいいます。
現政府の財政目標は、「2O12年度にPBを黒字化する」と
いうものです。PBは2001年度から赤字が拡大し、2005
年には赤字は2O兆円を超えてしまっているのです。
しかし、税収は減る一方であり、このPBの財政赤字を解消す
るために、2012年までに20兆円を超す赤字を解消するには
大増税を実施するしかないという結論に達しているのです。
第3の手段は「経済成長政策」です。
財政の基本は、国の予算としての必要な支出を的確に計算して
それに見合う収入を確保することにあります。「量出制入――支
出を量って入りを制す」です。このさい一番重要なことは「いか
にして税収を伸ばすか」なのです。税収を増やすには、経済を活
性化させ、名目GDP成長率を上げることです。
日本の予算規模は、その経済規模――名目GDPに比べて小さ
すぎるのです。経済規模にぜんぜん見合っていないのです。19
97年を基点として財政支出の伸び率をみると、日本は米国、英
国、ドイツと比較して圧倒的に少ないのです。日本の予算規模は
100兆円程度が適当な規模であるのに、80兆円規模にとどま
っているのです。しかし、この経済成長政策論はケインズ政策論
として否定する経済学者が少なくないのです。
財政赤字を解消する財政再建を目指して小泉政権は、政財政構
造改革に取り組み、5年間連続で上記1の手段の緊縮財政――主
として投資関連支出の削減を展開してきたのです。その結果、財
政赤字は拡大し、この間、名目GDP成長率はマイナス――20
00年度の名目GDP513兆円、2004年度は503兆円と
なって、税収が激減しています。一体何のための政財政構造改革
だったのでしょうか。
基礎的財政収支/PBを2012年度に均衡させる計画は、税
収は限られており、今後大きく伸びることはないということを前
提として、現在の税収をベースとして余計なものと政府が考えて
いる支出をすべてカットするという発想なのです。
税収は今後大きくは伸びないという発想は経済を生き物として
扱っておらず、問題があります。経済は生き物であり、適切な手
を打てば、成長発展させることができるのです。
経済を活性化させる適切なる財政政策によって経済を発展させ
企業収益を増大させるのです。そして、そこから税をとるという
発想になぜ立てないのでしょうか。
菊池英博教授は、1997年度の橋本財政改革において、一時
的にPBが回復した例を上げて、これは危険な発想であると述べ
ています。
1995年度のPBはマイナス9.2兆円だったのですが、橋
本財政改革によって1997年度にはマイナス2.2兆円まで縮
小しています。デフレの下で緊縮財政と大増税を行ったのですか
ら、PBが一時的に縮小するのは当然のことであり、これは成果
でも何でもないのです。
しかし、その結果として金融恐慌が起こり、経済を破綻させて
しまったのです。そして、1999年度のPBは実に18.3兆
円にまでに拡大したのです。これでは、何をやっているのか、わ
からないではありませんか。
森田実氏という政治評論家がいます。彼は小泉政権の政策に批
判的であるせいか、最近ほとんどテレビで姿を見ることがなくな
っています。しかし、ホリエモン事件を契機に森田実氏が最近注
目を浴びるようになっています。
森田氏は『小泉政治全面批判』
表わし、小泉政権を徹底的に批判しています。森田氏は『公共事
業必要論』
を展開しています。彼はいわゆるケインジアンであり、古い政策
論者であると誤解されています。 ・・・[日本経済12]
≪画像および関連情報≫
・『小泉政治全面批判』
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この5年間、私は終始一貫、小泉政治はペテンだと批判して
きた。それを一冊にまとめたのですが、ブッシュ米国と創価
学会、それに広告代理店・大マスコミ連合に支えられてきた
小泉政権は5年間も続いてしまった。でも、ライブドア事件
で完全に化けの皮がはがれました。小泉政権の終わりの始ま
りです。 ――森田実
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