2009年10月02日

●「米国金融資本の2つの勢力」(EJ第2666号)

 米国の金融資本には、対照的な2つの勢力がある――原田武夫
氏はこう指摘しています。これら2つの勢力は、全く違う価値観
を持ち、対立してきた歴史を持つのです。
 これらは、「リベラル」と「保守」に分けることもできますが
厳密には次の2つのグループになるのです。
―――――――――――――――――――――――――――――
 1.中世キリスト教にも通じる「地域主義」「共同体主義」を
   信奉する、真面目で熱心なキリスト教信者 ・・・ 銀
 2.プロテスタン的な宗教観を持ち、国外に打って出る帝国主
   義的でプロフェッショナルな経営管理論者 ・・・ 金
―――――――――――――――――――――――――――――
 1のグループは、いわゆるキリスト教原理主義者であり、富を
自己増殖させるマシーンである「銀行」を快く思っておらず、反
銀行論の立場を取るのです。
 米国は建国初期において、地域的金融機関が隣国・メキシコで
豊富に採掘される「銀」を地域通貨として使ってきた歴史がある
ので、このグループは「銀」と呼ばれるのです。
 2のグループは、1のグループとは対照的な考え方を持ってい
ます。このグループは、ジャン・カルヴァンに由来する教義――
神から与えられた職業を営むなかで利殖を行うのは信仰心の現れ
であるとして、よりプロフェッショナルな経営を行い、米国全体
が経済を拡大し、富を蓄積すべきであると考えるのです。
 このグループは、地域通貨としての「銀」ではなく、国際通貨
としての「金」に高い価値を見出すところから、「金」のグルー
プと呼ばれるのです。
 これに関して、米国を世界最強の金融王国に押し上げた原動力
について原田氏は次のように述べています。
―――――――――――――――――――――――――――――
 いうなればアメリカは、銀を地域通貨として「国内」に基盤を
 持つ地域銀行の勢力(利殖をよしとせず反銀行論的な立場)と
 国際通貨である金本位制を促進して、「国外」へと打って出た
 「越境する投資主体」の勢力(プロフェッショナル経営管理論
 を駆使して、できるだけ権益を広げ、富を蓄積する立場)とい
 う、まったく相反する価値観が常にぶつかり合い、激しい闘争
 を繰り広げてきた国なのである。それがアメリカを世界最強の
 金融立国へと押し上げてきた原動力でもあったのだ。
                      ――原田武夫著
        『計画破産三国家/アメリカの罠』/講談社刊
―――――――――――――――――――――――――――――
 「越境する投資主体」、すなわち、金融マフィアが世界各地に
進出し、米国の権益を拡大して巨額の富を収奪する――しかし、
ときとして致命的な失敗をします。そうすると、排他的で国内に
基盤を持つ地域銀行が台頭し、内向きの外交方針――モンロー主
義に転換するのです。「金」から「銀」への転換です。
 今回のサブプライム・ショックは、まさにこの転換に該当する
といえます。共和党から民主党への政権交代もこの転換と無関係
ではないのです。米国はこのように価値観の異なる2つのグルー
プは、何かというとつねにぶつかり合い、激しい闘争を繰り広げ
その結果として米国を世界最強の金融王国に押し上げる原動力に
なったのです。
 さて米国の「計画破産」のシナリオの第一幕の出演者は、ブッ
シュ前大統領と元ゴールドマン・サックスのCEOであったポー
ルソン前財務長官です。原田氏によると、ブッシュ前大統領の役
回りは、「目の前にある危機にあえて緩慢に対処することで、よ
り深刻化させることあった」としています。確かにブッシュ前大
統領の動きは緩慢であったし、事態は深刻化しています。
 これに対してポールソン前財務長官は、古巣であるゴールドマ
ン・サックスをはじめとする「越境する投資主体」が株価の下落
局面でしっかりと稼げるよう金融株に対する空売り規制を解除す
るとともに、一方で「金融セクターに対する監督・規制の強化」
を打ち出しているのです。
 もともとポールソン前財務長官は、自由主義的な金融政策を推
進する人物ですが、そのブレーキになるような「監督・規制の強
化」を打ち出したのです。もし、本当に金融セクターへの監督・
規制を強化すると、「越境する投資主体」の手足を縛ることにも
なるのです。どうして、こんな方針を打ち出したのでしょうか。
 原田氏は、監督・規制の強化は、確かに「越境する投資主体」
の手足を縛るが、それ以上にこれから台頭するであろう地域銀行
を抑えることにつながるとして、ポールソン前財務長官の動きを
次のように述べています。
―――――――――――――――――――――――――――――
 ポールソン前財務長官の行動は、一方で「反銀行論」の首が草
 の根の民主主義の伝統と共にもたげるのを未然に防ぎながら、
 他方でニューヨークを牛耳るアメリカ系国際金融資本からして
 依然、厄介な存在である地域的金融機関の淘汰を一気に進める
 という実利があつたのだ。そして20世紀初頭における展開と
 のアナロジーでいえば、そこには明らかにアメリカ系「越境す
 る投資主体」たちがこれまでのビジネス・モデルを食い散らか
 し、次のモデル、別のターゲットヘと移りつつあることを示し
 ているに違いないのである。        ――原田武夫著
        『計画破産三国家/アメリカの罠』/講談社刊
―――――――――――――――――――――――――――――
 確かにこのシナリオの第一幕の出演者であるブッシュとポール
ソン――とても水際立った処置とはいえなかっのです。金融機関
が抱える不良債権を買い取るために用意されたTARPの資金を
「ビックスリー」に使うなど、かなり場当たり的な対応だったこ
とは確かです。さらにポールソン前財務長官にいたっては、昨年
末の時点で「米政府は金融危機に対応する手段を十分持ち合わせ
ていない」などと発言して顰蹙を買ったのです。要するに緩慢に
対応したのです。        ――[オバマの正体/56]


≪画像および関連情報≫
 ●モンロー主義とは何か
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  モンロー主義は、米国ががヨーロッパ諸国に対して、アメリ
  カ大陸とヨーロッパ大陸間の相互不干渉を提唱したことを指
  す。第5代米国大統領ジェームス・モンローが、1823年
  に議会への7番目の年次教書演説で発表した。モンロー宣言
  と訳されることもあるが、実際に何らかの宣言があったわけ
  ではないので、モンロー教書と表記されることも多い。この
  教書で示された外交姿勢がその後のアメリカ外交の基本方針
  となった。原案は国務長官・ジョン・クィンシー・アダムズ
  が起草した。            ――ウィキペディア
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ジャン・カルヴァン.jpg
ジャン・カルヴァン
posted by 平野 浩 at 04:14| Comment(0) | TrackBack(0) | オバマの正体 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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