2009年10月01日

●「米国は「計画破産国家」である」(EJ第2665号)

 国際戦略情報研究所代表の原田武夫氏は、2008年にサブプ
ライム危機が起こって以来の米国の対応について自著においてき
わめて興味深いことを述べています。
 原田氏は、米国はあるシナリオにそってとんでもない計画を進
めているといっています。そのシナリオの予告編として次のよう
なシーンを描いてみせます。
―――――――――――――――――――――――――――――
 少年たちが公園で立ちすくんでいる。彼らは調子に乗って砂場
 に大きな穴を掘ってしまったのだ。どうしたらいいんだろう?
 少年たちは困り果てている。しかし、そうこうしている間にも
 どんどんと崩れて落ち、もはや穴そのものを埋められなくなっ
 てしまったのだ。そこで母親を恐れるこの子供の一人、率先し
 て穴を掘ったガキ大将が真っ先に考えるのはまず、仮に母親が
 怒るとしてもパッと見てその穴があたかも小さいかのように見
 せかけることができるならば、母親の怒りも最小限に抑えられ
 るに違いないということだった。(一部略)ガキ大将は隣にた
 たずむ賢そうな少年に相談する。少年は仕方なさそうに、こう
 呟く。「ともかく第一には開けてしまった穴をいかにして小さ
 く見せるかだし、第二には、小さくした穴を埋める共犯として
 誰を仕立て上げるか、それしかやりようはないよ」。ガキ大将
 はうなずく。               ――原田武夫著
        『計画破産三国家/アメリカの罠』/講談社刊
―――――――――――――――――――――――――――――
 原田氏は、このなかのガキ大将はブッシュ前大統領、賢そうな
少年はポールソン前財務長官であるというのです。まず、空いて
しまった大きな穴をいかに小さく見せるか――これについては、
絶対に真実をいわないことによって達成できます。そんなことは
可能なのでしょうか。
 サブプライム危機によってウォール街の金融マーケット――具
体的には問題ある債券を売り捌いた金融機関(ファンドや投資銀
行など)を指すが、原田氏はこれを「越境する投資主体」と呼ん
でいる――が背負い込んだ巨大な損失をすべて公表すれば、つま
り、空いてしまった穴をありのままに見せれば、世界に大きな衝
撃を与えることになりますが、対応策も取れるので、早く解決で
きるのです。
 しかし、米国の立てたシナリオは、それを米国の財務会計基準
(US・GAAP)を利用して隠すことだったのです。どうして
そんなことができるのでしょうか。
 原田氏のいう「越境する投資主体」は、自らが集めた資金を多
くの小型の投資主体にまるで小遣いを渡すようにして配り、運用
されるのです。これらの子分のような会社を「特別目的会社」と
いうのです。
 これらの特別目的会社のすべてが運用に成功するわけではなく
当然失敗するところも出てきます。しかし、米国の財務会計基準
では、それらの特別目的会社の損失を連結決算では公表しなくて
もいいことになっているのです。原田氏によると、あのゴールド
マン・サックスは、決算を公表するプレスリリースに次の断りを
入れているのです。
―――――――――――――――――――――――――――――
 管理下にある資産とは当社が管理する諸ファンドに対する投資
 を含んでいません。            ――原田武夫著
        『計画破産三国家/アメリカの罠』/講談社刊
―――――――――――――――――――――――――――――
 これがあるから、あれほどの巨大損失でありながら、「減収・
減益、それでも黒字決算」という不可解なことになり、実態はま
るでわからないままなのです。これが「空いてしまった穴を小さ
く見せる」仕掛けなのです。
 その一方で、ポールソン前財務長官は、「米国に必要なのは監
督と規制だ」と述べているのです。そういうウラでポールソン前
財務長官は、2008年10月9日に金融株に対する空売り規制
を解除しているのです。いわゆる「越境する投資主体」が株価が
暴落している市場から儲けることができるよう手を打っているの
です。これは、日本が10月27日にその(空売り規制の)強化
を決定しているのとは正反対の措置であるといえます。
 ところで、株価下落局面でなぜ「越境する投資主体」は儲ける
ことができるのでしょうか。
 その手法のひとつが株の空売りなのです。空売りとはあらかじ
め入れておいた担保金と引き換えに、証券会社から株を借りて売
却し、その株が値下がりした時点で買い戻すことで利益を得る投
資方法をいいます。
 例を上げて説明します。現在、10万円のA社の株を借り、そ
の場で売却して10万円を手にします。その後、A社の株が9万
円に下がった時点で買い戻し、証券会社に返すと、差し引き1万
円の利益を手にすることができます。この場合、投資家は1円も
現金を使わないで1万円儲けることができるのです。もちろん、
この場合、株を貸し出した証券会社には手数料が入ることになっ
ており、1万円が丸ごと儲けになるわけではありません。
 株の空売りは、株価が下り続けるという状況下で利益を上げる
投資手法ですが、下がらないときは、徹底的に売って売りまくる
のです。そうすると、株価下落局面になるのです。ウォール街の
金融セクターはこうして儲かる状況を作り出すのです。
 しかし、これが可能なのは、マーケットに空売り規制がかけら
れていないという条件が必要です。そこで、米国では規制を撤廃
して投資主体が儲けられるよう手を打ったのです。
 財政的な面から見るなら、米国の復活・再生はきわめて困難と
いわざるを得ないといえます。累積財政赤字総額は、実に11兆
1000億ドル(1110兆円)という天文学的数字なのです。
この数字を見る限り、米国は既に財政破綻をしているといっても
過言ではないでしょう。しかし、原田氏は、米国は「計画破産」
を企てているというのです。   ――[オバマの正体/55]


≪画像および関連情報≫
 ●「空売り」とは何か
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  空売りとは、株券を借りて売ってしまう取引のこと。空売り
  の場合は、買戻しをして決済したところで一連の売買が完結
  する。空売りした水準よりも株価が下落して、安い水準で買
  い戻しできれば利益が得られるし、逆に、空売りした水準よ
  りも株価が上昇してしまい、高い水準で買い戻しすることに
  なれば、その分損失になってしまう。空売りは信用取引の一
  種であり、元手の約3倍程度の金額まで売り建てすることが
  可能である。ただし、最悪の場合には、株価がどこまでも上
  昇していく可能性があり、損失額が青天井になってしまうこ
  ともある。     ――オール・アバウトマネー辞典より
  ―――――――――――――――――――――――――――

原田武夫氏の本.jpg
原田武夫氏の本
posted by 平野 浩 at 04:16| Comment(0) | TrackBack(0) | オバマの正体 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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