で開催される上海万博の米国のパビリオン建設がはじまっていな
いことを伝えました。その後どうなったのでしょうか。
2009年7月17日に、ロック商務長官などが出席して、一
応起工式は行われたようです。パビリオンは米国の2030年の
未来都市をテーマにして建設する予定ですが、建設資金はなお、
2000万ドル不足しているということです。
米国は現在、とにかくお金がないのです。お金が回っていない
ことを示しています。米国の経済の状況については楽観論から悲
観論にいたるまで、さまざまな意見があります。
新聞などでは悲観論は抑えられ、楽観論が若干セーブして報道
されています。上海万博の米パビリオンが着工していないという
ようなニュースは報道されないのです。
今までFRBは何をしてきたのでしょうか。
バーナンキFRB議長は、これまで金融を安定させようとして
いろいろな手――バラマキを行ってきていますが、これらの巨額
の資金は、ほとんどは不良債権の闇に吸い込まれてしまっている
というのです。
IMFの試算によると、米国の不良債権の額は金融危機突入時
から次のように増え続けているのです。
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≪米国の不良債権≫ IMF試算
2008年10月 ・・・・・ 1.4 兆ドル
2009年 1月 ・・・・・ 2.2 兆ドル
2009年 4月 ・・・・・ 3.1 兆ドル
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具体的には何をやっているのかというと、財務省が印刷した財
務省証券/米国債をFRBが買い取ってドル紙幣を米政府に渡し
政府はそのドルを金融機関や企業の救済に回すということの繰り
返しなのです。
ここで、添付ファイルのグラフを見ていただきたいのです。こ
れは、米連邦財政の推移を示したグラフで、議会予算局が作成し
たものです。これを見ると、悲惨な状況になっているのです。
米国の財政赤字は、2009年1月に発表した時点で1兆18
00億ドル/GDP比で8.3 %という見通しだったのです。推
定値では1兆3000億ドルですから、かなり下回ると思われて
いたのです。
しかし、その後景気対策法に減税と財政支出が盛り込まれた関
係で、2兆ドル――200兆円に達することは間違いないと思わ
れます。この1年間に2兆ドルという数字――グラフを見てもわ
かるように、とんでもない数字なのです。
1年間に2兆ドルは、1日ごとに55億ドル、1時間ごとに2
億2800万ドル、1分ごとに381万ドル、1秒ごとに6万ド
ルの赤字が増えていっていることを意味するのです。
別な数字もあります。これは、米国の民間調査機関が調べたも
のですが、驚くべきデータです。
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★戦前から戦後にかけて米国が諸政策に支出した総金額
のインフレ換算
・・・・・・・・・・・・・・・ 3925億ドル
★サププライム・ショック以降の「公的救済」を目的と
する政府支出額(2008年11月現在)
・・・・・・・・・・・・・・・ 4616億ドル
――原田武夫著/講談社刊
『計画破算国家/アメリカの罠』より
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昨年の11月現在、サブプライム・ショックに対応して米政府
が支出した4616億ドル(2008年11月現在)という金額
は、戦前から戦後にかけて米国が繰り広げてきたさまざまな政策
に支出した総金額をインフレ換算した金額3925億ドルより多
いということを示しているのです。
戦前から戦後にかけての米政府の諸施策とは、マーシャルプラ
ン、ニューディール政策、ルイジアナ購入、アポロ月計画、S&
L危機、朝鮮戦争、ベトナム戦争、イラク戦争などを含む総額に
当たるのです。
なにしろ米国という国は、1940年以来の69年間で、12
年間を除く57年間赤字を続けてきたのです。その赤字の総額た
るや、11兆1000億ドル――1110兆円という天文学的数
値になるのです。さらに、連邦政府だけではなく、全米50州の
うちのほとんどの州が赤字なのです。
こういう米経済の実態に対して反論する人は実は少なくないの
です。2009年4月以降ダウは8000ドル台を回復し、9月
に入っても9800ドル台にあり、「立ち直る兆しが出ている」
という専門家もいるほどです。
米国債10年物も安定して取引されており、ドルも世界の他の
通貨に比べて安定している――これをもって米経済は底固いとい
う人もいます。
しかし、浜田和幸氏は、少なくとも財政面から見る限り、米国
が今回の金融危機、世界同時不況から立ち直るのは困難であり、
米経済の現況について次のように述べています。
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なぜ、ドルも米国債も依然として強いのだろうか?それは、歴
史的に見て、覇権国が覇権を失う最後の段階の一時的な現象と
見るべきだろう。世界の誰もがアメリカ崩壊を望まないので、
ドルも米国債も買い支えているのが、いまの状態と見るべきな
のである。しかし、必ず「2番底」は到来し、アメリカの凋落
が避けられないときが迫っている。
――浜田和幸著、『オバマの仮面を剥ぐ』/光文社刊
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――[オバマの正体/53]
≪画像および関連情報≫
●2010年米国経済は再生するのか/ブログ
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今週の月曜日、米FRB議長のバーナンキはCBSの録画イ
ンタビューで、米のリセッション(景気後退)は09年後半
まで続き10年から景気回復に向かうと答えておりました。
本当にそうなのだろうか?????疑問符がいくつもついて
にわかには信じられないというのが、私の思うところです。
いずれ米経済は再生するときがくると思いますが、それは1
年2年ではないと、私は思っています。もとより私自身は、
経済の専門家でもなければ、アナリストでもありません。経
済問題は素人同然のレベルしか持ち合わせておりませんが、
その素人の目から見て、経済界をリードする米金融界の経営
者たちのレベルを思うとき、とても1年2年というレベルで
立ち直れるはずがないと思うからです。
http://tarumae.at.webry.info/200903/article_88.html
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●グラフ出典
浜田和幸著、『オバマの仮面を剥ぐ』/光文社刊より
米連邦財政の推移/議会予算局