2009年09月28日

●「3人の米大統領の通信簿」(EJ第2662号)

 ここまで51回にわたって述べてきたように、現オバマ政権は
未曽有の政治的危機に瀕しているといえます。オバマ政権の政権
運営に大きな影響力を担うズビグネフ・ブレジンスキー氏は、オ
バマ以前の3人の大統領――ジョージ・H・W・ブッシュ、ビル
・クリントン、ジョージ・W・ブッシュのリーダーシップに大き
な問題あったことを指摘しています。
 ブレジンスキー氏の近著に『セカンド・チャンス』という本が
あります。この本は『ブッシュが壊したアメリカ』――徳間書店
刊の書名で日本語訳が出ていますが、多極化するこれからの世界
について、きちんとした方向性が示されていて、非常に興味深い
本です。この本でブレジンスキー氏は、これら3人の米大統領を
「グローバル・リーダー」と呼んでいますが、本の書き出しの部
分を引用します。
―――――――――――――――――――――――――――――
 アメリカ合衆国大統領が初代グローバル・リーダー″という
 冠を、自らの手で自らの頭に戴いた瞬間は、何年何月何日と特
 定こそされていないものの、地球人類にとっては歴史的なでき
 ごとであった。この自己戴冠≠ェ行なわれたとき、すでにソ
 ビエト連邦は崩壊し、冷戦には終止符が打たれていた。だから
 アメリカ大統領は正式な国際的承認をいっさい受けていないに
 もかかわらず、グローバル・リーダー、すなわち世界の指導者
 としてふるまい始めることができたわけだ。アメリカのマスコ
 ミは戴冠の事実をこぞって喧伝した。世界各国はアメリカ大統
 領の意向を尊重し、外国の首脳にとってホワイトハウス訪問は
 (キャンプデービッド訪問はいうにおよばず)、政治活動にお
 ける一世一代の見せ場となった。
       ――ズビグネフ・ブレジンスキー著/峯村利哉訳
         『ブッシュが壊したアメリカ』/徳間書店刊
―――――――――――――――――――――――――――――
 ブレジンスキー氏は、これらの3人のグローバル・リーダーで
ある3人の大統領を次のように定義しています。
―――――――――――――――――――――――――――――
  ジョージ・H・W・ブッシュ ・・・     警察官
  ビル・クリントン ・・・・・・・・ 社会福祉活動家
  ジョージ・W・ブッシュ ・・・・・    自警団員
―――――――――――――――――――――――――――――
 先代ブッシュは、昔ながらの安定を維持するべく、権力と正当
性を頼みとした「警察官」であり、ビル・クリントンは、進歩を
創出すべく、グローバリゼーションに期待を寄せた「社会福祉活
動家」、そして、ジョージ・W・ブッシュは、自ら宣言した悪と
の戦いを完遂すべく、恐怖におびえる国民の力を結集させた「自
警団員」であるというのです。
 ブレジンスキー氏は、8つの項目ごとに採点をして、3人のグ
ローバル・リーダーの通信簿を次のように発表しています。
―――――――――――――――――――――――――――――
          ブッシュ父  クリントン  ブッシュ子
 大西洋同盟       A      A      D 
 旧ソ連圏        B      B−     B−
 極東          C+     B      C+
 中東          B−     D      F
 核拡散         B      D      D
 平和維持      評価せず     B+     D
 環境          C      B−     F
 世界貿易/貧困     B−     A−     C−
 ――――――――――――――――――――――――――――
 総合評価     堅実なB    むらなC   落第のF
       ――ズビグネフ・ブレジンスキー著/峯村利哉訳
         『ブッシュが壊したアメリカ』/徳間書店刊
―――――――――――――――――――――――――――――
 ジョージ・H・W・ブッシュ、すなわち先代ブッシュ大統領は
ソ連の崩壊に直面して、適切な配慮と巧みな手腕で危険なプロセ
スをうまく乗り切っています。しかしながら、世界システム全体
が米国の指導力を素直に受け入れているにもかかわらず、その絶
好のチャンスをつかまえられなかったことは、先代ブッシュの原
罪である――このようにブレジンスキー氏はいっています。
 2人目のクリントンは、グローバリゼーションを都合よく解釈
し、歴史的必然性を主張することによって、戦略策定と遂行の義
務から自らを解放したのです。クリントンが相続した米国には、
全地球規模で競合するライバルはいなかったのです。
 しかし、彼はこのまたとないチャンスをみすみす取り逃がし、
中東和平の道を開くことができなかったのです。また、核拡散問
題についても生半可な態度でのぞみ、これについてきちんとした
手を打てなかったのです。北朝鮮の核の枠組み合意などの失敗は
その典型であるといえます。
 3人目のグローバル・リーダーであるジョージ・W・ブッシュ
について、ブレジンスキー氏は次のようにいっています。
―――――――――――――――――――――――――――――
 前ブッシュ政権が誕生してからの6ヵ月間、アメリカの外交は
 ほぼ休眠状態にあった。9・11の同時多発テロで目がさめる
 までは・・・。世界の国々はアメリカのまわりに結集し、アメ
 リカ政府は世界共闘を形成する絶好の機会を得た。しかし、悲
 しいかな、ブッシュが打ち出してきた政策は「あなたが我々の
 味方でないなら、あなたは我々の敵である」という一国主義以
 外の何物でもなかった。アメリカ政府は恐怖で国民をあおり、
 あおられた国民の恐怖につけ込み、アメリカは戦時国家だ″
 のスローガンを政治に利用した。   ――ブレジンスキー著
         『ブッシュが壊したアメリカ』/徳間書店刊
―――――――――――――――――――――――――――――
 このテーマもそろそろ終了します。次回からしめくくりに入り
ます。             ――[オバマの正体/52]


≪画像および関連情報≫
 ●『ブッシュが壊したアメリカ』の書評について
  ―――――――――――――――――――――――――――
  それはさておき、本書は「アメリカの単独の覇権が確立して
  てから現在にいたるまでの15年間」にグローバル・リーダ
  ーとなったアメリカの3人の大統領、ジョージ・H・W・ブ
  ッシュ、ビル・クリントン、ジョージ・W・ブッシュについ
  てのリーダーシップについての批判的考察であり、今後(次
  期大統領以降に)訪れる第2のチャンスを生かさない限り第
  3のチャンスは永久にめぐってこないとして、これからのア
  メリカがグローバル・リーダとしてとるべき行動指針を提示
  したものである。
         http://tonegawa.net/asin/Book/4198624100/
  ―――――――――――――――――――――――――――

ブレジンスキーの近著/「ブッシュが壊したアメリカ」.jpg
ブレジンスキーの近著「ブッシュが壊したアメリカ」
posted by 平野 浩 at 04:18| Comment(0) | TrackBack(0) | オバマの正体 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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