織のアルカーイダの脅威を取り除くことであり、その首謀者であ
るウサーマ・ビンラーディンを捕えることです。当然のことなが
ら、アフガニスタンの国民が敵ではないのです。
アルカーイダというのは、サウジアラビア出身のアラブ人、ウ
サーマ・ビンラーディンを指導者とするスンニ派ムスリム(イス
ラム教徒)による国際武装テロリストのネットワークといわれて
います。しかし、こうしたテロリストはアフガニスタン国民の中
に潜んでおり、きわめて特定しにくいのです。
かつて、キューバのゲリラ指導者であるチェ・ゲバラは、ゲリ
ラについて次のようにいっているのです。
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(ゲリラは)ちょうど魚が水の中に潜んでいるようなもので
ある。 ――チェ・ゲバラ
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このようにテロリストを特定するのは困難なのであり、本来テ
ロ行為に対しては、軍隊ではなく警察力で臨むべきでなのです。
ブッシュ米政権のように無謀な戦争をすれば、それは武器を大量
に消費するだけで、テロリストを根絶させることはできないので
す。それどころか、テロリストを増やしてしまったのです。
オバマ大統領は何かというと「イスラムとの対話」ということ
を強調し、イラクに対しては冷静に対応しています。この点に関
しては、前ブッシュ政権よりはよい印象を世界に与えています。
しかし、その同じ人物が、アフガニスタンでは「テロとの戦い」
をより強行に行うといっているのです。
ブッシュ前政権時のアフガニスタンに駐留する米軍は約3万人
程度なのです。ところがアフガニスタンの人口は約2800万人
もおり、その程度の人数で国民の中に潜んでいるテロリストをつ
かまえるのははじめから困難です。
そのための米軍の増派なのでしょうが、果たしてそれを倍の6
万人にしてみたところで解決できるのかどうか疑問です。おそら
く米軍はさらに増えて10万人を超えることも考えられます。問
題は、米軍が増えてくると、アフガニスタンの国民がそれを米軍
による占領としてとらえることです。
2009年4月のはじめに、オバマ大統領の命令を受けてアフ
ガニスタンの現地司令官はパシュトゥン族の指導者や長老を20
数人を集めて会談を開いたのです。米軍に協力してアルカ−イダ
と戦って欲しいという要請をしたのです。莫大な贈り物を用意し
武器も十分与えることも約束しています。
ここでパシュトゥン族とタリバーン、それにアルカーイダの関
係について知っておく必要があります。
タリバーンは、パキスタンとアフガニスタンで活動するイスラ
ム主義運動のことなのです。1996年から2001年11月頃
までアフガニスタンの大部分を実効支配し、一部の国家を除いて
国家として承認されなかったものの、アフガニスタン・イスラム
首長国(ターリバーン政権)を樹立しています。
タリバーンはパシュトゥン人の部族掟「パシュトゥンワーリ」
に従うなど、最初はパシュトゥン人に近い存在だったのですが、
戒律が異常に厳しい(すべての音楽を禁止)など、仲はけっして
よくなかったのです。
その後タリバーンは、アルカーイダに接近し、その過激原理主
義の影響を受け、パシュトゥーンワーリからも逸脱したのです。
そして、偏狭頑迷なイスラーム解釈をアフガニスタン国民に押し
付けるようになったため、アフガニスタン国民からの支持も大き
く低下したのです。そのパシュトゥン人とタリバーンの仲の悪さ
に目をつけて米軍はパシュトゥン族を取り込もうとしたのです。
しかし、米軍とパシュトゥン族の指導者や長老との会談はどう
やら失敗に終わっています。パシュトゥン族の長老たちは、固い
表情を崩さず、ほとんど口をきかないまま、何も約束しないで引
き上げているのです。
パシュトゥン族の約1500万人はアフガニスタン国内に住ん
でいますが、隣のパキスタンには2500万人のパシュトゥン族
がいるのです。それは、1893年に英国がこの地域を勝手にパ
キスタンとアフガニスタンに分割したからです。
これは、実に深刻な事態なのです。パキスタンは、基本的には
米国寄りであり、軍事援助を受けています。しかし、パキスタン
には核兵器があり、それがきわめて危険な状態なのです。
なぜかというと、アフガニスタンのパシュトゥン族と米軍が敵
対するようなことになると、米軍はパシュトゥン族を追ってパキ
スタンに攻め込む事態は十分あり得るのです。そうすると、米軍
はアフガニスタンのパシュトゥン族だけでなく、パキスタンのパ
シュトゥン族とも争うことになるからです。
こうした事態に米国は過去に陥ったことがあります。それはベ
トナム戦争のときのことです。かつてケネディ大統領は、南ベト
ナムのゲリラであったベトコンだけでなく、最後には北ベトナム
の正規軍と戦うことになってしまったのです。米軍は神出鬼没の
ゲリラに手を焼いているうちに、北ベトナム正規軍の激しい攻撃
に晒され、米国の民主党政権は崩壊してしまったのです。
もうひとつ心配なことがあるのです。それは、アフガニスタン
のパシュトゥン族はタリバーンと仲がよくないのですが、パキス
タンのパシュトゥン族はタリバーンと近い関係なのです。タリバ
ーンは、アルカーイダを援助しているのです。しかも、パキスタ
ンが核兵器を管理している場所は、パキスタン国内のアルカイー
ダの支配下にあるのです。
パキスタン軍の現在の首脳は、タリバーンやアルカーイダに近
く、核兵器を保有しているパキスタン情報局戦略本部の幹部たち
もタリバーンやアルカーイダと親密だといわれています。パキス
タンの核兵器は世界で最も危険な状態におかれているのです。そ
れだけに、米国のアフガニスタン介入はこのような大きな危険を
はらんでいるのです。 ――[オバマの正体/43]
≪画像および関連情報≫
●アフガニスタンの現況について
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米国とNATOが増派を決めたアフガニスタンでは逆にタリ
バンが復活している。いや、以前より資金も潤沢で、武装の
中味も格段に良くなった。武器はパキスタンばかりか、タジ
キスタン、ウズベキスタン国境からも入る。資金源は麻薬。
カルザイ政権はカブールを治めるのみで、アフガニスタン政
府の統治が及ばない場所が殆ど、そこで麻薬が栽培され、世
界へ輸出され、ジハードの戦士を補充し、軍事訓練を施し、
爆弾をかかえて突撃する戦士が量産される。
http://tamezou6.iza.ne.jp/blog/entry/1061533/
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アフガニスタンの地図