ては珍しく内向きな政治家であるということです。それは国際的
な経験がまったくないことからきています。
それでは国内政治はどうかというと、イリノイ州議会議員を経
て上院議員になったのですが、実績は何もないのです。米上院外
交委員会に属してNATO小委員会の委員長に就任したのですが
一回も公聴会を開いていないのです。
そういう国際経験がないところから、オバマ大統領の外交にお
ける発言はきわめて曖昧なところがあり、そのため弱腰の外交姿
勢といわれるのです。その例を東ヨーロッパのミサイル防衛計画
に見ることができます。
日高義樹氏の本に、東ヨーロッパのミサイル防衛計画について
次の記述があります。
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オバマ大統領の弱腰の外交政策は、東ヨーロッパに展開したミ
サイル防衛システムを壊してしまったことに象徴されている。
ブッシュ前大統領はイギリスなどの要請もあり、チェコとポー
ランドの国境にミサイル防衛ミサイルのためのレーダー基地と
ミサイルサイトを建設したが、オバマ大統領はロシアから強い
抗議を受けて、施設をとり壊してしまったのである。
――日高義樹著『オバマ外交で沈没する日本』
徳間書店刊
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東ヨーロッパのミサイル防衛計画とは何でしょうか。
冷戦が終わると、ポーランドやチェコはソビエトから離脱して
NATOに加盟したのです。この動きは東ヨーロッパの国々に波
及して、NATOは拡大に向かっています。
これに危機感をつのらせたロシアは、場合によっては軍事力を
使ってでもその動きを止めようと考えたのです。それは具体的に
はミサイル網を作り、その脅威で東欧の国々をおさえようとした
のです。ブッシュ前大統領はそういうロシアの軍事力を封じ込め
るために、チェコとポーランドの国境地帯にミサイル網を設置す
るべく工事を開始したのです。これによってロシアは態度を硬化
させ、ブッシュ前大統領とプーチン大統領の仲は、決定的に悪く
なったのです。
ところがオバマ政権になると、この問題がかなり曖昧になって
きたのです。この問題に関するオバマ大統領の発言がフラフラし
はじめたからです。
日高義樹氏は「オバマ大統領はロシアから強い抗議を受けて、
施設をとり壊してしまった」と書いていますが、私の調べた限り
では、日高氏の本の出版日の6月30日時点ではそこまでは進ん
でいないはずです。日高氏の所属するハドソン研究所が独自の情
報によってそう判断した可能性があります。
オバマ大統領は、2009年4月5日のプラハでの演説におい
て、東ヨーロッパのミサイル防衛計画(MD)に言及し、「イラ
ンからの脅威が続く限り」という条件付きでMDを進めると述べ
ています。しかし、「イランの脅威が消えたならば」その必要は
ないともいっているのです。曖昧な表現です。
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これははっきりさせておきます。イランの核と弾道ミサイルの
(開発)行為は米国だけでなく、イランの隣国やわれわれの同
盟国に対して真の脅威をもたらしています。チェコ共和国とポ
ーランドはこうしたミサイルの防衛(システム)を迎え入れる
合意をし、勇敢でありました。イランからの脅威が続く限り、
私たちは費用対効果があり、(能力も)証明されたミサイル防
衛システムを進めます。(拍手)イランの脅威が消えたならば
安全保障のより強い基礎ができ、欧州でミサイル防衛を築く理
由はなくなります。(拍手)
――オバマ米大統領のプラハ演説より
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ところが、2009年8月28日付の「アサヒ・コム」の国際
ニュースは、「米国がMD計画を断念?ポーランド紙が報道」と
いうタイトルで次のように報じているのです。
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【モスクワ=副島英樹】ワルシャワ発のイタル・タス通信によ
ると、ポーランドのトリブナ紙は27日、米国のオバマ政権は
すでに、ポーランドに迎撃ミサイル、チェコにレーダーを配備
する東欧ミサイル防衛(MD)計画の可能性を考えていない、
と報じた。同紙はオバマ大統領はブッシュ前政権が進めたMD
計画には熱心でないと指摘。システムの有効性への疑問や、金
融危機対策を迫られる中での膨大な配備費用、ロシアの反発な
どによって、オバマ大統領がMD計画への疑念を深めていると
している。ロンドン発のタス通信は同日、MD配備は東欧では
なく、イスラエルやトルコ、バルカンに拠点を移す可能性のほ
か、陸上配備から海上配備に変える選択肢もある、と伝えてい
る。一方、米国務省のクローリー次官補は27日の記者会見で
ポーランド紙の報道について「不正確だ。ミサイル防衛戦略の
見直し作業は進行中でまだ完了していない」とコメントした。
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この報道にもあるように、オバマ政権が「ミサイル防衛戦略の
見直し作業」をしていることは事実なのです。これと同じ論法で
米国側が「中国が懸念を示すからアジア太平洋地域でミサイル防
衛はやめる」と言い出す可能性も十分あり得るのです。
このように、米国に安全保障をすべて委ねていることには不安
は大きいのです。オバマ大統領は米国が犠牲になって世界の国々
のために働くのは米国の国益に反すると思っているのです。
日高氏は「オバマ大統領とその政権の下では米国の行動はきわ
めて不透明である」といっています。まして親中国の政権であり
米国は中国に依存せざるを得なくなっている――そのことを日本
人は十分認識すべきです。 ――[オバマの正体/40]
≪画像および関連情報≫
●オバマ大統領誕生の日にロシアは駆け引きを開始
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ロシアのメドベージェフ大統領は、新ミサイル「イスカンデ
ル」を配備すると表明。アメリカにバラク・オバマ新大統領
が誕生した歴史的な日にロシア政府が挑発的な動きに出た。
ロシアのメドベージェフ大統領は、東ヨーロッパにおけるア
メリカのミサイル防衛計画に対抗するため、新型ミサイルを
配備すると表明した。アメリカの新たな門出となった日、ロ
シアでは、メドベージェフ大統領が年次教書演説で「必要と
あれば、MDシステム無力化のため、カリーニングラードに
ミサイルシステム『イスカンデル』を配備する」と述べた。
メドベージェフ大統領は、アメリカとの関係悪化を象徴する
かのように、新たなミサイルの配備を発表した。
http://blog.livedoor.jp/jr6jzz/archives/51296804.html
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オバマ大統領のプラハ演説