2001年07月02日

日本を代表するエコノミストを格付けする(EJ649号)

 EJ635と636の2回にわたって取り上げた宮城大学教授
(金融論)糸瀬茂氏が30日に逝去されたそうです。末期の食道
がんであるにもかかわらず、ゼミナールのために東京と仙台を往
復し、最後までテレビの報道番組にコメンテータとして活躍した
気鋭のエコノミストでした。心からお悔やみ申し上げます。
 さて、エコノミストといえば、最近テレビには多くの人が登場
しますね。私は、ここ何年かにわたってテレビの番組で彼らの意
見には耳を傾けてきましたし、本や雑誌などに出ている記事も読
んできましたが、いっていることにかなり一貫性のないエコノミ
ストも大勢います。
 そう思っていたところ『文藝春秋』7月号で東谷暁氏がそうし
たエコノミストたちの格付けをやっているのを知りました。東谷
氏といえば、金融論に強いジャーナリストで多くの優れた著書が
あります。今朝はこの記事をベースにして、それに私なりの評価
を加えてみたいと思います。
 評価の対象となったテーマは次の4つです。
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  1.不良債権の処理
  2.景気動向・対策
  3.ゼロ金利政策論
  4.IT革命論評価
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 しかし、これらのテーマはいずれも進行中であり、完全にはケ
リがついていないものばかりです。したがって、評価に当っては
「論理に一貫性があるかどうか」に重点が置かれています。一定
の時期を通じて話していることをチェックし、論理に一貫性があ
るかどうかが採点の基準になっています。点数化は、発言に対し
て論理的な整合性が高いかどうかで、次の5段階で採点が行われ
ているのです。
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
    「納得できる」 ・・・・・・・・・ +2
    「まず納得できる」 ・・・・・・・ +1
    「まったく納得できない」 ・・・・ −2
    「やや納得できない」 ・・・・・・ −1
    「どっちつかず」 ・・・・・・・・  0
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
 総合点でのベスト10をご紹介しましょう。
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            格付け   総合点数
   1.池尾 和人   A   +1.22
   2.嶋中 雄二   A   +1.17
   3.木村  剛   A   +1.09
   4.深尾 光洋   A   +1.00
   5.岩田規久男   A   +0.90
   6.武者 陵司   A   +0.82
   7.フェルドマン  B   +0.67
   8.吉冨  勝   B   +0.67
   9.高橋 乗宣   B   +0.60
  10.植草 一秀   C   +0.50
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 「格付け」については、東谷氏はムーディーズ型の評価をして
いるのですが、少し分かりにくいので、私がそれをABCランク
に直してあります。格付けがA、B、Cであれば、エコノミスト
として一流であると評価してよいと思います。
 竹中平蔵氏をはじめテレビにはなぜか慶応義塾大学の先生がよ
く登場しますが、トップはやはり慶大教授の池尾和人氏でした。
池尾教授の主張は一貫しています。早くから不良債権の処理が喫
緊の問題であることを指摘し、その後一貫して政府の処理策の不
徹底さを厳しく批判してきているのです。
 1999年3月、大手15行に対する資本注入が行われた直後
にも「今回注入される『資本』については強く返済が求められて
おり、返済が義務づけられているという点では、今回注入される
公的資金は『負債』という性格のものに近い。債務超過かも知れ
ない銀行にさらに債務を負わせて何が解決するのか」という疑問
を投げかけています。
 池尾氏と同様に不良債権処理の不徹底さを指摘してきたエコノ
ミストとして、元日銀行員の木村剛氏とやはり慶大教授の深尾光
洋氏がいます。両氏ともにその著作では一貫性のある分かりやす
い解説を行っています。
 このベスト10で少し意外だったのは、野村総研・上席エコノ
ミストの植草一秀氏の10位です。一貫性といえば、どのような
時点でも、この人ほど徹底して財政出動の必要性を説いた人はい
ないからです。10位に甘んじた理由は、財政出動の中身がよく
変わる点が減点の対象になっているようです。
 採点されたエコノミストには有名人が多く含まれています。参
考までに有名な7人の順位をご紹介しておきます。
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            格付け   総合点数
  13.R・ クー   E   +0.22
  14.高橋  進   E   +0.18
  15.伊藤 元重   F   +0.15
  16.竹中 平蔵   G    0.00
  21.榊原 英資   J   −0.31
  22.斎藤精一郎   K   −0.36
  24.中谷  厳   L   −0.42
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
 順位についてはコメントしませんが、私はほぼ正しい評価では
ないかと思っています。とくに榊原英資氏、中谷巌氏に対しては
相応の評価であると思います。彼らは、IT革命論に関して驚く
ほど主張が首尾一貫していないのです。そのときそのときの情勢
に合わせて意見を述べているだけという感じです。
posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(0) | TrackBack(0) | その他 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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