2009年09月04日

●「日本は『臆病な巨人』である」(EJ第2649号)

 中国軍が通常兵力で海を越えて台湾に地上軍を送り込み、台湾
全土を軍事的に占領する――これはどのように考えても困難なこ
とであり、現実的な戦略としてはあり得ないのです。
 そういう事態に備えて訓練している第七艦隊をはじめとする空
母と海上艦艇による米機動艦隊が出動し、それに台湾の航空機も
加わって海上の中国艦艇を徹底的に攻撃するので、中国軍は壊滅
的打撃を受けるはずです。
 そんなことは中国も当然予想しており、台湾海峡をへだてて台
湾の対岸に既に3000発のミサイルを配備しているのです。し
かも、そのうち半分以上のミサイルは、移動用の車両に乗せられ
ており、どこからでも発射できて、しかも射程距離が長く、日本
やグアムなどの太平洋の米軍基地を攻撃できるのです。
 そうなってくると、中国軍のミサイルによって米機動艦隊にも
被害が出る可能性は出てきます。しかし、米軍はF22やB2と
いうレーダーに映らないステルス戦闘爆撃機を実戦配備しており
米軍が本気で戦えば、中国の台湾武力制圧という、あってはなら
ない野望を粉砕することは十分可能です。米国がこれまでのよう
に台湾に対する基本政策を守れば・・・の話です。
 ブッシュ前大統領は米軍に多少被害が出てもやるという姿勢で
したが、オバマ大統領にそうした覚悟あるかどうかです。それど
ころか、オバマ大統領はアジア向けの艦艇を予算から大幅に削っ
ており、ハナから中国と戦う意思はないようです。
 一番心配な事態は、中国軍が大量のミサイルで台湾に圧力をか
け、米機動艦隊の動きを牽制しているうちに、台湾が戦意を喪失
し、白旗を上げるケースです。実はその可能性は高いのです。な
ぜなら、台湾には総統をはじめとし、中国寄りの政治家が増えて
いるので、米軍が乗り出してくる前に白旗を上げる可能性は十分
あるのです。
 こういう台湾有事の事態に関し、日高義樹氏は、その起こりう
ることについて、次のように述べているのです。
―――――――――――――――――――――――――――――
 中国が現在の調子で軍事力を増強し、アメリカの機動艦隊や空
 軍を押さえこむことができると考えた場合、台湾海峡で悲劇が
 起きる可能性はきわめて強くなる。オバマ政権がブッシュ政権
 とは違い、軍事的な緊迫状態になつても先制攻撃をおこなわな
 いことは明白である。中国が圧力を強化することによって台湾
 を併合してしまう危険は十分にありうる。オバマ大統領は、戦
 うことを拒否した平和主義者・カーター大統領の轍を踏むこと
 になるだろう。強大な軍事力を持つアメリカの指導者が平和主
 義にかたまれば、アメリカの威信は地に堕ち、世界が混乱に陥
 ることは必至である。
        ――日高義樹著『オバマ外交で沈没する日本』
                        徳間書店刊
―――――――――――――――――――――――――――――
 ここで、中国という国は、世界、とりわけ米国でどのようにみ
られているのかについて知っておく必要があります。米国人は日
本人よりも中国人に好感を覚えるというのです。古森義久氏――
産経新聞ワシントン駐在・論説委員は、その理由として次の3つ
を上げているのです。
―――――――――――――――――――――――――――――
 1.中国は米国から遠く離れたいアジアの大国であり、一種の
   エキゾティズムを感じている
 2.中国は巨大な国であり、世界の中心は自分と考えていて世
   界の歴史に役割を果している
 3.かつて米国と一緒に「日本の帝国主義」と戦った国であり
   チャイナに戦友意識を感ずる
―――――――――――――――――――――――――――――
 中国といえば、3000年、4000年といった長い歴史があ
る国です。古代文明を生んだ黄河、長江といった遠大な川――米
国にはない長大な歴史を有するミステリアスな国というイメージ
を米国人は抱くのです。
 世界の中心を標榜する中国の中華思想――これに対して若き大
国として20世紀を駆け抜けてきたアメリカ・・・明らかに共通
点があるのです。人でも国でも似ているものには惹かれるところ
があるものです。
 日本は中国とも米国とも戦っています。彼らから見ると日本は
かつての敵国なのです。しかも、太平洋戦争では、中国と米国は
一緒に日本と戦っているのです。そういう意味において、古い世
代の米国人が「チャイナ」と聞くと、どこかに戦友意識のような
心情を感ずるのは当然です。これは、日本人には気がつかない感
情であるといえます。
 正確にいうと、中国で日本軍と戦ったのは、現在の中華人民共
和国ではなく、蒋介石率いる国民党政権だったのです。米軍はそ
の国民党と戦時に連帯したのです。
 しかし、かつて敵国であった日本ですが、米国の発展には少な
からざる貢献をしてきています。そのことをよくわかっている米
国人も多いのです。しかし、現オバマ政権はどちらかというと、
親中国派が多く、日本にとっては冷たい政権のイメージです。
 石原東京都知事は、「週刊ポスト」9月4日号で「日本は臆病
な巨人」になっていると、次のように述べています。
―――――――――――――――――――――――――――――
 実は、アメリカにとっては日本が一番怖い国なんです。湾岸戦
 争の時も、米国の資料には「我々はこの戦争で、日本の先端技
 術のおかげを被った。これは8万人の兵士を送り、ともに血を
 流したイギリスの貢献よりも数10倍評価すべきだ」と記され
 ている。現在もアメリカはF22というステルス戦闘機を日本
 に売らないというが、あの外装の素材は日本の技術だ。それな
 ら、こっちも出さないといえばいい。   ――石原慎太郎氏
―――――――――――――――――――――――――――――
                ――[オバマの正体/39]


≪画像および関連情報≫
 ●石原慎太郎の日本人論より
  ―――――――――――――――――――――――――――
  ・日本人は昔からファッショに弱い。大きな波、大きな風が
   吹いてくると、簡単に流されてしまう。戦時中は「一億玉
   砕」、戦争が終わると「一億総懺悔」になった。
  ・日本の対米外交は、いっそのこと北朝鮮のやり方に学んだ
   らどうか。あんなちゃちな国でさえ、核を前面に出すこと
   で、世界中を振り回している。一方の我が国では、この間
   中川昭一氏が「日本でも核保有の議論があっていい」とい
   っただけでライス国務長官(当時)が飛んで釆た。アメ
   リカが守りますから余計なことはいわないでくれ≠ニ。
             ――「週刊ポスト」9月4日号より
  ―――――――――――――――――――――――――――

石原慎太郎氏.jpg
石原慎太郎氏
posted by 平野 浩 at 04:14| Comment(0) | TrackBack(0) | オバマの正体 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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