全土を軍事的に占領する――これはどのように考えても困難なこ
とであり、現実的な戦略としてはあり得ないのです。
そういう事態に備えて訓練している第七艦隊をはじめとする空
母と海上艦艇による米機動艦隊が出動し、それに台湾の航空機も
加わって海上の中国艦艇を徹底的に攻撃するので、中国軍は壊滅
的打撃を受けるはずです。
そんなことは中国も当然予想しており、台湾海峡をへだてて台
湾の対岸に既に3000発のミサイルを配備しているのです。し
かも、そのうち半分以上のミサイルは、移動用の車両に乗せられ
ており、どこからでも発射できて、しかも射程距離が長く、日本
やグアムなどの太平洋の米軍基地を攻撃できるのです。
そうなってくると、中国軍のミサイルによって米機動艦隊にも
被害が出る可能性は出てきます。しかし、米軍はF22やB2と
いうレーダーに映らないステルス戦闘爆撃機を実戦配備しており
米軍が本気で戦えば、中国の台湾武力制圧という、あってはなら
ない野望を粉砕することは十分可能です。米国がこれまでのよう
に台湾に対する基本政策を守れば・・・の話です。
ブッシュ前大統領は米軍に多少被害が出てもやるという姿勢で
したが、オバマ大統領にそうした覚悟あるかどうかです。それど
ころか、オバマ大統領はアジア向けの艦艇を予算から大幅に削っ
ており、ハナから中国と戦う意思はないようです。
一番心配な事態は、中国軍が大量のミサイルで台湾に圧力をか
け、米機動艦隊の動きを牽制しているうちに、台湾が戦意を喪失
し、白旗を上げるケースです。実はその可能性は高いのです。な
ぜなら、台湾には総統をはじめとし、中国寄りの政治家が増えて
いるので、米軍が乗り出してくる前に白旗を上げる可能性は十分
あるのです。
こういう台湾有事の事態に関し、日高義樹氏は、その起こりう
ることについて、次のように述べているのです。
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中国が現在の調子で軍事力を増強し、アメリカの機動艦隊や空
軍を押さえこむことができると考えた場合、台湾海峡で悲劇が
起きる可能性はきわめて強くなる。オバマ政権がブッシュ政権
とは違い、軍事的な緊迫状態になつても先制攻撃をおこなわな
いことは明白である。中国が圧力を強化することによって台湾
を併合してしまう危険は十分にありうる。オバマ大統領は、戦
うことを拒否した平和主義者・カーター大統領の轍を踏むこと
になるだろう。強大な軍事力を持つアメリカの指導者が平和主
義にかたまれば、アメリカの威信は地に堕ち、世界が混乱に陥
ることは必至である。
――日高義樹著『オバマ外交で沈没する日本』
徳間書店刊
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ここで、中国という国は、世界、とりわけ米国でどのようにみ
られているのかについて知っておく必要があります。米国人は日
本人よりも中国人に好感を覚えるというのです。古森義久氏――
産経新聞ワシントン駐在・論説委員は、その理由として次の3つ
を上げているのです。
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1.中国は米国から遠く離れたいアジアの大国であり、一種の
エキゾティズムを感じている
2.中国は巨大な国であり、世界の中心は自分と考えていて世
界の歴史に役割を果している
3.かつて米国と一緒に「日本の帝国主義」と戦った国であり
チャイナに戦友意識を感ずる
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中国といえば、3000年、4000年といった長い歴史があ
る国です。古代文明を生んだ黄河、長江といった遠大な川――米
国にはない長大な歴史を有するミステリアスな国というイメージ
を米国人は抱くのです。
世界の中心を標榜する中国の中華思想――これに対して若き大
国として20世紀を駆け抜けてきたアメリカ・・・明らかに共通
点があるのです。人でも国でも似ているものには惹かれるところ
があるものです。
日本は中国とも米国とも戦っています。彼らから見ると日本は
かつての敵国なのです。しかも、太平洋戦争では、中国と米国は
一緒に日本と戦っているのです。そういう意味において、古い世
代の米国人が「チャイナ」と聞くと、どこかに戦友意識のような
心情を感ずるのは当然です。これは、日本人には気がつかない感
情であるといえます。
正確にいうと、中国で日本軍と戦ったのは、現在の中華人民共
和国ではなく、蒋介石率いる国民党政権だったのです。米軍はそ
の国民党と戦時に連帯したのです。
しかし、かつて敵国であった日本ですが、米国の発展には少な
からざる貢献をしてきています。そのことをよくわかっている米
国人も多いのです。しかし、現オバマ政権はどちらかというと、
親中国派が多く、日本にとっては冷たい政権のイメージです。
石原東京都知事は、「週刊ポスト」9月4日号で「日本は臆病
な巨人」になっていると、次のように述べています。
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実は、アメリカにとっては日本が一番怖い国なんです。湾岸戦
争の時も、米国の資料には「我々はこの戦争で、日本の先端技
術のおかげを被った。これは8万人の兵士を送り、ともに血を
流したイギリスの貢献よりも数10倍評価すべきだ」と記され
ている。現在もアメリカはF22というステルス戦闘機を日本
に売らないというが、あの外装の素材は日本の技術だ。それな
ら、こっちも出さないといえばいい。 ――石原慎太郎氏
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――[オバマの正体/39]
≪画像および関連情報≫
●石原慎太郎の日本人論より
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・日本人は昔からファッショに弱い。大きな波、大きな風が
吹いてくると、簡単に流されてしまう。戦時中は「一億玉
砕」、戦争が終わると「一億総懺悔」になった。
・日本の対米外交は、いっそのこと北朝鮮のやり方に学んだ
らどうか。あんなちゃちな国でさえ、核を前面に出すこと
で、世界中を振り回している。一方の我が国では、この間
中川昭一氏が「日本でも核保有の議論があっていい」とい
っただけでライス国務長官(当時)が飛んで釆た。アメ
リカが守りますから余計なことはいわないでくれ≠ニ。
――「週刊ポスト」9月4日号より
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石原慎太郎氏