ついた米国の経済の現況について強い危機感を持っており、その
解決の方向を中国に求めようとしています。
もともと米クリントン政権は、日本よりも中国に目をつけ、中
国を国際社会に受け入れることで、米国経済と世界経済を拡大し
ようと考えて日本の頭越しに中国との関係を深めたのです。
その結果、どうなったかというと、クリントン、ブッシュ両政
権は、米国本土に本店を置き、中国を米国の下請け工場に位置づ
けて製造工場を中国各地に展開したのです。そして、IT技術に
よってグローバル化した経済活動の中で利益だけを米国に吸い上
げ、巨大な金融バブルと不動産バブルを作り上げたのです。そし
て、その狂乱が今回の未曾有の金融混乱の原因になったのです。
オバマ政権の経済スタッフが、中国に頼る理由について講演で
次のように述べています。
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中国経済はいまの世界経済のなかで例外的な力を持っている。
アメリカの金融が混乱しても、耐えられるだけの力を持ってい
る。 ――日高義樹著『オバマ外交で沈没する日本』
徳間書店刊
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この中国経済の強さについて、その経済スタッフは次の2つの
理由をあげています。
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1.中国経済は国営企業が中心であり、外国からの資本に左右
されることはない。しかも、国営企業といっても独占企業
ではなく、国営企業間で競争が行われている。
2.中国は基本的には農業国家であるということである。貿易
を増やしてはいるが、GDPにおける貿易の割合は10%
にも満たない。農業への投資は拡大している。
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世界銀行の統計によると、1990年代の中国はGDPの80
%は上海の沿岸地域が作り出したものであり、農村は20%にす
ぎなかったのです。それが2005年には、沿岸地域40%、農
村地域は60%に逆転しているのです。
これに加えて、中国人の貯蓄率が高く、住宅を購入する場合で
もあまり借金をしないのです。それに住宅価格自体も安いことが
中国経済の強さの理由になっています。
従来の米国のアジア政策は、対日政策と対中政策の間に「ゼロ
サム的関係」ができていたのです。米国が中国に接近すれば、日
本とはその分、やや遠くなるのです。逆に日本との同盟のきずな
を強化すれば、中国との関係はその度合いに応じて冷却する――
これがゼロサム的関係です。しかし、オバマ政権の政策をこのま
ま推し進めると、米中は接近せざるを得ず、どうしても日米の関
係は冷却の方向に向かうことになります。
オバマ政権は、こういうわけで崩壊寸前の米国の金融界を救う
には、どうしても中国に頼らざるを得ないと考えているのです。
そのため、ガイトナー財務長官やヒラリー・クリントン国務長官
は相次いで中国を訪問し、国債の購入を求めています。
これに気を強くしたのか中国は、温家宝首相が米国政府に対し
通貨制度や金融体制について批判をはじめていますが、それでも
米国債を購入しています。それは、米国が中国に対して本来いわ
なければなないことをいっていないからです。
日高義樹氏は、こうしたオバマ政権の弱腰の外交姿勢に対し、
政権の首脳が国際的な交渉や駆け引きに慣れていないことから生
じているとして、次のように述べています。
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オバマ政権のスタッフの中心は国内問題専門の政治家や黒人の
ビジネスマンが多く、政策構築の中心は官僚である。ブッシュ
前政権の首脳たちにはビジネスマンが多く、国際的なビジネス
のやりかたに慣れていたが、オバマ政権はアメリカではめずら
しく内向きな政権といえる。その結果、中国に国債を買ってほ
しいと思うあまり、その駆け引きとして人権問題や中国国内の
民主化の問題をとりあげるという外交交渉の原則すら忘れてし
まったのである。オバマ政権のこうしたやり方は、アメリカの
国家利益からみて好ましくないことは歴史が示している。
――日高義樹著『オバマ外交で沈没する日本』
徳間書店刊
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今までの米国の中国に対する外交姿勢は、1972年のニクソ
ン大統領以来、歴代の大統領が難しい国際問題を中国と話し合っ
てきたのですが、そういうときには必ず中国政府による反政府主
義者の弾圧や周辺諸国に対する侵略的な姿勢を問題として取り上
げ、その改善を要望してきたのです。
つまり、中国政府が嫌がることをあえて問題として取り上げ、
それを中国に突き付けることによって、国際交渉で優位な地位を
確保する――そのうえで中国に対して政治的な要求をするという
のが米国の外交テクニックでもあったのです。
しかし、オバマ政権はそうした米外交の基本ともいうべきやり
方を一切やめてしまったのです。今まで「人民元が安すぎる」と
批判してきた議会は口を閉ざし、オバマ大統領の代理として中国
を訪問したヒラリー・クリントン国務長官は、オバマ大統領の指
示にしたがって、チベット問題もミャンマーの問題も北朝鮮の問
題も会談では話題に取り上げず、ひたすら米国債の購入を嘆願し
たというのです。これは米外交政策の大転換です。
さすがに温家宝首相が米国政府に対し説教めいたことを述べた
ときは、米マスコミは、米国の国家主権の行使である通貨の問題
まで中国が口をはさむのは行きすぎであるとして批判し、オバマ
政権に怒りをぶつけたのですが、オバマ大統領はそうした弱腰外
交を改めようとしていないのです。これでは、必然的に日本との
間に距離ができることになります。――[オバマの正体/35]
≪画像および関連情報≫
●EJの記事に関するライブドアのアンケート調査について
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先週のEJの記事について、ライブドアのリサーチ・ニュー
スで『「日本は「最小限の自主的核抑止力」を持つべき?』
の調査が行われています。その結果は「持つべきだと思う」
が実に64%となっています。
http://research.news.livedoor.com/r/32500
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●ヒラリー国務長官中国を訪問/2009.2
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胡主席は「中米は共に世界に重要な影響力を持つ国だ。両国
は世界の平和と発展に関わる重大な問題において、幅広い利
益を共有し、共に重要な責任を担っている。中米関係は21
世紀の世界において最も重要な2国間関係の1つだ。世界金
融危機が拡大を続け、グローバルな試練が日増しに先鋭化す
る中、中米関係を一層深め、発展させることは、過去のどの
時期にも増して重要になっている」と述べた。
――人民網日本語版より
http://j.peopledaily.com.cn/94474/6598616.html
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クリントン国務長官中国訪問