2009年08月31日

●「オバマ政権が中国に依存する理由」(EJ第2645号)

 オバマ政権は、世界レベルの未曾有の金融混乱によって深く傷
ついた米国の経済の現況について強い危機感を持っており、その
解決の方向を中国に求めようとしています。
 もともと米クリントン政権は、日本よりも中国に目をつけ、中
国を国際社会に受け入れることで、米国経済と世界経済を拡大し
ようと考えて日本の頭越しに中国との関係を深めたのです。
 その結果、どうなったかというと、クリントン、ブッシュ両政
権は、米国本土に本店を置き、中国を米国の下請け工場に位置づ
けて製造工場を中国各地に展開したのです。そして、IT技術に
よってグローバル化した経済活動の中で利益だけを米国に吸い上
げ、巨大な金融バブルと不動産バブルを作り上げたのです。そし
て、その狂乱が今回の未曾有の金融混乱の原因になったのです。
 オバマ政権の経済スタッフが、中国に頼る理由について講演で
次のように述べています。
―――――――――――――――――――――――――――――
 中国経済はいまの世界経済のなかで例外的な力を持っている。
 アメリカの金融が混乱しても、耐えられるだけの力を持ってい
 る。     ――日高義樹著『オバマ外交で沈没する日本』
                        徳間書店刊
―――――――――――――――――――――――――――――
 この中国経済の強さについて、その経済スタッフは次の2つの
理由をあげています。
―――――――――――――――――――――――――――――
 1.中国経済は国営企業が中心であり、外国からの資本に左右
   されることはない。しかも、国営企業といっても独占企業
   ではなく、国営企業間で競争が行われている。
 2.中国は基本的には農業国家であるということである。貿易
   を増やしてはいるが、GDPにおける貿易の割合は10%
   にも満たない。農業への投資は拡大している。
―――――――――――――――――――――――――――――
 世界銀行の統計によると、1990年代の中国はGDPの80
%は上海の沿岸地域が作り出したものであり、農村は20%にす
ぎなかったのです。それが2005年には、沿岸地域40%、農
村地域は60%に逆転しているのです。
 これに加えて、中国人の貯蓄率が高く、住宅を購入する場合で
もあまり借金をしないのです。それに住宅価格自体も安いことが
中国経済の強さの理由になっています。
 従来の米国のアジア政策は、対日政策と対中政策の間に「ゼロ
サム的関係」ができていたのです。米国が中国に接近すれば、日
本とはその分、やや遠くなるのです。逆に日本との同盟のきずな
を強化すれば、中国との関係はその度合いに応じて冷却する――
これがゼロサム的関係です。しかし、オバマ政権の政策をこのま
ま推し進めると、米中は接近せざるを得ず、どうしても日米の関
係は冷却の方向に向かうことになります。
 オバマ政権は、こういうわけで崩壊寸前の米国の金融界を救う
には、どうしても中国に頼らざるを得ないと考えているのです。
そのため、ガイトナー財務長官やヒラリー・クリントン国務長官
は相次いで中国を訪問し、国債の購入を求めています。
 これに気を強くしたのか中国は、温家宝首相が米国政府に対し
通貨制度や金融体制について批判をはじめていますが、それでも
米国債を購入しています。それは、米国が中国に対して本来いわ
なければなないことをいっていないからです。
 日高義樹氏は、こうしたオバマ政権の弱腰の外交姿勢に対し、
政権の首脳が国際的な交渉や駆け引きに慣れていないことから生
じているとして、次のように述べています。
―――――――――――――――――――――――――――――
 オバマ政権のスタッフの中心は国内問題専門の政治家や黒人の
 ビジネスマンが多く、政策構築の中心は官僚である。ブッシュ
 前政権の首脳たちにはビジネスマンが多く、国際的なビジネス
 のやりかたに慣れていたが、オバマ政権はアメリカではめずら
 しく内向きな政権といえる。その結果、中国に国債を買ってほ
 しいと思うあまり、その駆け引きとして人権問題や中国国内の
 民主化の問題をとりあげるという外交交渉の原則すら忘れてし
 まったのである。オバマ政権のこうしたやり方は、アメリカの
 国家利益からみて好ましくないことは歴史が示している。
        ――日高義樹著『オバマ外交で沈没する日本』
                        徳間書店刊
―――――――――――――――――――――――――――――
 今までの米国の中国に対する外交姿勢は、1972年のニクソ
ン大統領以来、歴代の大統領が難しい国際問題を中国と話し合っ
てきたのですが、そういうときには必ず中国政府による反政府主
義者の弾圧や周辺諸国に対する侵略的な姿勢を問題として取り上
げ、その改善を要望してきたのです。
 つまり、中国政府が嫌がることをあえて問題として取り上げ、
それを中国に突き付けることによって、国際交渉で優位な地位を
確保する――そのうえで中国に対して政治的な要求をするという
のが米国の外交テクニックでもあったのです。
 しかし、オバマ政権はそうした米外交の基本ともいうべきやり
方を一切やめてしまったのです。今まで「人民元が安すぎる」と
批判してきた議会は口を閉ざし、オバマ大統領の代理として中国
を訪問したヒラリー・クリントン国務長官は、オバマ大統領の指
示にしたがって、チベット問題もミャンマーの問題も北朝鮮の問
題も会談では話題に取り上げず、ひたすら米国債の購入を嘆願し
たというのです。これは米外交政策の大転換です。
 さすがに温家宝首相が米国政府に対し説教めいたことを述べた
ときは、米マスコミは、米国の国家主権の行使である通貨の問題
まで中国が口をはさむのは行きすぎであるとして批判し、オバマ
政権に怒りをぶつけたのですが、オバマ大統領はそうした弱腰外
交を改めようとしていないのです。これでは、必然的に日本との
間に距離ができることになります。――[オバマの正体/35]


≪画像および関連情報≫
 ●EJの記事に関するライブドアのアンケート調査について
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  先週のEJの記事について、ライブドアのリサーチ・ニュー
  スで『「日本は「最小限の自主的核抑止力」を持つべき?』
  の調査が行われています。その結果は「持つべきだと思う」
  が実に64%となっています。
         http://research.news.livedoor.com/r/32500
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 ●ヒラリー国務長官中国を訪問/2009.2
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  胡主席は「中米は共に世界に重要な影響力を持つ国だ。両国
  は世界の平和と発展に関わる重大な問題において、幅広い利
  益を共有し、共に重要な責任を担っている。中米関係は21
  世紀の世界において最も重要な2国間関係の1つだ。世界金
  融危機が拡大を続け、グローバルな試練が日増しに先鋭化す
  る中、中米関係を一層深め、発展させることは、過去のどの
  時期にも増して重要になっている」と述べた。
                  ――人民網日本語版より
      http://j.peopledaily.com.cn/94474/6598616.html
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クリントン国務長官中国訪問.jpg
クリントン国務長官中国訪問
posted by 平野 浩 at 04:15| Comment(0) | TrackBack(0) | オバマの正体 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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